6.1.増えた子供たち
平和な時間は、それなりに長く続いた。
あれから一年。
季節が回って子供たちも全員が立派な大人になり、狩りもしっかりとこなせるようになっている。
当初から見ている俺はその成長にほっこりしながらも、生後二ヶ月の子供たちに遊ばれていた。
一年という年月は、仲間たちが番を作るには十分な時間である。
意外と繁殖力があるんだなと今になって思う。
数が数なので、今はちょっとした食糧問題に悩まされているのが現状だ。
冬の間に備蓄をほとんど消費してしまった。
子供を抱えている時のメス狼は食欲も旺盛になるようで、それが一度に六匹も現れたのだ。
それ故に、子供も増えました。
まぁ子供が増えるという事は食料も減るわけで。
個体数が増えてたのでそれも仕方がない事ではあるが、魔物の群れが来なくなったからなぁ……。
多分あの時の悪魔のせいだろうけど。
今思えば割と良い食料の供給源だったなぁ……。
まぁ無くなってしまったことを嘆いても仕方がないので、まずはこの一年で変わったことを説明していこう。
先程も言った通り、子供が生まれた。
それに伴い番ができるわけで……夫婦となった仲間を紹介していくとしよう。
あ、俺ですか?
無理に決まってるじゃないですか、やだなぁもう。
まぁ俺の事は置いておいて、兄弟が結婚しましたよ。
ガンマとベンツ。
二匹はスルースナーの群れだったメスと結婚しました。
ベンツの相手はレスタン。
ガンマは皆のお母さん狼のアリアだ。
まぁ一年前からいい感じになってたのは知ってたし、遅かれ早かれとは思っていたけどまさか同時期にとは思っていなかったなぁ。
ベンツの子供は四匹で、ガンマの子供は二匹だった。
親の遺伝子を強く受け継ぐのか、ガンマの子供はベンツの子供に比べて随分と大きかったように思える。
適性魔法も同じようなものになるのだろうか。
成長が楽しみである。
名前だが……これは俺が決めてあげた。
というか決めて欲しいと頼まれたので、それに承諾しただけではあるが、こうして子供の名付け親になるのは良い物だ。
ベンツの子供の名前だが、まずオスが二匹にメスが二匹。
男の子らしい名前とメスらしい名前がいいとは思うのだが、ここで考えてしまうのは車の名前。
なんせベンツも車の名前なのだから、子供たちにも車の名前を付けてあげたい。
男の子の名前はすぐに決まった。
ジムニーとセダン。
ベンツに似て真っ黒な毛並みをしているが、セダンだけは雷みたいな白い線が入っている。
これはレスタンの特徴が反映されてるっぽい。
毛並みも親に似るもんなんだなと思いながら、俺はメスの名前を考えた。
だが女の子らしい名前の車って何かあったか?
と、一瞬迷ったけど考えてみれば結構あった。
その中で選ばれたのは、セレナとマーチである。
普通に女の子らしい名前だと思わないかい?
誰が聞いても車の存在を知らなければ、普通の可愛らしい名前だと認識してくれるはずだ。
マーチは真っ黒な毛並みで、セレナは白色だった。
だがセダンと同じ様に黒色の雷みたいな線が入っている。
スポーツカーみたいな柄だ。
ベンツの子供たちは非常に活発で、隙あらば外に出ようとして皆を困らせた。
母親になったレスタンもそれに頭を抱えていた様だ。
よく皆に謝っている姿を目にする。
だが子供のする事だ。
まだまだ足も遅いし許せる範疇。
というかのびのびしてもらいたいな。
……車の名前を付けたから走りたくて仕方がないのだろうか?
いやそんなまさか。
次はガンマの子共。
ガンマの名前はギリシャ文字だったので、子供にも同じような名前を付けることにした。
どちらもオスだったので、名前はラムダとシグマ。
俺たちの群れの中では初めてとなる双子だ。
産まれた当初はどちらも体が小さかったはずなんだけど、いつの間にかベンツの子供たちよりも大きくなっていた。
まぁガンマが大きいからなぁ……。
そう言うところまで引き継いでいるみたいだ。
ラムダは灰色でガンマと同じ毛並みである。
一方シグマは薄い赤色。
アリアの毛並みが赤茶色なので、少しだけその色が混じったかなという感じだ。
分かり易くて大変結構。
二匹は俺の大きな腕をどうにかして持ち上げようと一生懸命になっているのをよく見る。
体の大きさが違うのだからまず無理なのだが、それでも子供たちはそれだけでも楽しめているようなので放っておく。
小さな顔を腕の下に必死に潜り込ませようとしている所を見るだけでも、俺は幸せです。
リーダーで良かった……。
あ、そうそう。
他にも生まれた子供たちはいるんだけど、一角狼のあの三匹。
立派に大きくなって、今はヴェイルガ指導の下、雷魔法を特訓中である。
元リーダーであり、一番角の長い個体のヴェイルガは我儘ではあるがこの一年で精神的に大人になったようで、今は積極的に雷魔法を教え込んでいる所を目にする様になった。
良い兆候ではあるのだが、やはりあの時のあいつはまだ子供だったんだなぁと再度理解した。
思い返してみれば同じ一角狼のガルザとデンザの気苦労が知れる。
元より上に立つより誰かに付き従う方が得意だったのだ。
仲間になった時のあの変わりようには少し戸惑ったな……。
というか、この感じで行くと一年で変わったことを再確認するだけでも随分な時間がかかってしまいそうだ。
まぁこれは俺にとっても必要な事なのでしっかりとやっていくつもりだが、できるだけ短くまとめるとしよう。
『ふおおおおおお!?』
『うわあああああ!!』
『ころころー!』
『ころころー!』
あっ、三狐が他の子供たちに遊ばれてる。
あいつら丸っこいからよく転がるんだよなぁ。
お陰でいい遊び相手になってくれているので、俺の負担も少し減る。
まぁ俺の負担なんてあってない様な物だけどな。
俺から触れないというのが一番辛い所だ。
潰しかねん……。
さてと。
じゃあ最後に軽く全員の成長を確認していくとするか。
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