5.8.紹介


 戦いがひと段落付いた後、俺はスルースナーを回復魔法で癒してやった。

 いやぁ、まさか飛び出てた骨全部折れてるとは思わなかったよね。

 どんだけ威力あったんですかさっきの魔法。


 まぁ確かに魔法は複合する程強くはなりますけども。

 そこまで行くとは思わないじゃん?

 ま、まぁスルースナーは生きているっぽいので、大丈夫です。


 しかし、こいつ凄い戦い方するなぁ。

 命削りながら戦うとか、普通出来るような奴いないぞ……。

 誰も止める奴はいなかったのだろうか。


 ていうかさっきの魔法ってどうやってやるの!

 いや、流石に自分には使いたくないけど、知っておけば何かの魔法の参考になるかもしれないからな。

 大方闇魔法だとは思うけどね。

 でも気絶してるから骨が出たまんまだな……。

 どうしよう。


 とりあえず生きているという事は分かったので、俺はスルースナーの仲間に目を向ける。

 全員が座っており、リーダーが生きているという事にほっとしている様子だ。

 すると、一匹の狼が前に出てくる。


 赤茶色の毛並みをした狼だ。

 見たところ、どうやらメスであるという事がわかった。


『あの……』

『ん?』

『有難う御座います』


 そう言うと、後ろの控えていた狼たちも頭を下げた。

 別に大層なことはしていないと思うのだけど……まぁ悪い気はしないな。

 あ、そうだそうだ。

 俺は聞きたい事があったんだった。


『そう言えば……なんでお前たちの群れはそんなに少ないの? 俺たちも他の群れの事をとやかく言えるほど、数は多くないが……』


 俺たちだけでも数は二桁を越えている。

 スルースナーが敵リーダーを何度も倒したと言っているので、他にも群れは沢山いたのだろうという事が推測できた。

 それは当たっているようで、前に出ていたメス狼が少ししょぼんとしていた。

 もしかすると聞いてはいけない話だったのかもしれない。

 謝ろうとしたとき、メス狼はその事情をゆっくり話してくれた。


『元々は……ニ十匹の群れでした。ですが……寄生生物によってめちゃくちゃになったんです。その寄生生物はオスにだけに寄生し、戦い合いました』


 寄生生物は二匹だったらしいのだが、その寄生速度は異様な物だったらしい。

 何度も何度も寄生先を変え、リーダーを殺めては自らが群れの頂点に立とうとしたのだという。

 オスが多かったこの群れは、瞬く間に数を減らしていき、今はこれだけしか残っていない。


 だが、スルースナー意外にもう一匹のオス狼がいる。

 紫色の毛並みをした毒々しい狼だ。

 こいつは何の影響も受けなかったのだろうか?


『あ、ああ。この子はメイラム……。毒の魔法を使います』

『どくぅ!?』


 毒って……。

 どうやって作るんだよそんなもん!

 あ、あれか。

 俺が顔出した時に紫色の玉を放り込んできたやつ。

 よかった当たらなくて!

 なんてもんぶん投げてくるんだよ怖すぎんだろ!


 闇魔法かと思ってたぜ。

 今度じっくり見て教えてもらおう。


『ああ、そう言えば名前』

『あ! すいませんそうでした。私はアリアです。それでこの子たちが……』


 そう言いながら、アリアは仲間の名前と能力の事を教えてくれた。

 アリアは群れのお母さん的な存在らしい。

 皆の事この子とか言ってるしな。

 面倒見がよさそうだ。


 アリアは赤茶色の毛並みをしているメス狼だ。

 炎魔法を得意としているらしい。


 先程戦ったのはスルースナー。

 闇魔法、身体能力強化の魔法、回復魔法に適性があるらしい。

 闇魔法と身体能力強化の魔法で骨格を変形させることが出来るのだろうか……?

 あまりやりたくないな。

 覚えとくけど。


 紫色の毛並みをしているのは、先程アリアから教えてもらったが、名前はメイラム。

 オス狼である。

 紫とは言っても、全身が紫だという訳ではなく、黒の毛並みに紫がかかっているような毛並みだ。

 メイラムは毒魔法を得意としているのだが、その毒は全身を回っているらしい。

 以前相手に捕食されかけた時、流していた血を飲んだ相手が速攻で死んだのだとか。

 即効性の毒なんですね。

 その為か、寄生生物に寄生されてもその毒にやられて寄生されずに済んだのだろう。

 そんなメイラムは闇魔法しか持っていないらしい。

 毒魔法を使用するのに何個重ね掛けしているのだろうか。


 毛並みの殆どは黒だが、足元だけ青み掛かった毛並みをしているのはラムイム。

 水魔法を得意としているらしい。

 暫く旅をしてきたようだし、ラムイムが水を出して生活を安定させていたのだろうな。

 だがあまり戦闘は得意ではないらしい。

 狩りも得意ではないのだとか……。

 大丈夫かな。


 灰色の毛並みに所々黒い線が入っているのはルースという名前のメス狼。

 この群れの中ではとても普通な毛並みをしている。

 土魔法に適性があるらしく、防御魔法を多く覚えているのだとか。

 何それ知りたい。


 茶色の毛並みをしているメス狼はレイア。

 土魔法と水魔法に適性上るらしい。

 だが、水魔法はなぜかあまりうまく使えない様だ。

 その代わり、土魔法で植物を操ることに長けているらしい。

 なんでだろう……。


 最後は雷のような黒色の毛並みにに白い線のような模様が入っているメス狼、レスタン。

 その模様に似合う雷魔法に適性があるらしい。

 後闇魔法も使えるようだが……。

 これは複合できそうにないよなぁ。

 俺知らないもん雷魔法と闇魔法を使って作る魔法なんて。


 と、向こうの狼たちは全員教えてもらった。

 今度は俺たちの事を教えておかないとな。

 その前に……一回帰った方がよさそうだ。

 そこで全員を紹介しよう。

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