戦国時代の先見の明の持ち主たち


 毛利元就は、推薦状を持ってきて熱弁をふるう男の顔を見て、ある予感がはしった。


(……こいつ、なにやら反抗的な人相をしているな。優秀かもしれんが、こんな奴を雇ってしまっては、いつ寝首をかかれるかわからないぞ)


 そして毛利元就は、男にいくらかの金銭を持たせて帰らせた。

 毛利元就に不信感を与えた男の名は、明智光秀。奇しくも、この時の毛利元就の予感は当たっていたのだと、本能寺の変にて証明された。


 阿部飛彈神あべひだのかみという天文学者が、戦国時代にいた。

 ふらふらと彼が散策をしている時、一人の青年が草取りをしている姿が目に留まった。

 彼は青年へのそばへと歩み寄り、こう言った。


「ふむ。あなたは、きっと天下をとることでしょう」

「そんなバカなことがありますか。あっしはしがない農民です。まあ、そうなればいいなと夢見ることはありますがね」

「ほら、ごらんなさい。夢見ることがあるということは、そういう決意をしているのでしょう?」

「まあ、たしかにこのまま農民のままではたかが知れているし、せっかくだから命がけで何かをしようと思ってはいますがね」

「やはり、あなたは天下を取ることになる。どうです、その時は私に一万石をくださいませんか?」

「面白いことを言う人だ。いいでしょう。あっしが天下を取った時には、一万石を差し上げますよ」


 時は過ぎ、農民はやがて足軽となり、木下藤吉郎と名乗り、出世して羽柴秀吉と改名し、天下を取った時には豊臣秀吉と名乗っていた。

 まあ、秀吉が約束を覚えていて、阿部飛彈神に本当に一万石を献上したかは不明だが、ともかく、阿部飛彈神は相当な先見の明をもっていたのだろう。

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