7
フレイディーベルグは、妖精たちとともにエレノアの帰りをまだかまだかと待ちわびていた。
シフォンケーキは出来上がり、粗熱を取っている状態らしい。本当は半日ほど寝かせるのがいいそうだが、もちろんフレイディーベルグも妖精たちもそんなに待てる気がしない。
早く早くとエレノアを急かせば、ティータイムよりも少し早いけれどサーシャロッドを呼びに行くと言って部屋を出て行った。
「どうしてお前がここにいる」
しかし、エレノアが戻って来るよりも早くに、エレノアが呼びに行ったはずのサーシャロッドが一人で洗われて、フレイディーベルグは首をひねる。
「あれー? エレノアに会わなかった?」
「いや、会っていないが。そんなことより質問に答えろ。どうしてここにお前がいる」
「シフォンケーキを食べようと思って」
なるほど、今日のティータイムの菓子はシフォンケーキか。いや、そうじゃなく。
「だから、どうしてお前が当たり前のようにエレノアの作った菓子を食べようとしているんだ」
「え? 食べたいから」
ぴきっとサーシャロッドの額に青筋が浮かんだ。
「エレノアは、私の妻だ」
「知ってるよー? 祝福の儀式に私情を挟むほどに、大好きなんだよね?」
サーシャロッドは眉間に皺を寄せた。
「……だから何だ」
「うわ。開き直った」
「問題はないはずだが?」
「まあ、問題はないよ? 問題があったらさすがに私が止めに入らないといけないからねー。入らなかったのは、まあ、判断は間違っていないと思ったからだし」
「じゃあいいだろう。……お前まさか、エレノアにその話をしたんじゃないだろうな」
「―――」
ぷいっとそっぽを向いたフレイディーベルグに、サーシャロッドは片眉を跳ね上げた。
「余計なことを!」
つかつかとフレイディーベルグに詰め寄ってその襟を締め上げようとしたとき、サーシャロッドはこちらへ向かってくる足音に気がついて動きを止めた。
バタン! と部屋の扉を文字通り蹴破って現れた女に、二人は同時に目を見張る。
「リリー!?」
「エレノア!?」
リリアローズはにっこりと、そしてその腕に抱えあげられているエレノアは困ったようにそれぞれの夫に視線を向けた。
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