Truth revealed ~ スマホを買っただけなのに ~
桜木樹
プロローグ
バイトに出かける準備をしながらスマホをいじる。
先日、長らく使っていたスマホが寿命を迎え、新しいスマホを買うまでのつなぎとしてフリマサイトで購入したスマホ。
光沢を放つピンク色。ただし画面には擦ったような引っかき傷があって、背面にも所々剥げた部分がある。
どうしてそんなボロいスマホを買ったのかと言うと、タダ同然の値段だったからだ。つなぎのスマホにお金なんて掛けてたら新品購入までの道が遠のいてしまう。貧乏学生の辛いところだ。
――それにしても、どんな使い方をしたらこんなことになるんだってカンジ。
「あっ! もうこんな時間。急がないと」
スマホをバッグにしまって、忘れ物はないかのチェックを済ませ家を出る。
玄関の外に出ると、足元からクシャッという音が聞こえてきた。
「ぅん?」
足元を見ると、白い紙が落ちていた。
それを拾い上げる。
二つ折りになった白い紙。何気なく開いてみる。
「うげ……なにこれ……」
なぐり書きされた赤い文字が目に飛び込んでくる。
――ドロボウネコ!!――
赤いボールペンで何重にも線を重ねた、怒りの籠もった汚い字。
「って……」
ドロボウネコってのは泥棒猫のことなんでしょうけど……
それはどういう意味かこっちが聞きたいくらいだ。
泥棒猫っていうのは人の恋人を奪うときに使われる言葉で、特に女性に対して使われる言葉だ。
つまりこのアタシが誰かのカレシを盗ったって言いたいわけだ。
――はんッ! 笑わせんなってカンジ。
こちとらカレシいない歴イコール年齢の寂しい人生を送ってきた身だっての。
「バイト前にテンションだだ下がりだわ……」
――もしかしてご近所さん宛の紙が風で飛んできたとか?
だったら、近くには結構な修羅場を迎えている人がいるってことだ。
「……仕方ない」
どこの誰だかしんないけどご愁傷さまってカンジ。
わたしは紙をくしゃくしゃと丸めた。
さすがにポイ捨ては気が引けるので、ゴミを捨てるべく一度家の中に戻る。
部屋の扉を開けたところからゴミ箱に向かって丸めた紙をシュート。ゴミは面白いくらい容易にゴミ箱に吸い込まれていった。
「よし! 3ポイント!」
実際はバスケの3ポイント程も距離は離れてないけどね。こういうのはノリよノリ。
「さて――」
気を取り直して、アタシバイトにでかけることにした。
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