【連載中断中】超地味スキル【接着】! ~武器修理くらいしか取り柄がないと思っていたけど、史上最強の魔剣を復活させてしまった~
波瀾 紡
◆第1章:パーティー追放編
第1話:地味スキルしかない俺は、パーティを追放される
「アディには、このパーティから脱退してもらおうと思う」
ギルドに併設された酒場での、今日のクエストの打ち上げ。
突然リーダーの【重剣士】ドグラスが重々しく口を開いて、そう言った、
「えっ!? 俺が脱退……? 何で?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「お前は剣士だが、ほとんど剣士としての役割を果たしていない。俺たちに比べて弱すぎて、剣士のくせに最近はずっと後衛だ」
ドグラスは大きな身体で俺を見下ろしている。
全然、聞き間違いなんかじゃなかった。
「だよねー、ドグラス。俺たち3人の成長に、アディはまったくついてこれていない」
【黒魔術師】フォスターは狐目を嫌らしく細めている。
そして鼻をフンと鳴らした。
「ほら、フォスターもこう言ってるぜ、アディ。何か反論は? ……まあ言い訳の余地も無いだろうがな」
【白魔術師】マリリアットは、目を丸くして言葉を失っている。
俺以外の3人はパーティ結成から1年でAランクまで上がった。
しかし俺は当初のDランクのままだ。
俺も彼らと同じクエストをこなし、経験値を積んでいるはずなのに……なぜか俺の剣士としての実力は、ほとんど上達していない。
「俺はみんなと比べ、確かに戦う能力は完全に劣っている。でも……武器が折れる度に、何度も俺が【接着】という特殊スキルで直してきたじゃないか」
そう。俺は子供の頃から、気づいたら【接着】という特殊なスキルを身につけていた。
折れた物、割れた物を、手で触れて念じるだけでくっつくけることができるスキルだ。
俺たちは貧乏だから、全員が武器や防具も、安物を長年使い込んでいる。
ドグラスのサーベル、フォスターのマジックワンド、マリリアットのロッド。
みんなボロボロで、何度も折れては俺が修理している。
だから【接着】は超地味スキルなんだけど、武器修理だけには地味に役立っている。
「ああ、そうだな。だがそれがどうした? お前の役割は道具屋か?」
いや、俺は道具屋になるつもりなんかない。
俺がなりたいのは、強い冒険者だ。
「いいか、アディ。俺たちは既に、高難度のクエストを難なくこなせるようになった。今日の魔物討伐報酬なんて、100万ジルだぜ! 金も貯まって、新品の高性能な武器が買える。つまり、お前の接着スキルなんて、もう無用の長物ってことだ」
「あ、いや……フォーメーション指示だって、俺がやってるよな?」
「はっ? 確かにやってるが、それがどうした? フンっ! あんなのは、なんの足しにもなっていない!」
ドグラスは鼻でせせら笑った。
被せるようにフォスターも笑う。
「ははは、ドグラスの言うとおりだ! 俺もドグラスも、お前の指示なんか無視してるけど、何の問題もなく魔物を倒せるんだよ!」
二人が言うのはもっともだった。
確かに俺の指示を無視して動いても、パーティーは連戦連勝だ。
ドグラスの物理攻撃とフォスターの魔法攻撃は凄まじい。
それにマリリアットの強力な治癒魔法。
「なんならアディ。お前を道具係で雇ってやろうか? 月給1万ジルでな。クックック……」
そんな薄給で?
さすがに俺の価値をそこまで低く見られていたとはショックだ。
「断わる。俺がなるのは道具係じゃない。俺がなるのは、冒険者だ」
「じゃあ決まりな。お前はクビだ! お前には才能がないんだ! カッカッカ」
嫌らしく笑うドグラスに、マリリアットが横から助け舟を出してくれた。
「ちょっと待ってくださいよ、ドグラスぅ……私たちのパーティには、やっぱり剣士は必要ですよぉ……」
唯一マリリアットだけが味方をしてくれた。
彼女は童顔で、優しくおっとりとした性格。
だがドグラスは、自信満々に言い返す。
そう言えば昔から、自信が服を着て歩いているようなヤツだった。
「安心しろ、マリリン。実はAランクの剣士が一人、明日から新加入してくれることが決まった。Dランクのアディと違って、
「えっ……? もうそんなことまでしてたんですかぁ? そんなの、アディがかわいそうですぅ……じゃあ、私も……」
「おっと、マリリン。じゃあ私も抜ける、なんて言わせねぇぜ。お前はウチのパーティに必要な人材だ。お前は聖女にまでなって、弟を喜ばせたいんだろ?」
「そ、それは……そうですけど……」
マリリアットは困った顔をしている。
彼女にはまだ幼い弟がいる。
その弟は、マリリアットがAランクに昇格してクエストで活躍していることを、目を輝かせて嬉しそうにしていた。
そうだ。マリリアットは、弟のためにもこのパーティを抜けるべきではない。
「ありがと、マリリン。でも、もういいよ……わかったよ、ドグラス。俺は抜ける」
「おお、それが賢明な判断だ。お前にも、それくらいはわかるようになったか。少しは成長したじゃねぇかアディ」
「そうそう。それがいいよな、アディ! まあ元々いてもいなくても変わらないんだし」
くそっ、ドグラスもフォスターもいちいちムカつく言い方をしやがって。
1年前に同じ孤児院の同い年4人でパーティを組もうという話が出た。
強いドグラス達と組めば、俺も経験を積めて、強くなれるはず。
──そう思ったから、俺はコイツらと合流することを決めた。
嫌な性格の二人だと知っていたが、共に冒険をすれば、もしかしたらお互い分かり合えるかも……
なんて考えていた俺は、甘かったってことか。
だがここまで言われるなら、もうコイツらなんかこっちから願い下げだ。
「じゃあ、今日の分の報酬をくれ」
「ああ。ほらよっ」
ドグラスがテーブルの上に放り投げたのは、しわくちゃの1万ジル紙幣。
「なんだこれ? 今日の報酬はみんなで100万ジルだろ?」
「ああ、アディの働きなんてホントはゼロだけどよ。餞別代わりに、特別にそれだけやるよ」
「はぁっ!?」
なんだコイツ。
どこまで俺をバカにするんだ?
苛立って言葉が出ない。
ドグラスの憎たらしい顔を睨むことしかできなくなっていたら、突如俺を助けるような言葉が横から聞こえた。
「おいドグラス! セコいことを言うな! お前みたいなヤツらがいるから、私たち孤児院出身者みんなが歪んだ目で見られるんだ!」
振り向くと、1年前まで俺たちの孤児院にいたキャティという女の子だ。
赤毛のショートヘアで、やや吊り上がった猫目のレッドアイズ。
小柄で細くて華奢な体躯。
とても美人なのだが、他人を寄せつけないクールな雰囲気をいつも纏っている。
孤児院でも孤高の存在だった女の子。
そんな子が──俺のためかどうかはわからないが──いきなり声をかけてきたことに驚いた。
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【読者の皆様へ】
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