第五章 増えていく仲間

5.1.体調万全


 いい匂いで目が覚めた。

 何だろうと思い周囲を見てみると、シャロが肉を焼いていた様だ。

 とてつもなくでかい肉を。


『!? おおおお!? シャロなんだそれ!!』

『あ! オール兄ちゃん起きたー!』

『『『わー!』』』


 すると、小さい子供たちが俺の毛から出てきた。

 いつの間に入ってたんだお前ら……。

 まぁいいけどさ。


 ていうか何あのでっかい獲物!

 俺びっくりしたぞ!

 どっからそんな奴持ってきたの!!


『なんっだその獲物は! どっから持ってきた! てかしっかり焼いてんのな!』

『だって焼いたほうがおいしんだもーん!』


 いやそりゃそうかもしれないけど……。

 こんだけでかい獲物だったら狩るの大変だっただろう……。


 ていうか本当にシャロ炎魔法使うの上手くなってんな。

 デルタに土魔法で吊り下げているのだろうけど、全体的に火が通るように炎を伸ばしている。

 上手いもんだ。


 ていうか、子供たち少なくね?

 小さい子供たちは俺の所にいるけど、他の子たちはシャロ以外いない。

 ベンツとガンマもいない様だ。

 何処に行ってしまったのだろうか。


『シャロ、他の皆は何処に行った?』

『今は狩りに行ってるよー』

『狩り? こんなにデカい獲物がいるのにか?』

『何言ってるんだよぅ。これはオール兄ちゃんの分だよ』

『……お?』


 俺の分……?

 こんなにデカい奴をか?


『いや、これだけデカかったらお前たちで食べたほうが……』

『ベンツ兄ちゃんが言ってたよ。食べてもらわないと戦えないから絶対に食べてもらってねって』


 お、おう……。

 まぁそうかもしれないけど……そうかぁ。


 俺の為に狩ってきてくれたのか。

 これだけデカい獲物を……。

 嬉しいなぁ。

 ここまでやってくれて、食べないってのはあれだな。

 ありがたく食べさせてもらうとしよう。


『ありがとうな。あとどれくらいで出来る?』

『もうできるよー!』


 であれば、近くに行くとしよう。

 俺が立つと、小さい子供たちがコロンコロンと転がっていった。

 ごめん、考慮していなかった。


 だが子供たちはそれも楽しんでいるようだ。

 お、心臓だ。

 旨そう。

 心臓は焼いてないのね。

 内臓は出来るだけ取り出して、身だけを焼いている様だ。

 とりあえず腹減ったし、内臓つまんどこう。

 美味し。


『オール兄ちゃんこっち食べてよー』

『味の薄いのから食べるのがいいんだよ』


 そう言えばこの辺に岩塩とかないのかな。

 あ、でも俺たちにとってはちょっと体に悪いか?

 焼くだけでもちょっと体に悪い気がするけど、まぁ旨いからよし。


 これからヌシの座を巡って争いが始まるんだもんなぁ……。

 結構大変になりそうだぜ。

 その分食料は手に入れやすそうだがな。


 そうこうしていると、肉が焼きあがったらしい。

 シャロは肉を焼くのが上手くなったな。

 俺がしなくても自分でやってくれるからありがたい。

 俺は焼きあがった肉に口をつける。


『わあっ! オール兄ちゃんまだ熱いよ!?』

『大丈夫だ。俺はな』


 まぁ元人間だし、熱いのはそんなに怖くない。

 皆はまだ少し冷ましてから食べるようだが、俺は焼きたてを食べれる。

 これがまた旨いんだなぁ。

 ただの焼いた肉だけど、それがいい。


 てかこの肉何なんだろう。

 トカゲみたいな大きさだけど……つがいでもいたのかな。

 いやぁ……旨い。


『シャロの焼いたのは旨いなぁ』

『だろぉー! へへんっ』


 可愛いもんだ。

 しかし、シャロも随分と大きくなったな。

 俺が大きくなってしまって、大きさを少し見誤ってしまう。

 シャロたちももう産まれて半年。

 まだベンツよりは小さいが、大人としての体格を有している。


 子供っぽさもそろそろ抜けていくだろう。

 ガンマも半年くらいで兄さん呼びになったしな。


 小さい子供たちは、今生後二ヵ月。

 どんどん大きくなっているが、まだ俺の頭に全員乗れそうだ。

 小型犬より少し大きいくらいかな。


 まだ魔法はレイ以外使えない様だ。

 少し遅い気がするが、まぁ大丈夫だろう。

 レイみたいにまた新しい魔法を使ってくれたら、俺は勉強になるからな。

 時間はかかってもいいから、強い魔法を編み出して欲しい。


『あれ、もう無くなった』


 気が付けば、もう既に全ての肉を食べてしまっていた。

 まだ入るけど……八分目っていうしな。

 これくらいでも十分だ。


『旨かったよシャロ。また焼いてくれな』

『任せろぅ!』


 お?

 ガンマに口調が似て来たな。

 ま、身体能力強化の魔法を教えたのはガンマだし、シャロはガンマに憧れているみたいだしね。

 だけど馬鹿力は二匹も要らない。

 一匹でいいです。


 さてと、まずは情報収集だな。

 体調も万全になったし、これからは周囲の地形情報と敵の情報を集めて、有利に立ち回らないといけない。

 時間はかかるかもしれないが、まぁ問題ないだろう。

 っし、頑張りますか。

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