第25話

 場面は二日後。

 車は動かないように細工しておいた。

 駐車場で立ち尽くす彼女。

 微笑みながらゆっくりと近付く僕。

 彼女の思考が僕の中に入ってくる。


 僕の目を陽だまりのようだと――

 僕の手を大好きだと……


 彼女の首に手をかける。

 僕の指をあたたかいと感じてくれている。

 僕の声を――聞いてみたいと思ってくれている。


 僕は……


 僕は……もう一人の俺じゃない

 彼女と話がしたい

 こんなに悲しませたまま、彼女を消してしまいたくない

 君の大切な人たちは誰一人死んでいない――現実では誰も傷付いていないと伝えたい


 ここで、この手に力を入れてしまったら、指先が彼女の首にくい込み――消してしまうだろう。


 最後に……最後くらいは俺のシナリオじゃなく、僕の思うようにさせてくれ


 ――僕は電話を鳴らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る