第21話鬼の長

 菊一文字をひきぬくと、カインは前のめりに倒れ、まったく動かなくなった。

 ひゅっと刀を一振し、ついた血液を振り落とす。

 刀を鞘におさめると、美穂は静かに目をとじた。

 観ること。

 誰にも聞こえないぐらいの小さな声で呟いた。

 激戦が彼女をさらに強くしていた。


 魔銃フェンリルをかまえ、零子は美穂の横に立つ。

「気をつけろ、まだなにかいるぞ」

「そのようですね」

 菊一文字の柄に手をかけ、美穂は言った。



 窓近くの月明かりに照らされた空間から何者かが現れた。

 闇がぐにゃりと動き、人の形になる。

 黒装束の男がそこにあらわれた。

 男は頭巾をとる。

 そこにいたのは精悍な顔立ちの男であった。

 額には赤い角が生えている。

「ご安心ください、私は敵ではありません」

 手のひらを前にだし、男は言った。


「安心しろって、一回だまされてるからな、こっちは油断できんよ」

 竜馬が男の様子をうかがいながら、言った。


「あなたは、タツミ殿……」

 アベルが角を生やした男の名前を言った。

「知り合いですか」

 春香がきく。

「はい。あそこにいるのは緑の小人族の上位種で鬼人オーガの長であるタツミ殿です」

「いかにも私は鬼人族の長である、タツミともうします。救世主の戦士の方々、私はカインとアベルの兄妹を迎えにきたのです。ですが、残念ながら、兄のほうはこのようなかたちになってしまったようですね。これも我々一族をないがしろにした結果かもしれません。その傲慢さ故にあなたがた森の一族は滅びようとしているのです」

 鬼人の長タツミは言った。


 チラリと春香はアベルの顔をみる。空美の治癒能力により、傷口はふさがったものの、まだ辛そうだった。

「彼女を迎えにきたとは」

 春香が聞く。

「我が里に彼女を迎えるためです。もともとは同じヒト族から派生した我々は子をなすことは可能なのです。ですが、彼女たちは我々を醜いと言い、拒みました。その結末がこれです」

 もう動かなくなったカインの肉体のすぐ横にかがむ。兜をぬがせると美しかったカインの顔が毒により、なかばどろどろに溶けていた。


 思わず、空美は手で口をおさえる。零子と美穂は目をそむけた。


「森の一族はあなた一人となりました。さてどうしますか、アベル殿」

 タツミは問いかける。

 数秒、アベルは考え、鬼人の長の元に歩みよった。ふらりと倒れる。そのエルフの薄い肉体を軽々とタツミはだきあげた。

「こうなっては仕方ありません。あなた方の所にまいりましょう」

 アベルはうなだれ、言った。

「悪いようには致しません、アベル殿。これでも私は高潔なあなた方を尊敬しているのですよ」

 にこりと微笑み、タツミは言った。


 あらためてタツミは春香たちに一礼した。

 じっと春香の女性のような顔を見る。

「あなたが王なのですな。なるほど、あなたにはかつて七十二柱を付き従えさせた者のオーラが見えます。それが選ばれた理由の一つかもしれませんね。これもなにかの縁です。お近づきの印にこの妖刀村雨をお受け取りください」

 そう言うと、タツミは黒い鞘に収まった短刀を春香に手渡した。


 第二ステージをクリアしました。

 コテージが拡張されました。

 幻影都市が解放されました。

 天王寺春香に「魔人殺し」「鬼の友」「薬学博士」の称号が与えられました。

 貝塚獅子雄に「銀騎士」の称号が与えられました。

 難波零子に「魔道銃士」の称号が与えられました。

 岸和田美穂に「剣将」「精霊弓の名手」の称号が与えられました。

 岬空美に「司祭」の称号が与えられました。

 岬海斗に「火炎の魔術師」「召喚士」の称号を与えられました。

 住吉竜馬に「特級厨士」の称号が与えられました。

 ドロップアイテム「魔人の鎧」「死神の弓」「ミスリルナイフ」「ミスリルレイピア」「妖刀村雨」をアイテムボックスに送ります。


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