パンケーキ

綿麻きぬ

「優しさ」「繋ぐ」「甘やかす」

 僕は君のことが好きだ。でもこのことは僕だけの秘密だ。だって君には彼氏がいる。それは誰もが知っていて、認めている。でも僕は認めない。あんなやつよりも僕の方が君にお似合いだ。あんなやつよりも僕の方が君といる時間は長い。

  

 そう、思いながら僕は君の横でパンケーキを作っている。君が作ってと言った、僕の特製パンケーキ。

  

 君は無防備な恰好をしてくつろぎながら、ゲームをしている。彼氏がいるのに、何故こうも男の家に上がり込んでくるのだろうか。それをよくも彼氏は容認しているよ。僕は絶対に認めない。

  

 でも、僕はなんやかんや君を甘やかす。今回もそうだ、彼氏がいると分かっているのに家に上がらせる。本当はそこで止めなければいけないのかもしれない。でも僕は君と少しでもいたいからそれを許してしまう。

  

 それはきっと優しさを騙った醜く歪んだ愛なのだろう。この醜く歪んだ愛が唯一、君と僕とを繋ぐ。

  

 こんな歪んだ物を考えている間にパンケーキは出来上がった。綺麗に盛り付けて、テーブルに出す。

  

 君はゲームをやめて、ありがとうと言い、パンケーキをほうばる。食べている時、君はすごく幸せそうな顔をしている。

  

 この笑顔を見るのを僕はやめられない。

  

 よほど僕が幸せな顔をしていたのだろう。君は笑い、なんでそんなに幸せそうな顔をしているのと君は僕に聞いた。

  

 なんでもないと僕は答えた所、君は笑うのを止めた。

  

 いい加減にしたら

  

 その言葉が君から発せられたことに気が付くまで暫く時間がかかった。何が起こっているか分からない。僕は怒られているのだろうか、責められているのだろうか。

  

 ただいつもの優しい君ではないことは確かである。いつもの君はどこに消えた? そもそも君は存在していた?

  

 いいや、君は存在していない。

  

 君はもう手の届かない所に行ってしまった。もう二度と会えない。だって死んでしまったのだから。

  

 君の彼氏なんてものはいない、君が手に入らない理由のために無理やり作った幻想だ。

  

 僕はきっといつまでも君に固執している。僕の初恋で今も好きなのだから。

  

 手元には僕の作ったパンケーキがそのまま残っている。

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パンケーキ 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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