さらば愛しき地球人~忘れないうちに記録しておく~

清涼

第1話 いやだわ、地震が来たら、いやだわ

一例

被害者面する彼女のことを、書いておきたい。

彼女は、女優を目指していた。

そのため、大手プロダクションのマネージャーと結婚をした。

学生時代から付き合っていた彼氏と別れて、そっちを選んだのは、

『自分のためになると直感したから』と言っていた。


しかし、夫となった男は、妻を女優にはさせなかった。

温かな家庭を夢見て結婚をした二人は、

家庭を脅かす『夢』に蓋をした。


美しかった彼女は、顔をゆがめた、巨体の象女になった。


私は彼女に言った。


『逃げなさい』と。


豊かな生活を捨てて、路傍の石になって、

あなたは自由にどこまでも、転がり続けなさい。


しかし、彼女は言った。


『ううん、良いの。私はもともと向いていなかったの。

私は苦労をしている人間だから、

女優さんとして、君臨して、周囲を動かせないってことに

気づいたの』


わからない?

あなたの我慢が、地面にたまっていくってことが。

あなたが我慢すると、何か良いことがあると思っているみたいだけど、

逆なのよ。


いやだわ。

地震が来たら、いやだわ。


女の我慢が、マグマになるって、気づいてよ。


彼女は、象のような足で、地球を踏んだ。


ぐらっぐらっ、と地球が揺れた。


◆私からの伝言◆


地球の女性たちよ。

『私さえ我慢すれば、すべて丸く収まるの』

って、被害者面するのは、やめてください。

結果として、だれも幸せになりません。

言うとしたら、こうがいいわ。

私は我慢はしない。その代わり、みんなを幸せにするわ、とかね。

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