第32話剣姫との戦い
ラルヴァンダードがホルミスダスと呼ぶ女性が真紅の瞳でこちらを見ている。
「今、姉さんって言ったね」
春香はラルヴァンダードの銅色の瞳をみる。
「ええ、あれは三博士の次女で鉄と炎を司るホルミスダス。あたしのすぐ上の姉です」
じっとラルバンダードは両手に剣をもつ美女を見た。
「でも姉さんは支配されているようです。あの瞳がその証拠です、王様」
「おい、来るぞ」
ミスリルの盾を前面に構え、獅子雄は豹の剣を抜剣する。
「そのようだ」
サンジェルマン伯爵も抜刀する。
わが君、聞こえますか……。
かすれた女性の声が春香の精神に響く。
聞こえるよ。
春香は答えた。
恐らく、その声はホルミスダスの声に違いない。
そうです、私は三博士の一人ホルミスダス。アスタロートの罠にはまり、このような姿になってしまいました。私の額にあるサークレットを破壊してください。それが私の精神を
う、ううっ。
そこでホルミスダスの声が途切れた。
「獅子雄、きいて。あの人の額のサークレットを破壊してほしい。あれが彼女をコントロールしているみたいなんだ」
「わかった。やってみる」
獅子雄は答えた。
またどこからか春香は情報を得たようだ。彼がどうしてそのようなことができるのか獅子雄にはわからい。だが、今は彼を信じてやるしかない。
「ねえ、春香。あいつと何かはなしてた。私もちょっとだけどきこえたんだ。あの額を狙えばいいんだね」
ホルスターから魔銃フェンリルを抜くと零子は言った。
「ほう、さすがは
サンジェルマン伯爵は零子に言った。
「なにそれ、意味わからない」
「戦士として、いや、人として進化しているということだ。さあ、三博士の一人を解放してやろう」
鈍い金属音が鳴り響く。
剣姫の長剣がサンジェルマンを襲う。それをサーベルで受け止める。
じりじりと彼は後退する。
とても女性のものとは思えない。
弾丸は寸分たがわずサークレット目掛けて空を駆け抜ける。
だが、弾丸は円月刀によってはじかれてしまった。
剣姫ホルミスダスは一瞬にして弾道を読み、防いでしまった。
「やはり、そう簡単にはいかないか」
零子は派手に舌打ちする。
「なら、これならどうだ」
一歩後退し、サンジェルマン伯爵は距離をとる。
列泊の気合いとともにサーベルによる斬撃を幾度となく繰り出す。
すさまじいのはホルミスダスである。
その苛烈なる攻撃をすべて片手で受け止めていた。
本来ならホルミスダスの円月刀を弾き飛ばすことができるはずだった。
だが、そうはならない。
剣姫は華麗に獅子雄の怪力を利用して円月刀で受け流す。
豹の剣はむなしく空を切るだけだった。
まったく無駄のない動きで攻撃に転じ、ホルミスダスは円月刀で斬りつける。
獅子雄は鉄壁を使用し、防戦にまわるしかなかった。
右手の長剣と左手の円月刀がまるで別々の生き物のように動いていた。
今ならいけるかもしれない。
ホルミスダスは両手でサンジェルマン伯爵と獅子雄をそれぞれ相手にしている。
もう一度狙いを定め、零子は魔銃フェンリルの引き金を引く。
弾丸がホルミスダスの額を襲う。
その瞬間、零子はみた。
ホルミスダスが零子の瞳を見て、にやりと笑うのを。
思いっきり後方に背をのけ反り、ホルミスダスは弾丸をかわした。後頭部が床につくのではないかと思われるほどだ。
弾丸はただ空間を切り裂き、石壁にめりこむだけだった。
膝だけの力でもとの姿勢に戻るとふたたび両手の剣でサンジェルマン伯爵と獅子雄に襲いかかる。
村雨丸も隙をみて攻撃しようとしていたが、その隙がまるでない。彼女の動物的直感が力量の差があまりにもありすぎることを察知していた。
陛下、苦戦しているようですな。
その声はペトロ会長のものだった。
ああ……。
激戦を見て、春香は答える。
すでに十分なジューダス・ペインが貯まっています。慎んで進言致します。今こそ戦士たちの武器を進化させましょう。
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