第11話ステージクリア

 A4の用紙を抱えるように持ちながら、亜矢は美穂に語りかける。

 それは放課後のことであった。

 ほんの数時間前のことである。

「ねえ、美穂は進路希望なんて書いたの?」

 甘ったるい口調が亜矢のくせだった。

「うん、私はね、とりあえず文系の大学に進学希望って書いといた」

 亜矢の用紙を覗きこみながら、美穂は聞いた。

「私はね、デザインの専門学校にしたんだ。将来はイラストの仕事がしたいなって」

「亜矢意外とちゃんと考えてるんだね」

「意外ってなによ」

 そう言うと亜矢は美穂の首に抱きついた。

 あの時の体温の暖かさは忘れられない。

 泣き虫で甘えん坊で寂しがり屋。でも手先が器用で勉強もできた。

 私なんかよりもちゃんと将来のことを考えていた。

 でも、その亜矢は冷たく、地面に横たわっている。


 悲しみと怒りが心の奥底からこみあげてくる。

 よくも親友を殺したな‼️



 全力疾走し、美穂はアラクネーの体を駆け登った。

 すでに零子によって蜘蛛の体部分を撃ち抜かれ、アラクネーの動きは緩慢そのものだった。人間部分の顔が苦痛のため、醜悪にゆがんでいる。


 いい気味だ。

 美穂は思った。

 ざまあみろと。


 菊一文字の柄に手をかける。

 固有特技ユニークスキル抜刀術を使用する。

 稲妻のごとき速さで菊一文字は抜刀され、アラクネーの白い人間の胴体を切りつけた。

 右腕が吹き飛び、さらに豊かな胸も無残にきりさかれた。

 血が奔流となってふきあがる。

 ゼエゼエとアラクネーは荒い息を吐いていた。

 ほうっておいても絶命するだろう。

 だが、それでは美穂の気がすまない。

 菊一文字の切っ先を魔女アラクネーの喉笛につきたてる。

「お前たち人間は……」

 大量の血液を吐きながらアラクネーは言う。

「人を殺すために我らをつくり、いらなくなれば殺すというのか。あれもこれも欲しがり、いらなくなれば捨て去る。それこそが、人の罪だとはおもわないのか……」

 アラクネーがなにかを言っているが、美穂には意味がよくわからなった。彼女の感情は復讐だけに支配されていた。

「いいたいことはそれだけ」

 冷酷に美穂は言う。

「ああ、そうだな。これでやっと死ねるのか……」

 ずぶりと肉を裂く感触が手のひらにつたわる。

 菊一文字の切っ先はわずかに力をいれるだけでアラクネーの喉に突き刺さり、簡単に突き抜けた。

どさりと鈍い音がし、アラクネーの巨体は倒れた。

 美穂は菊一文字を一振する。刀身についた血はすべてふりはらわれた。刀を鞘に納め、地面におりる。


 第一ステージクリアしました。

 クリア特典として、コテージが使用可能となりました。

 次元の扉が解放されました。

 天王寺春香に「勝利者」「駆逐する者」の称号が与えられました。

 貝塚獅子雄は固有特技「鉄壁」を獲得しました。

 難波零子は固有特技「百発百中」を獲得しました。

 岸和田美穂は固有特技「剣技流星」を獲得しました。

 岬空美は固有特技「聖霊」を獲得しました。

 岬海斗は固有特技「召還」を獲得しました。

 住吉竜馬は固有特技「野営」を獲得しました。

 ドロップアイテム「魔女の血液」「蜘蛛の糸」「蜘蛛の外皮」をアイテムボックスに送ります。


 春香のスマホに電子音が流れ、文字が次々と刻まれていった。

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