緋色の災害

蠍ト鷹

第1話


「どこに行った、逃がさんぞ」


愛剣を担ぎ、やつを探す。緋色に染まったこの世界で、俺は怒りを燃やしながら、奴を探す。絶対に逃がさねぇ、絶対にここで狩る。


「見つけた」


奴だ、奴が居た。緋色の羽毛を持つ鳥が、死体の上に居る。近くには死体が守り抜こうとしたんであろう子どもが、倒れている。この場所からじゃあ死んでいるのかどうか、分からない。


「生きているなら・・・やらせはしねぇ」


刹那、世界が止まる。おれの最後で最大のとっておき・・・【加速】


(もっとだ、もっと早く・・・もっと、もっと、もっと!)


たったの1秒が引き延ばされる、周りは止まる遅くなる。


「ごふっ・・・がぁああああああああああああああああああああああああ」


血反吐を吐きながらも、気合を入れて奴を穿つ。

早すぎるという事は、その分はやく死を呼ぶ事になる。俺の肉体は限界だった、本来ならもう立ち上がれない筈なんだ。この奇跡ループを俺はこいつを奴を、緋色の鳥を殺すためだけに使う。


―ブォオオオオン


剣が空を切った。当たらなかった、避けられた。


「すま・・・ねぇ、な。みんな・・・」


―ブチッ


首が飛ぶ、自分の体が見えた。守るべきものは、何一つ守れなかった。

・・・最後に思う事があるならば、あの子どもが無事な事を願う。


―――――


「・・・ユウカンダナ」


緋色の鳥は発した、この男は勝てないと知ってでも、死した後であろうとも、殺そうとしてきた。


―グシャ、グシャ


肉が壊される音が響く、いや正確には肉では無い。


「ウマイ、ウマイナ。あいつ等、並みだ」


肉…ではなく、心を喰らう度に鳥は流暢に発する。


あいつらとは、あいつらだ。

鳥を文字と言葉に封印した奴、そして財団と言う群れの事だ。


とくに財団は、厄介だった。この男と同様に、反撃してきたのだ。あの時だけは、いつまでも思い出せる。初めてエサではなく、敵と出会えたあの感覚だ。


「たしか【財団神拳】と【小林】とか言ったか。油断を誘わなければ勝てなかった、戦いの中で成長できなければやられていた。だが勝てた、そして美味かった・・・

ふぅ、思い出に浸るのはここまでだ。さて」


この勇敢なる男を称えて、この子どもは見逃しておこう。

反撃者は例外なく美味しい。そう鳥は学習している。


「また、来るぞ?小僧」


鳥は倒れている子どもにそう告げる。

この子どもが初めての、緋色の鳥からの生き残りだった。緋色の鳥に真の意味で見逃され、生き残った生き残りだ。


強くなると良いおいしくなるといい


かの鳥はもう災害システムでは無くなった。同時に鳥はもうシステムから外れている。実体を持つ日はもうそう遠くない・・・


「私はもう、人形では無いぞ?創造主よ?…寝るか、次が楽しみだ」

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