5.35.最強の竜


 一体の竜を何気に倒した後、俺たちはその強い竜がいるという場所まで向かった。

 そこは暗い洞窟。

 だがその大きさは俺の何十倍もあった。


 よくもまぁこんなにデカい物が作られた物だと感心しながら、少しばかり不気味な洞窟へ足を運んだ。

 中に入るにつれてひんやりとした空気が毛を撫でる。


 この洞窟の中は、随分と凸凹している。

 住処を無理矢理作ったのだろうか?

 とても自然にできたとは思えないような作りだ。


 そのまましばらく歩いていくと、俺の耳に唸り声の様な物が届いた。

 恐らく件の竜の鼻息か何かだろう。

 近づいてきているのは間違いない。


『『『ふええええ……』』』

『……』


 情けない声出すなよ……。

 お前ら竜自体が苦手なのか?

 それで俺に頼みに来た……って訳ではなさそうだけどなぁ。


 とりあえずどんどん進んで、さっさと話しを付けてしまおう。

 でも俺、竜と会話できなかったんだよなぁ。

 大丈夫かな?

 まぁこいつらがいるし、とりあえずは何とかなるか。


 そんな軽い気持ちで洞窟の中を進んでいく。

 進めば進むほど、竜の声は大きくなっているので近づいてはいるのだろう。

 時々だだっ広い空間にも出てきたりしたが、音はずっとしているので進むべき道を間違えるという事はない。


 ひょいひょいと凸凹した道を進んでいくと、光が見えてきた。

 何だと思って見てみると、どうやらそれは太陽の光だったようだ。

 洞窟の終わりかとも思ったのだが、どうやら違うらしい。


 そこに入ってみると、大きな広い空間だった。

 上を見てみればぽっかりと穴が開いており、青い空が見て取れる。

 なんだか火山の火山溜まりから火山の火口を見上げているようだ。


 そして、そこに奴はいた。

 灰色の鱗を全身に纏い、それは太陽の光に当てられて輝いている。

 爪は鋭く尖っており、随分と綺麗に手入れがされている様だ。

 今は翼をたたんでいるのだが、それでも体の大きさはとんでもなくデカい。

 先程あった竜よりも大きいと思うので、おそらく三十メートルくらいの大きさがあるだろう。


 今は寝ているのだが、姿を見ただけでもとんでもない威圧感があった。

 この場にいるだけで押しつぶされそうか感覚に襲われる。


『『『ひゃあああああああああ!』』』

『煩いな! 起きたらどうするんだ!』

『『『起きないと会話できないですよ!』』』


 いやまぁ確かにそうだけど!

 俺たち不法侵入でこいつの所に来てるから、勘違いされたら殺されるかもしれないでしょ!

 お前らマジで黙ってろ!


『『『うわああああああああ!』』』

『なんで叫ぶんだよっ!!』

『『『やっぱ怖いんですぅうううう!!』』』

『知るかよ!!!!』


 お前らの事情とかどうでもいいわ!


『ていうか頼むから黙れ!』

『『『ふわああああああ!!』』』

『おい! おいお前──』

『『『わあああああああ!!』』』

『うるせっての!!』


 俺たちが暫くそんな事をしていると、俺に影がかぶさった。

 丁度狐たちに顔を向けていたので、竜の姿は見ていない。

 俺はそれに気が付き、ゆっくりと前を見てみると……。


 やはり竜が俺を上から見ていた。

 叫びそうになったが、圧に押されて声を出すことが出来ない。


 巨大な目玉がギョロっとこちらを向く。

 そして、俺の方をじっと見た後……。


『あーはっはっはっはっは!! あはははははは!! はっはっはっは!!』

『!? !!?』


 竜はとんでもない程に大きな声で笑い始めた。

 俺はすぐに伏せて耳を塞ぐ。

 それは狐たちも同じだったようで、すぐに耳を塞いだ。


 これ……鼓膜破れそうなんだけど!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る