捜索二日目 ~友達の証言~
第10話
前の日から降り出した雨はかなりひどくなり、川の水かさも増してきた。
俺は少し高い場所で全身に雨を受けていた。
「明日は晴れて暖かくなりそうだな。明日にするか」
気がつくと由香の家の前まできていた。紺色の軽自動車が止まっている。
「車はあんまり得意じゃないんだよな」
つぶやきながらボンネットを開ける。
「――よし」
いきなり場面が変わって翌日になる。
まだ夜も明けきらないうちに電話をかける。
「もしもし? 玲さんがお姉さんのことを気に病んで自殺しようとしてるんです」
電話の向こうで息を飲む気配がする。
「あの桜の木のある公園の近くの川で、お姉さんと同じ場所で死のうとしています。ほっといていいんですか?」
小さい悲鳴とともに電話が切れた。
「さてと……あとは待つだけ」
再び高い場所へ戻り、時を待つ。
「おっ、きたきた」
紺色の軽自動車が川岸まできたが、止まらない。
止まらないどころかスピードを上げて、川のそばまで駆け上がり横滑りするように川に転落し、消えていった。
「もしもし? 警察ですか? 今、川に車が――」
電話を切り、次を待つ。
「早く来てくれよ。彼女の性格だと今日は早く出勤するはずだからな」
間もなく遠くからサイレンの音が近付いてきた。
「そろそろ……仕上げか」
パトカーの到着を待って川の近くまで下りて行き、何事かと見に来ていた人に声をかける。
「どうやらこの二日間で増水した川に車が落ちたらしいですよ。まだ人が乗ったままみたいですね」
急いで川を覗き込む様子を見て、そっとその場を離れる。
道路側から走ってきた人影は、そのまま川を覗き込む。先程声をかけた人が彼女の隣に行き、状況を説明しているようだ。
友達の名前を叫ぶ声――。
「うまくいったな。次は、母親にでも死んでもらうか」
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