これから日本にと幼き彼

 アリスが日本に来る一週間前のこと。

 きょとんとアリスはボーとしていた。理由は父がいきなりホームステイしないかと言ったことだ。

「ほーむすてい?」

「そう、パパの妹が日本に住んでいるからアリスを日本に住まわせてみようとね。どうだいホームステイしてみないか?」

「ニッポンに行けるんだ……」

 日本に行けるという気持ちが嬉しいかった。

「する。ホームステイしてみたい!」

「よしわかった。手続きを今からしよう」

 父はリビングを飛び出して行った。

「それじゃあアリス。向こうに着いたら健太くんによろしくね」

「ケンタくん?」

 誰かわからない。

「覚えてないかしらアリスが幼稚園のときに向こうの家に遊びに行ったことあるんだけど」

 小さい頃、ケンタ……。

 ぼんやりと男の子の姿が思い出しきている。でも肝心な顔までは覚えてなかった。

 なんだろうあの日側に居てくれて嬉しかったお兄ちゃんのはずなのに。

「……お兄ちゃん」

 アリスの中でその単語だけが引っかかった。

「ケンだ! そうだ思い出した」

 ケン。優しくて側にいて守ってくれた私のたった一人のお兄ちゃん。

「そっかケンにぃの所で一緒に生活出来るんだ」

 これからずっと居られると思うと胸がドクンと弾んだ。


 ◇


 一週間後。

 両親に空港で見送られて一日中ずっと乗っていたから、機内はブラインドを閉めて数時間。寝ていた。

 するとアナウンスでもう日本に着くと鳴り目を覚めた。

「ん……」

 目を開けブラインドを開けて見てみるとビルとか建物が小さく見え初めて見る街並みに一気に目が覚める。

「ここで、ケンと一緒に新しい生活するんだ」

 こんな綺麗な街並みで期待を膨らませるアリスだった。


 成田空港に到着し荷物を受け取り待ち合わせの場所で待っている。

 数時間待っていると女性が自分を呼ばれた。

「アリスちゃんお待たせ」

 私は会釈をした。

「それじゃあ行きましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

 車に乗って高速に入った頃叔母さんが話しかけてきた。

「ホームステイしてくるなんて驚いたわ」

「急ですいません」

「良いのよ。アリスちゃんが日本に興味があったからホームステイしてきたのでしょ」

「はい」

「まあウチじゃ日本ぽくはないけど楽しくやりましょうね」

「はい。よろしくお願いします。ケンにぃ……。ケンは元気ですか?」

「ええ元気よ。あの子も来月で中学生でいまだ信じられないけど。アリスちゃんもこんな美人さんになってビックリしたわ」

 他の人に綺麗て言われたことないから少し戸惑ってしまった。

「あ、ありがとうございます」


家の近くに着き車から降りると黒いかわらが目に入った。

少し家と違う形で新鮮。

「それじゃあ車入れるから少し待ってて」

「はい」

 叔母さんは車を車庫に入れ玄関に立ち止まり鍵を開けた。

「アリスちゃん、ここが我が家よ」

 ガチャと玄関開いたその先には男の子が立っていた。

 その瞬間すぐに誰なのかわかった。

 身長は伸びているも顔つきと雰囲気でケンだと直感が叫んでいる。

「ケンにぃ! 会いたかったよ!!」

 会いたかった感情が爆発して抱きついていた。

「ちょ、ちょっと離れてくれ」

 ケンが背中を叩き離れた。

「一つ確認したいんだが、アリスで間違いないのか?」

 ケンが不思議そうな表情をしていた。まるで宇宙人を見ているかのようだった。

「うん。そうだよ。アリス・エルガード。久しぶりケンにぃ」

 こうして私の新たな生活が始まった。

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