4.17.狩り見学
ダークエルフであるフスロワの案内から二日が経った。
あれからも狩りを何回か行ったのだが、とても子供に見せれるような物ではなく、残念ながら子供たちは魔法の参考にできなかったようだ。
それが何かと言うと……。
まずは風刃で三枚下ろし。
何が起こったのか全く分からなかったようで、子供たちは首を一斉に傾げた。
風刃で何も参考にならなかったようなので、今度はもっと分かりやすい土魔法で動物を捕獲してみたのだが……。
まず風魔法が分からない子供たちに土魔法を見せても何の意味もなかった。
悲しい。
という事で、まず風魔法でなんとか魔法という物を理解してもらう必要があるらしい。
今の俺の魔法の威力はとんでもなく強くなっているので……。
俺では力不足でしたね!
『ベーンツ!』
俺はベンツに助けを求めた。
いや無理っすよ。
だって雲にも届くくらいの威力上るんだぞ?
無理だよ。
という事で、俺はベンツを召喚した。
『なに?』
『子供たちに魔法を見せてやってくれ』
『……あれ? 兄ちゃんがやるんじゃなかったの?』
『俺では役不足だったようだ』
『……?? わ、わかった……』
とりあえずベンツは来てくれたので、後は獲物を探さなければならない。
出来ればすぐに見つけてさっさと子供たちに魔法を覚えてもらいたのだが……。
こういう時に限って獲物はマジで出てこない。
これなんなんだろうね。
必要な時に出てきて、別にどうでもいいやーって時に出現するあれ。
あの現象に名前を付けたい。
『あ。あっちに居るみたい』
『マジで?』
匂いを嗅いで確認してみると、確かに動物がいた。
それなりに大きい動物の様だ。
『よく分かったな』
『音は意識しなくても聞こえるからね』
『ああ~。なるほどな』
索敵はベンツの方が優秀かもしれないな。
よし、では獲物も見つかった事だし、さっさと狩りに行くことにしよう。
そう言った所で、ベンツが消えた。
『おい!?』
待ていこの野郎。
お前速すぎんだよっ。
見えないんだよっ!
とりあえず匂いで獲物の位置は分かっているので、そっちに向かって走る。
子供たちが上にいるので、あまり速度は出せないが……。
と思っていると、ベンツがこちらに戻ってきているというのが分かった。
その速度は随分と緩やかだ。
ああ、なるほど。
前みたいに獲物をこちらにおびき寄せてから狩るんだな。
じゃあ俺のやることは……。
木の陰に隠れる。
ただこれだけ。
匂いでベンツの獲物の位置は分かるので、来た瞬間に飛び出せば問題ないはずだ。
後は、ベンツが仕留めてくれる。
匂いを嗅いで集中する。
暫くすると、ベンツが獲物を連れてこちらにやって来た。
五十メートル程近づいたところで、俺はばっと飛び出してその獲物とベンツを捉える。
獲物は丸っこい羊の様奴だ。
ゴロゴロゴロゴロと事がってベンツを追いかけている様だが、全く追いつけていない。
この場合は……!
『ベンツ!』
『了解!』
俺は地面に手を打って、土魔法を発動させる。
転がってきているので、とりあえずその速度を殺せばベンツが攻撃できる隙ができるはずだ。
ベンツが一気に右に飛びのいて、道を開ける。
その瞬間に俺が土魔法で羊の真下の土をかち上げた。
「!!?」
転がる速度を完全に殺された羊は、回転しながら上空に飛ばされる。
空中にいる敵程格好の的はいない。
ベンツは俺の前に現れて、風刃を五つ撃ち込んだ。
その攻撃は羊の毛を貫通した。
鮮血が噴き出して、羊が地面に落下する。
地面に体を打ち付けた羊は、そこから完全に動かなくなってしまった。
どうやら死んだらしい。
『ふぅ! 久しぶりに風魔法で倒すのは……、ちょっと難しかったな』
『お疲れ。助かったよ』
子供たちも、先程の狩りはしっかりと見ていたようだ。
感心したようにベンツと狩った獲物を、フンスフンスと興奮した様子で見ている。
これで子供たちは魔法の重要性を見出してくれただろう。
『久しぶりに一緒に狩ったね』
『ああ、確かに。こういう連携はやっておかないとな……』
『この旅が終わったら、ガンマと一緒にまた行こうか』
『だな』
ベンツと軽い口約束をした後、その獲物を運ぶ。
そろそろ肉に火を通した食事を作ってやるとしよう。
これで炎魔法の重要性を知ってくれたら、小さい子供たちも炎魔法を使う様になるだろうという試みだ。
ここからでも重要性を見出して欲しい。
頼むぜ子供たち。
今度は君たちが料理をしてくれ……。
料理できたらマジで俺が喜ぶから!
頼むぞ!
一匹役に立たないからな!!
ふっふっふ……。
今日はジンギスカンだぜ……!
炎魔法を操れるようになった俺を舐めるなよ。
とりあえずベンツに羊の毛を刈ってもらって、内臓を取り出してもらう。
なぜこんなことをするのか理解できていないようではあったが、それは見てのお楽しみという事で黙っておく。
羊は俺の爪で解体していく。
あまり上手くはないが、腕と足、背中と脇腹に分けておけば、それっぽくなる。
ぶつ切りなのでボロボロだが、このまま火にかけていく。
土魔法で木を集め、炎魔法で着火。
石をまな板上に切って、それを焚火の上に置く。
土台は土魔法で作ればいいので、これで調理台の完成である。
今の俺は風刃で岩を斬れるらしい……。
知らんかった……。
石を十分に加熱して……その上に肉を置く。
肉汁を零さないように焼いていけば、美味しく焼ける。
味は何もついていないが、これだけでも十分に味が出るはずだ。
『あれ? 良い匂いだね』
『美味しそう……』
『うまそー』
『たべたーい』
『オール兄ちゃんはやくぅ』
『もう少し待って』
焼ける前に、まな板を作った時に余った石を、地面に置いておく。
皿の代わりである。
今度は味付きの料理が作りたいなぁ。
とは言っても、俺はそんなに料理の知識ないんだけどね……。
塩振って焼けば旨い程度の知識しかないんで……。
ごめんね。
出来た料理を、地面に置いた石に並べていく。
闇魔法の闇の糸で掴んでおけば、俺も火傷しない。
料理は熱いので、ある程度は風魔法で冷ましてから子供たちに振舞った。
『いいぞ~』
『わあああ!』
子供たちはそれを口にする。
一口食べて一瞬固まったが、それからは無言で一生懸命食べ始めた。
どうやら口に合ったようだ。
ベンツもそれを一つ食べて、驚いた様子で食べ続ける。
どうやらベンツも気に入ったようだ。
『俺も食べよう』
と思ったら、もう無かった……。
もう一回焼こう。
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