シーズン後半開幕

シーズンは後半戦に突入した。セリエAにおいてもチャンピオンズリーグのグループステージにおいてもユーヴェは極めて順調である。

セリエAは前半シーズンを18勝1敗とほぼ完璧な成績で乗り切った。1敗は2位につけるクラブミラノに対するものであり、ここは珠に傷である。

チャンピオンズリーググループステージでは、ブルーズという難敵がいながらも全勝。今年のユーヴェは明らかに他チームとは異質であった。


ユーヴェはどんなに圧倒的に優勝しても、中々総得点数を多く獲得できない傾向にある。これは元来の守備的なユーヴェの戦術が起因している。だが、今年のユーヴェはとにかくよく点を取る。リーグ19節終了時点では49点をとっている。

チーム1のスコアラーはやはりローガン。17試合で21ゴール5アシストという圧巻の成績を残している。全公式戦では23試合28ゴール5アシストになる。

そして、セカンドスコアラーは秀徹だ。18試合15ゴール11アシストを記録している。ゴール数もすごいが、アシスト数が特に化け物じみている。このままならば、セリエAの記録を更新しそうである。また、全公式戦で25試合19ゴール13アシストを記録している。



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今年の世界最優秀選手賞には昨シーズンに圧倒的なゴール数を記録して、ミュンヘンをブンデスリーガ優勝とチャンピオンズリーグ準優勝に導いたレヴァンダが選出された。

2位にはブルーズをチャンピオンズリーグ優勝へと導いたデブライルが選出されており、昨年度の世界最優秀選手である秀徹は8位という順位に甘んじた。他にもローガンは4位、メーシュは5位と数年前には考えられなかった順位が並んでいた。

まあ、ローガンは単にチームの不調に流されてしまって、メーシュは怪我で結果が伸び悩んだだけではあるが、サッカー界の勢力図がだんだんと変化しつつあるのは明らかだった。



ただ、チャンピオンズリーグで良い成績を残せれば再びローガン・メーシュ時代も帰ってくる。彼は自身の価値をもう一度世界に知らしめるため、そしてメーシュを超える6度目の世界最優秀選手賞の栄光を掴むために気合を入れてチャンピオンズリーグに臨む。


決勝トーナメント一回戦の相手はマンチェスター・ユニオンである。

ユニオンは、秀徹と最後に戦った2018-19シーズン以来、補強を重ねて徐々に復調しつつある。エース格のポルバを失ったものの、ブレーノ・フェルナンデスというポルトガルの強力なチャンスメーカーを獲得。

RSBには対人守備能力が非常に優れているビスタを配置しており、さらにはCBにマグアレイ、RWGにブルーウッドという新手が定着している。以前のユニオンよりもずっと強い。


ユーヴェのホームで行われる一戦、ユーヴェはもちろんポゼッションを狙い、ユニオンはカウンターを狙う。両者の思惑が交錯する中、キックオフした。

ユニオンの警戒すべき相手はさきほど紹介した選手の他にも、CFのマンシェル、LWGのラッシュサードなどは非常に手強い選手だ。

彼らはおそらく明確な指示はないのだろうが、ポゼッションの核となるポルバを潰しに来ている。彼の担う役割が機能不全を起こすと、途端にこのサッキズムは機能しなくなる。実際に、彼を休ませる機会を与えると傍から見ても明確なほどにパスが通らなくなる。


そこを自律的に狙っているのだから、かなり賢い選手たちだ。ただ、カウンターを狙うチームだけあって、自陣深くで守るというスタンスがあるので、OMFのブレーノ以外のCMFおよびDMFはその前線での潰しを援護できていない。

レッズに在籍していた時にも秀徹は痛感したことだが、戦術というのはチームで共有し、一貫していなければ思ったように働かない。今回も同様に効果はあるものの、サッキズムを崩すには至らなかった。



さて、前半17分にユーヴェの攻撃が火を吹く。ポルバとラルジーによるパス交換の後、上がってきたクアドレードがパスの受け手となり、さらにディブラもそれに続く。

ディブラはそこから中央でパスを要求した秀徹へとパス。ゴールに背を向けてパス受けした秀徹は、後ろから寄せてきた相手選手を素早く右へとターンしてかわし、ゴールを目指す。

