7.22.後始末
『よくやったぞ二匹とも!』
『『へへん!』』
『よくやったじゃないわこの馬鹿! もう少しで死ぬところだったぞ!』
活躍した息子二匹に褒め言葉を贈るガンマだが、死んでしまえば危険と判断されるのだ。
俺が回復魔法で少し治してやらなかったらマジで死んでたぞ。
特にシグマがぶっ飛ばした奴な!
ていうかいつの間に炎上牢獄を取得していたのだろうか。
俺教えた記憶ないんだけどなぁ。
ちなみにだが、あれだけ大きな叫び声と爆発音が響いたので、領民も起きてきて騒動を確認しにきている。
野次馬が集まってしまっている状況になっているが、騒ぎを聞きつけてディーナがこちらに歩いてきた。
周囲の惨状を見て難しい顔をしていたが、すぐに俺の所にきて質問を投げかける。
「これは……お前たちがやったのか?」
まぁこれに嘘はないので、とりあえず頷いておく。
ベリルが来ないと弁解できないが……あとでどうにかなるだろう。
悪いのはこの冒険者二人だからな。
何か言われるのを覚悟していたのだが、ディーナの反応は予想とは全く別の物だった。
「よくやった」
『……ほん?』
「あー、通訳が居ないから一方的な話になってしまうが、こいつら盗人なんだ。どうやって紛れ込んだのか知らないけど、お手柄だよ。だからここに……」
そう言いながら、ディーナはボロボロになった盗人の懐をまさぐり、一つの小さなポーチを取り出す。
それをひっくり返してみると、中から大量の金品が出てきた。
見た目に似合わないほど高価な物を持ち歩いているということを見るに、確かにこの二人は盗人だったのだろう。
だが金品よりもあのアイテムはなんなのだろうかという疑問の方が勝ってしまった。
大量の荷物が入っていたところを見るに、魔法道具か何かだろうか?
「これ持ってる時点でおかしいんだよね。ったく手間かけさせやがって。貿易商の旦那が首傾げてたわけだよ。おーい衛兵! こいつらふん縛りなー!」
「は、はい!」
あとのことは彼らが何とかしてくれるだろう。
とりあえず子供たちは寝かせるとしましょうかね。
ガンマにそう言って、二匹は眠らせることにする。
今度は親の所で寝てもらいましょう。
あの時メイラムが止めてくれなかったら確実に殺してただろうし、礼を言っておかないとな。
『助かったよ』
『いえ……。しかし、強いですね……』
『だな。こりゃ将来有望だ』
まさかあそこまで戦えるとは俺も思っていなかった。
追い払う程度くらいかなと考えていたのだけど、倒してしまうとはな……。
強いことに問題はないんだけど、できれば次からもう少し手加減して欲しいものだ。
だがこれで人間も迂闊に手を出してはこないだろう。
暫くの間二匹は怖がられるかもしれないが、結果的にいい方向に持ってこれたので誤解はすぐに解けるはずだ。
こいつらとも模擬戦しておかないとな。
まぁまだ早いだろうけど……視野に入れておいても問題ないだろう。
次はベンツの子供が魔法を使えるように育ててもらっているしな。
スルースナーが居なくなった今、そういう教育はアリアとヴェイルガにさせている。
ヴェイルガ最近大忙しだけど、一角狼たちをうまく動かしているので何とかなっているのだとか。
今度労っておくとするか。
「フェンリル。ちなみにどいつがこいつらを捕まえてくれたんだ?」
『あの子たち』
目線を子供たちに向けておく。
それに続いてディーナもそっちを見る。
「……冗談か?」
その言葉に首を小さく横に振って否定しておいた。
あの二匹がやったことは紛れもない事実であるし、それを隠す必要もない。
だがディーナは中々信じられないようで、訝しげに二匹の子供を見ていたのだった。
まぁそう簡単に信じられるわけないよな。
子供がやりましたって言っても嘘だと思われるのが普通だし。
見てないと信じてはくれないだろうね。
「……そうか。とりあえずヴァロッド様にはそう伝えておくよ」
あ、信じてくれるんだ。
いやこれ信じてるか微妙なところだな?
別に構やしないけどね。
さ、騒動も落ち着いて来たみたいだし、俺も寝ることにするかなぁ。
今日は面白い物が見れたということで、よしにしましょうかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます