あなたに気持ちが伝えたくて

林藤 凛

第1章

第1話

今日も今日とて、何も変わらない一日を過ごすのか。

ここ最近、毎朝そう思って目を覚ます。

1週間程前に読んだ、恋愛ライトノベルの冒頭の1行。

なんの変哲もない恋愛小説だったのに、なぜか

そこだけが鎖のように頭に巻きついて離れない。

作者の意図通り、まるで自分を言っているようで。


7時に起きる。7時10分のバスに揺られ、2度寝。

朝食なんて久しく食べてない。

30分後、感覚で目を開けて猫背で下車し歩き出す。

教室に着いて、また寝る。


恋愛小説だけじゃなくても、心惹かれるように

描かれる学校、教室、そして隣の女の子。

そして、自分のいる木造100年の男子校を思い出す。

小学校で少し成績が良かっただけなのに、親に

言われるまま県で1番の進学校を笑顔で行くと

返事した4年前。

中高一貫校は2年で飽きて成績も緩やかに低下。

いまや、教室の机は2つ目のベットと化した。



教室の後ろでプロレスごっこを始めた体育系男子。

黒板に好きなアニメキャラを描き始めた

ヒョロメガネ。

哲学書を読み込む几帳面無口。

個性で飽和した男子校特有の雰囲気もいまや、

無個性にすら見える肥えた自分の目。


そんな見飽きたものから取り出したスマホに

目を移す。

ほぼ無意識でメッセージアプリを開く。

新幹線で2時間かかるところに住む女の子。

会ったことも無くゲームで知り合った他人。

それでも、久しぶりに感じる異性。

恋に飢えた恋愛ゾンビの自分はすぐに片思いした。

告白する勇気なんてなくても、想うだけなら許されると思って。

おはようのメッセージに返信した頃、9時のHRが

始まる。





『 本日、午前9時頃、○○県沖を震源に□□地方全域において震度6強の地震が発生。津波の心配はありません。建物の倒壊に注意してください』

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