エイプリルフールのネタ

1年1回はあること

本日はエイプリルフール。

というわけで、嘘の天才ことカプソディアさんに語っていただきました。

(※撮って出しです)


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~



 やあ、みんな。

 屍蠍のカプソディアだよ。

 最近はなんか『カプア』って呼ばれることが多いけど、俺の本名を覚えてくれてる人いるかな。あ? カプア子爵ソォ博士ディア?? ちげーよ。カプソディアだよ。「ア」も小さな「オ」も本来必要ねぇ。

 俺の名前はカプソディアだ! 覚えておけ!


 ところでみんなには、1年に1回ぐらいこんな日があるよね的なことってあるか?

 俺にはある。


 それは何かというと「正直になりたい」だ。

 何を言ってるのかわからないという顔をしているな。

 俺もたまに何を言っているかわからない時が、1年に1回だけじゃなくて、月に2回ぐらいはある。


 具体的なことを言うと、ぐっと我慢して堪えていることを、どうしても言いたい日ってことだ。


 上司がヅラだと知っていても、なかなか言い出せない時のストレスとか。

 不倫とか、王様の耳はロバの耳的な?

 そういうのだよ、そういうの。

 これだけ説明してもわからなかったら、あとフィーリングで感じてくれ。


 ――――っで!


 回りくどく説明してしまったが、俺が何に正直になりたいかというと、それは1つだ。




 自分が魔族とバラしてみたい……。




 いや、もうさ。

 日々ハラハラドキドキなんだよ。

 たまーに不眠で寝られないぐらいに。

 カウンセリングとか行こうかなって真面目に考えたこともあるんだ。


 普段はなんとか抑えてるけど、1年1回どうしても言いたくなる時がある。


 悪いことだってわかってるんだ。

 その後、どうなることも……。

 なんつーか。それでも、そう――――!

 恐怖心より好奇心が勝るっていうか。

 怖いもの見たさ? みたいなのがあるじゃないか!


 そういう日があるんだよ。


 そしてついにその日が訪れてしまった。

 ちょっと前まではまだ良かった。

 冒険者だったしな。誰もいないことを確認して、森の中で発散してた。

 でも、領主になってしまった今、それも難しい。


 気安く冒険者に復帰もできないし、そんなことをしてる場合があるなら、カプアランドの清掃を命じられる哀れな領主様なんだ。


 しかし、なんとかこの事実を言いたい。

 できれば、森の中とかではなく、領民が大勢いる前で叫びたい。


「俺は魔族だ!」


 と――――。


 そこで策士カプソディアちゃんは考えた。

 そしてもの凄く名案が閃いてしまった。

 今の俺しかできない、素晴らしいアイディアだ。





 俺は早速、領民を集めた。

 相変わらずアホヅラの集まりだ。

 俺を見て、みんな「領主様!」「カプア子爵博士様!」「子爵ぅ!」とロックバンドのMCの間に叫ぶような声援を送っている。


 俺は聴衆を前にして、語りかけた。


「本日のみカプア子爵領では1度だけ嘘を吐くのを許すことにする」


 みんな、ポカンとしていた。

 そりゃそうだ。俺もちょっと何を切り出しているかわからないぐらいだからな。

 でも、平たく言うとそうなんだよ。


 今から俺がいうことを嘘ってことにすれば、たとえそれが真実でも嘘になるってことだ。

 すげー! 俺、あったまいいわ!!


「た、たとえばだな……」


「素晴らしいアイディアですわ、聖者様!」


 横で聞いていたシャロンが反応する。

 ふんふんと鼻息荒く、今から相撲の取り組みでもせんばかりの勢いだ。


「あ? え、う、うん。ありがとう、シャロン」


「我らアグリヤ教には嘘を吐くべからずという教えがあります」


 そんなもん教えなくても、嘘を吐いちゃいかんと思うが……。

 アグリヤ教って結構細かいなあ。


「しかし、時に嘘を吐きたいと思うこともあるはず。その領民のお心を汲んだ素晴らしい施策ですわ、聖者様」


「お、おう。任せろ! で――具体的な嘘だが……」


「1度だけならいい嘘か……。うーん……」


 パフィミアが突然横で考え始めた。


「そうだ。実はみんな、ししょーってね。魔族なんだよ!!」



 …………シーン。



 え? ちょっ……。

 何をこの空気……。

 ていうか、パフィミア!

 てめぇ、何を言ってるんだよ!!

 それは俺の台詞だろうが。


「みんな、嘘だよ。嘘! 真に受けたらダメだからね。ね? ししょー!」


 パフィミアは俺の方を向いた。


「あ……」


「あ?」


「当たり前だろうが!!(血涙)」


「ええっ! し、ししょーが泣いてる!」


「そ、そんなにショックだったのでしょうか」


「し、ししょーなら、どんな嘘を吐くの?」


「あ……?」


 もしかして今がチャンスでは?

 天丼なんてありだろ。

 言ってしまえ! カプソディア!?

 でも、なんかパフィミアとネタが被るのなんか釈然と。


 いや、言う!

 言うのだ、カプソディア!!!!



「王様の耳はロバの耳…………なんつって」




 結局、当初の目的が果たせず、ストレスをため続けるカプソディアであった。




追伸

1日1度、嘘を吐いていい日は、その後カンタベリア王国全土に流布し、広まった。

その発案者の名前をとって、「カプアの日」と呼ばれるのであった。 




~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


好評発売中の単行本7巻もよろしくお願いします。


 

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