身勝手さ


 物語には「主題」となるような事件があり、その事件を通して、各キャラクターは交流(友好・敵対問わず)を行う。

 事件が生まれるのは、敵役の思惑によるものもあれば、キャラクター間の認識齟齬、主人公の自業自得というケースもある。

 前述の例に共通しているのは、身勝手さによるものということだ。落ち度と言い換えてもいいだろうか。自分や他人、あるいはみんな・・・の身勝手さが事件を作る。

 勘違いしてはならないが、自分の都合を優先する自体は悪いことではない。優先するに足る理由があれば良いわけだ。(これが足らないと身勝手になる)


 前回に続いてホラー小説の話になってしまうが、理不尽に襲いかかる幽霊、モンスター、人間のエゴ、あるいは古くからの因習といったものが事件を招くように、ホラーものは身勝手さとは切り離せない関係にある。(とは言え、既に事件が終わり、狂気に満ちた世界で狂気に満ちた人間達が、自分達のルールの中で平穏に生きるという物語もあるが)

 身勝手さとは自分と他人との間にある、空気の膜を逸脱すること。それぞれに流れる物語の軸を自分側に引き寄せること。

 無論、引き寄せられた側は煩わしさ、圧迫感、強引さ、痛みを覚えることになり、不快になるだろう。


 だが、これによって物語は束ねられて、太くなる。一人ずつの物語が皆の物語になる。読み物としては面白くなる。

 現実世界でやると、よほどの見所がなければ非難は必至なのであるが…… 

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