第44話 数奇な運命
「いや、実はまだ始めたばかりなんですよ」
「ほう、それにしても、あれらの武器をいったいどこから仕入れているのか知りたいものですな」
「参りましたね……、それは企業秘密ってやつなんですよ」
などと、カルマがうまくはぐらかしていると、次第に、会話の中心はリンジーへと移っていった。
「いやー、それにしてもリンジーさんは美しいですな。我が国では、めったにエルフ族を目にすることはありませんから。エルフ族の女性はみんなリンジーさんのように美しいのですか?」
「あら、まぁ、将軍閣下はお世辞が上手ですねぇ」
「いやいや、お世辞だなんて……。それにしても、エルフのリンジーさんが、なぜ武器商人を?」
今度は、リンジーの素性に興味の矛先が向いたのだ。
こんな辺境では、只でさえ珍しいエルフ族に加え、リンジーの美貌はかなり目立つ。
そんなエルフの女が、武器商人の連れとして目の前でステーキを頬張っているのだ。興味の対象になるのは無理もなかった。
「ええ、それがですね……私はとある小国の王族だったんですけどぉ、クーデターで国を追われちゃって……。そのあと、まぁいろいろあって、冒険者になったんだけど、それだけじゃあ食べていけないので、武器商人になりました!」
――って、軽い感じで話しちゃったよ! この人は!
リンジーのあまりの開けっぴろげに、さすがのカルマも引いていた。
「……そ、そうなんですか……、いや、それはご苦労されたんですな……ははは」
将官達も、どん引きである。
それにしても、リンジーとはこんな性格だったのか……。
最初の頃は、もっと気位が高く、取っつきにくかったはずだ。
もちろん、クーデターの原因を作った自分に対する警戒心や憎しみから、心を開くことができなかっただけなのか……。
今でも、私を許したわけではないはずだ。
彼女なりに私という人間を見極めているのかもしれない……。
カルマは、成り行きとは言え、行動を共にすることになった経緯を思い出すと、自然と苦笑いを浮かべていた。
果たして、この奇妙なコンビがいつまで続くのか……。
「兵の訓練に三日、そして四日後に攻撃を仕掛けます。カルマ殿には訓練教官と攻撃のアドバイザーを務めていただきます」
食事を終えると、カンジス中佐が作戦の説明を始めた。
「敵の侵略拠点になっている要塞の攻略が最重要であり、そのためには、防御の
カンジス中佐は語気を強めた。
かつて、北方異民族の侵略を防ぐために、リディアス王国が建設した要塞が、今は北部同盟の拠点となって、ノーザンリーフを脅かしている。
王国の西部方面司令官だったカルマの父・ネイサンが生きていた頃なら、連邦諸国の危機として、真っ先に援軍を送ったことだろう。
今は、息子であるカルマが、武器を売ることで加勢しているのだ。
この数奇な運命にカルマは何を思うのだろう。
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