後ろ

奈良大学 文芸部

後ろ ミルキー

 ここのランチおいしいよねえっ、なんで時々仕事中後ろを見ているかって? あー、癖なんだよね。中学の時に体験したことが原因で・・・・・・。

________


「よし、お母さん部屋の片づけ終わったよ。」

「じゃあ、リビングの片付け手伝ってくれる?」

「はーい。」

 母の言葉に返事をしながら、リビングにあったダンボールを開け、中にあるものを取り出していく。六時くらいまで作業して、あらかた家の片づけが終わった。

「あとは明日にしよう。」

「今日はコンビニかどこかで何か買って食べましょうか。もう遅いし。」

「道覚えたいからついていっていい?」「俺も」

 両親の言葉に弟と返事をする

「いいわよ。お父さんは?」

「俺はなんでもいいや。」

 母と弟と一緒にコンビニに向かう。

「コンビニはあのトンネルの向こう側にあるのよ。」

「えっ、**トンネル? 近いね。」

「歩いて五分くらい? 確かに前の家よりかなり近いな」

「そうなのよ。便利よね。」

 話をしながら歩いてトンネルに到着する。日が完全に暮れているせいなのか向こうは暗くてでよく見えなかった。

「真っ暗じゃん。」

「近くに、新しい道路ができたから経費削減されたのかしらね? でも歩いてだったらこのトンネルを使ったほうが近い場所も多いのよ。」

 母はそう言ったが、私はどこか不気味で気味が悪いと思った。もう通らないでおこうと考えたが、時折使ううちに気にならなくなった。近道をするのにこのトンネルはとても便利だった。

 ある日、部活の居残り練習で遅くなった日、ほとんど日が落ちていて街灯に灯りがともり始める時間にトンネルを通っていた時だった。私は後ろから誰かがついてくるような感じがした。後ろを見るが誰もいない。少し怖くなり早歩きする。

 コッ

 後ろから足音が聞こえた。おかしい、後ろには誰もいなかった。怖い。私は走った。トンネルを抜け、家に駆けこみ、玄関で息を整える。

「どうしたの、大きな音を出して。」母が居間から驚いた顔を出しながら言う。

「ううん、ちょっとトンネルが怖くて走ってきたの。」無理やり笑いながら答える。

「ああ、あのトンネル灯りが少ないものね。」

「そうそう、いや、結構暗くて気味が悪かったよ。」

「そうよね。あっ、ご飯できてるわよ。着替えていらっしゃい。」

「うん。」私は頷きながら二階の自分の部屋に上がる。あれは、たぶん気のせいだな。そう無理やり自分を納得させる。考えないようして、一晩寝るとすぐに忘れてしまった。

 思い出したのは、仲良くなった子たちと一緒に 昼食を食べている最中だった。

「ねえ、**トンネルの怖い話って知ってる?」 

「うーん、知らない。」「ねえねえ、どんな話なの?」

 突然ある女の子が言った。ほかの子たちも知らなかったようで、興味深そうにしている。

「昔Aさんの彼氏がBさんと浮気したの。その現場を見たAさんはBさんをあのトンネルで見かけて、問いただそうとしてるうちにけんかになったの。その時のはずみでAさんは車に引かれたらしいの。それ以来、Bさんの髪が腰を超えるくらいの長さだったんでBさんかどうか確かめようと、そのくらいの髪の長さを持つ女の子を追いかけてくるらしいよ。」

「結構ありきたりな話だね。」「まだBさんを探してるのかな?」周りのみんな話してるのを聞きながら私は少し青ざめていた。私の髪は腰を超える長さを持っている。

 しばらくは何ともなかったため、また部活で遅くなり近道をしようと夕暮れ時にトンネルを歩いていると、後ろから……

 こっ

 足音が聞こえた。慌てて早歩きになる。

 こっ、こっ、こっ

 走り出した。

 かっ、かっ、かっ

 足がもつれそうになりつつ走る。

 もう少しでトンネルの出口だ。ほっとした瞬間。

 ガッシ

「オマエカァァァァァァァ」

 きゃああああああああああああああああああああああ

 私はその場で悲鳴を上げ、気絶した。目を覚ますと隣でお母さんがほっとした顔をしていた。どうやら、私の悲鳴が聞こえて、慌てて聞こえた場所に行ってみると、トンネルの出口で私が倒れていたそうだ。救急車を呼んで病院につれてきたらしい。その後検査でも何も異常はなかった。ただ、私はあのトンネルを使うのやめた。一年後にはまた父の仕事の転勤で別の場所に引っ越した。

                                

 今では本当にあったことなのか疑問に思ってるんだけどね。ただそれ以来後ろを確認する癖ができちゃったんだよ。だって、後ろって振り向かないと何があるかわからないじゃない。後ろに何か変なものがいても気づかないしね。だから、あなたの後ろは大丈夫? 確認したほうがいいかもよ。

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