8.18.増加する力


 さぁ俺のターンです。

 いやー、狼である俺たちにとって準備とかいうものはあんまり必要ないんですよね。

 だからこの二ヵ月か三ヵ月の間は自由に行動ができたりするわけでございまして、あのー……ねっ?

 暇なんだわ。


 人間たちと違って仕事しなきゃいけないってこともないし、お金のことなんて考えなくていいし、とりあえず今日腹いっぱい食べられるだけのお肉さえあれば満足です。

 あと水場。


 まぁ流石にこの期間ずっとダラダラしているわけにもいかないので、少しばかり貢献できそうなことをするついでに、土狼の性能をもう少ししっかりと見ておきましょ。

 ぶっちゃけこれだけで勝てる気がする。

 でもやっちゃうと勝った感を人間たちに実感させることができないからな……。

 難しいところだぜ。


 んじゃ早速土狼を使ってみましょうかね。

 よいこらせっ。


 ということで土狼を手始めに五体ほど作り出した。

 どれも中型犬くらいの大きさなので、機動力は高く体も小柄なので見つかりにくい。

 これであれば索敵に十分使うことができるだろう。


 とりあえず視界共有……。

 んー、一気に五体分の視界を共有することはできなさそうだな。

 気になるところを見て回る、って感じにしないといけないのね。

 まぁ動かせるからその辺は適当に弄りながらやってみることにしましょうか。


『さて……。まずは何処に向かわせてみるかな……』

『『『何をするのですか?』』』

『こいつらで人間の情報を集めるんだ。情報があるないで戦いは大きく左右されるからな』


 三狐がぴょこっと背中から降りてきて、土狼に近づいた。

 界が匂いを嗅いで、くしゃみをする。


『っきし! なんかむずむずします……』

『知らんがな』

『オール様。この土狼に凄い魔力を入れたんですね』

『ん? いや、別に普通に作っただけなんだが……』

『え? ま、まさか無意識でここまで濃い魔力をこの一体に注ぎ込んだんですか?』

『いうてそんな魔力は使ってねぇぞ?』


 うん、全然使ってないです。

 それに俺らは魔力を作り出すことができるから、魔力なんてあってないようなものなんだけどね。

 魔素のない大地では少し厄介だったが……。


『オール様。この土狼、あんまり使わない方がいいかもしれませんよ』

『ん? どうしてだ?』

『土狼って、土の波を起こして敵を飲み込む魔法ですよね。普通であればそれだけで終わるのですが……この魔力量だと規模が計り知れません』

『えっ……』


 え、いや……そんな馬鹿な。


『ダークエルフを始末した時に一回使ったが、あれと同じくらいだろ?』

『い、いや……あれの五倍は……』

『えぇ? なんだなんだ? 俺そんなに魔力制御下手になってたのか?』

『……いやこれは……オール様が魔力制御が下手になったわけではないかと思います』

『じゃ、じゃあなんだよ……』


 ちょっと待ってよ。

 そんなこといきなり言われたらなんか怖くなるじゃん。

 特に変わったことなんてないぞ?


 冥が少し心配した様子で、その原因となっていることを口にする。


『もしかしたらなんですけど……群れが多くなっているから……では?』

『……ほん?』


 え、ま、まぁ確かに最近っていうか先日新しい子供たちが産まれましたね。

 それは分かっているけども……。

 え、群れが大きくなると俺の力が倍増するの?

 なにそれ。

 そんなことある訳な……。


 …………ちょっと待てよ。

 まず俺が一番初めに力が増幅した時って、リーダーになった時だったよな。

 そこから始まってんのか?


 そ、そそ、そういえば……俺が仲間たちの魔法をすべてコピーできるようになったのも……子供たちが産まれた時だったような気が……。

 え、えっ、じゃあ今回のこの無意識の魔力制御も……群れが増えたから……?


『……んー、いうて悪いことじゃないな』

『『『余裕で自然破壊する力を持っているので気を付けてください』』』

『まじかよ!!』


 それは気を付けるわ!!

 やっべ土狼作っちゃったじゃねぇか!!

 こいつ使わないと消すことできないんだよな!!


『ん~すげぇやっちまった感。水狼の王とかこれどうなるんだ』

『自我を持つかもしれませんね』

『魔法が自我を持つなよ!!』


 使うのやめるわ!

 あー、クソウ。

 これじゃ監視カメラ作戦が実行できないじゃないか……。

 んむー……これ以外に視界共有できるような魔法とかないしなぁ……。


 まぁこの五匹はどうせ使わないといけないし、こいつらで情報収集をして見るとしますかね。

 できるかどうか不安でしかないけど、まぁなんとかなるっしょ。


『そういえばオール様。レイとウェイスが後で模擬戦に付き合ってほしいと言っていましたよ』

『そうか。あー、あいつらとも手合わせ全然してないからな。第三拠点の付近でやるとするか。よし、とりあえず土狼は向こうに行ってこい』


 俺は土狼を動かして、サニア王国とテクシオ王国の方角へと走らせる。

 あとは適当なところで視界共有をして配置につかせていけばいいかな。

 よし、じゃあ久しぶりに手合わせしに行くとするかー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る