飾られた時間
「時間がない」と慌てることが多くなった。
いくら「ない」と喚いても出てくるわけではないので、そんな愚痴は吐いても意味がないのだが、口癖のように繰り返してしまう。
時間がない場合、その大半においては時間の使い方に問題がある。自分一人だけに作業が集中しているか、効率の悪い方法を取っているか、二度寝やネットサーフィンのような時間の浪費をしているか。
理由は様々で、だからこそ「誰にでも出来る」時短本が登場したのだろう。
さて、自分は上記の理由にバッチリ当てはまる、時間の使い方が下手な人間であるわけだが、時たま奇妙な感覚に陥ることがある。
自分の時間がショーウィンドウに飾られていて、自分はガラス越しにそれを見つめている。既に持っているものを羨ましげに見ている構図になる。
大金のつまったアタッシュケースに目が眩むのは分かる。そんな多くのお金は持っていないから。けれども、時間はどうか。多くの時間を既に持ち合わせているではないか。いや、自分の時間の大半が満足に使えないから困っているのは承知の上である。例えるなら時間の造幣局員にでもなっている。毎分膨大な時間を刷っておきながら、それは決して自分のものにはならない……
全身の毛穴から常に時間が流れだし、蒸発する。お金は良し悪しは別として、厳重に保存、管理できるが、時間はナマモノのように常に傷んで腐っていく。来たものはひたすら食べるしかないのだ。それがうまいのか、まずいのか、時間の経過とはすなわちその二択でしかない。
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