次いで寄せてきたマグアレイもアウトサイドで内側を走るローガンにパスを出すフリをして縦方向へとエラシコ。マグアレイは完全に騙され、キーパーとの1vs1の状態を作り出した。


飛び出してきたキーパーに対しては、チップキックで相手を嘲るようにふわりと浮かせたシュートを放ってゴールを奪取。ユーヴェが先制点を掴み取った。



しかし、そこからユニオンも果敢に反撃してくる。前半27分、前のめりになって攻撃をしていたユーヴェからボールを奪ってカウンターを開始させた。

ボールをまずOMFのブレーノに送ると、ブレーノは左サイドに向かってとても速いグラウンダーのスルーパスを送り込む。そこに走り込むのはラッシュサードだ。ローガン2世と呼ばれるようなテクニックとスピードを武器にするストライカーだ。今年は27試合18ゴール4アシストを記録している。

ユーヴェのRSBクアドレードは攻撃参加していたので、ここはリヒトが対応する他ない。だがいかに彼の守備力が高かろうが、目の前からはブレーノ、すぐそばにCFマルシェル、背後からはブルーウッドが迫っている状態。数的に不利だ。

リヒトはいっそのこと、ラッシュサードに寄せて封じ込めようと彼を止めに出向くが、誤算があった。ラッシュサードの速さはリヒトの足でどうにかなるような速さではなかったのだ。正面から対面するならばどうにでもなっただろうが、並走した状態ではとても追いつけなさそうだ。

ラッシュサードはそのままピッチを疾走し、最後は自身の力でゴールをこじあけて1-1の状態へと戻した。



鮮やかに同点弾を決められたユーヴェはそこからも腐らずに攻撃を続けたが、同点になったことで追い風を得たユニオンの守備を中々崩すことができず、後半21分に至った。

ここでディブラに代えてドウグラス・コストが投入される。彼はウイングやOMFを主戦場とする選手で、セリエANo.1の突破力を持つドリブラーだ。彼のスピードは相手を非常に苦しめる武器となる。


後半20分を過ぎると、選手たちは次第に疲れの色が見え始める。そこでフレッシュな彼を投入すると、相手は彼を捕捉することすらできず、非常に効果的なのだ。逆に、最初から投入するとすぐにコスト自身のスタミナが切れてしまうので、先発入りはあまりしていない。サッキズムという戦術にもあまり合わない選手なので、味変のような使われ方をする。

彼が出てからは試合の流れが再びユーヴェに寄ってきた。このコストはとても速い選手なので、相手はついていけない。まあ、味方も置き去りにしがちだが、秀徹とローガンだけはそれにしっかりとついていく。

ディブラが入ったときとは少し違う、スピードを重視した三人による攻撃も有効であった。



コストが秀徹とスイッチ (入れ替わり)するように左サイドを駆け抜けるのは圧巻であったが、さらに強化された秀徹のスピードあるドリブルも前者が霞むほどに素晴らしかった。

普通はスピードときめ細やかなタッチを両立させるのは難しい。だが、彼はそれらを両立させてしまうのだ。走るフォームを変更したことから、まさに右利きになったメーシュを見ているようだった。いや、スピードなどを考えればそれ以上かもしれないとすら試合を見ていた小林は思う。


後半32分、左サイドへとコストがドリブルしていった。対応するのは今やプレミア1対人守備の上手いサイドバックであるビスタだ。

観客は面白いマッチアップになりそうだと期待したが、勝負は一瞬でついた。外側をドリブルすると踏んだビスタに対して、コストは相手を不意を突くようにして内側へと大きく蹴り出してドリブルした。左利きの彼が左サイドをドリブルするならば、外側から回るのが基本だ。それを逆手に取ったドリブルである。

スピードにおいて、このピッチで彼に勝る者は他に秀徹しかいない。ビスタもかなり速い選手だが、強固なセリエAの守備陣を壊滅させるほどのドリブラーに対応するのは難しかったようだ。


さて、ドリブルで内側を上がり、ペナルティエリア内へと侵入したコストは、並走しているローガンに横パス。ローガンは至近距離から弾丸シュートを打ち込み、ゴールを着実に奪った。





高橋秀徹


所属 ユヴェ・トリノ

市場価値:2億2000万€

今シーズンの成績:27試合、21ゴール、14アシスト

総合成績:223試合、181ゴール、86アシスト

代表成績:28試合、21ゴール、9アシスト

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