90分のシンデレラ

雑務

90分のシンデレラ

 魔法が解けるまであと4分21秒か。王子様と一緒にいられるのもあと少し。こんな華やかなひとときは生まれて初めてだ。二人は見つめあう。


 抱き合う二人。時計の針は容赦なく進む。二人の愛を誰にも邪魔されない、魔法の時間。時よ、止まってくれ!


「どうしたんだい? 浮かない顔をして」

と、王子。

「魔法が解けてしまうのです」

 王子は、きょとんとする。が、すぐにガラスのように透き通った笑顔でこう言い放つ。

「また指名まってるよ」

 最後のキスをした。


 魔法が解ける。アラームが鳴り響く。

「ご利用ありがとうございました。またお待ちしております」

 僕は16000円を払い、ゲイ風俗を後にした。

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