戦いを成すモノ 〜リヴェルナ共和国戦記〜
緋那真意
序章 僕は、思い出す……
第1話
僕、ナオキ・メトバは、思い出す……。
僕の母国、リヴェルナ共和国は長年にわたり続けられてきた市民による反戦運動に歩み寄りを図りたいとして、ある条件付きでの軍縮協定の調印に応じた。
その条件とは、軍縮に当たって戦力の削減に伴う戦力不足に対応するため、当時の最新技術を投入した新兵器の導入を認めること。
無条件での軍備完全撤廃を求める市民活動家たちからは批判を受けたものの、いきなりの軍備完全撤廃は現実にそぐわないとする政府の姿勢は世論の大多数から支持を集め、結果条件付きでの軍縮が行われることになった。
陸海空の各戦力が緩やかに削減され人員も減らされる中で、政府は軍縮の条件としていた新兵器を導入した。
それが、遠隔操縦型機動兵器ウォー・パフォーマ(War Performer)である。
有線、あるいは無線による遠隔操縦によって、人間に代わって戦闘行動を行うヒト型に近いロボット兵器。全高は3m程度で、火器などを扱うための精密なマニピュレータと強い衝撃に対応するための逆関節型の脚部を持ち、初期生産型である01A型は最終的に千五百台ほどが生産され、陸軍を中心に配備された。
約束していたこととはいえ、半ばだまし討ちの形でWPの配備を強行したことは、軍縮協定にかかわった市民活動家や世論、周辺各国からの激しい反発を招くことになったが、政府は「約束は約束。それに新型兵器を投入することで人命を犠牲にすることも減る」と開き直り、WP導入を正当化した。
WP導入以後の戦場は当然一変した。銃火にも怯むことなく操縦が切断されるか内蔵電源の切れるまで戦い続けるWPは人間の歩兵にとって大きな脅威であったし、戦車より機動力が高く航空機による機銃掃射にも耐え得る耐久性能をもつWPは通常戦力による撃破が難しかった。
そのため、対抗策としてどこかにあるはずのWP操縦指揮所を見つけるために無差別爆撃を敢行したり、無線誘導のWPを無力化するための広域電波かく乱を実施するなど、過激な攻撃を仕掛ける国も出てきた。
しかし、世界各国が遅ればせながらWPを導入し、人間ではなくWP同士の戦いが主流になっていくと、WPの存在はなし崩し的に受け入れられていった。またWPの開発によってロボット産業が勃興し、経済が活性化するようになったこともそれを後押しした。
誰もが、それを平和な世界に逆行する流れであると知りながら。
今や戦場の主役は戦車でも航空機でもなくWPであり、WP無くして戦争は成り立たなくなっていた。
僕が軍に入隊することになった時、既に世界にはWPがあふれていたのだった。
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