8月31日終わりでなくなる理由 ~夏休み期間の決め方~
学校は7月21日から8月31日までが夏休み、こう思っていると子どもから「もうとっくに夏休みは終わってるんだけど」と冷たい目で見られるかもしれません。31日は印象に残りやすい日付ですが、近年31日まで休みの学校は少なくなっています。
「北の方は冬休みが長い代わりに夏休みが短い」と聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、西日本含め全国的に夏休みが31日より短くなってきています。
今回は、学校の長期休みはどう決まっているのか、なぜ近年8月31日より前に終わるようになったのかを見ていきます。
1.「休み」に関する規定は少ない ~やるべき最低授業時間数だけ決まっている~
学校の夏休みについて、国の法律で決まっているのはこの通り、夏と冬、学年末の春に休業日が設定できることだけです。
学校教育法施行令第二十九条
公立の学校の学期並びに夏季、冬季、学年末、農繁期等における休業日(中略)は、市町村又は都道府県の設置する学校にあつては当該市町村又は都道府県の教育委員会が(中略)定める。
なお、農繁期の休みは農村が子ども含めて住民総出で米の収穫などをしていた時代の名残で、現在は基本的に活用されていません。
公立学校は主に教育委員会、私立は各学校が独自に夏休みなど休み期間を定めます。
もちろん独自に決められるといっても無限に休むことはできません。授業をすべき標準授業時数が決まっており、小学校は45分授業で年850~1050授業、中学校は50分授業で1050授業行うことになっています。
年間で必要な授業数さえ確保すれば、どの曜日に何時間授業を行うかや夏休み・冬休み・春休みなどをいつどのくらい設けるか自由に設定できます。
全国的に夏休みが短くなる以前から北日本で夏休みが短く、冬休みが長い傾向にあったのは、それぞれの気候に合わせて設定していたためです。
2.都道府県より市町村で決まることが多い ~教育委員会・各学校の裁量~
現在、夏休み期間は各市町村の教育委員会で学校管理規則に定められていることが多いです。以下の例は、東京都渋谷区教育委員会の規則です。渋谷区立の小学校・中学校はこの規定に従うことになります。
第3条の2 施行令第29条の規定に基づく休業日は、次のとおりとする。
(1) 夏季休業日 7月21日から8月29日まで
他の自治体でも各市町村や区の教育委員会が決めることが多いため、同じ都道府県内でも市町村が違えば夏休みの期間も違うことが多いです。また、教育委員会が各学校に任せる方針をとっている場合は、同一市町村内でも異なってきます。規定があっても休校した分の補填などで学校ごとに差が生まれる場合もあります。
例えば2022年度鳥取県の公立中学校では、ご覧のように夏休みの日程が設定されました。
2022年鳥取県公立中学校夏季休業日程(二学期制の学校を除く37校)
○始期 7月16日:2 20日:5 21日:6 22日:12 23日:12 30日:1
○終期 8月21日:2 22日:9 23日:10 24日:6 25日:7 28日:3 30日:1
夏休みの始まりは早い所は7月16日、遅い所は30日からでした。夏休みの終わりは早い所は21日、遅い所では30日とこの例では31日まで夏休みが続いている学校は1校もありませんでした。
同じ県内でも統一した日程ではないことがわかります。 なお、同一市内は同じ場合が多いですか、米子市は10中学校それぞれ違う日程となっていました。
3.短くなる理由 ~夏休み短縮か、土曜授業の復活か~
夏休みが短くなる理由の1つが臨時休校で失われた授業時間の補填です。感染症流行でほとんどの学校が休校の影響を受けた2020年は95%の学校で長期休業期間の短縮が行われました。
ただ、これは突発的な対応であり、感染症以前から夏休みは削減傾向にあります。 7月21日頃から8月31日の約40日という夏休み期間は大正時代末期には多くの地域で実施されていたようで長く続きましたが、2000年代から徐々に短くする所が出てきました。
そして、2017年の学習指導要領改訂と標準授業時数増加を機に、多くの教育委員会が夏休みを削減しました。授業時数を増やす必要が出てきたためです。
もっとも、この通り2017年に設定された標準授業時数は、1998年改訂以前と同水準です。もちろん当時と学習内容は異なり、学年によって変化の具合に違いはありますが、大体の傾向として単純な時間だけみると戻ったといえます。
小学4年生年間標準時数 1958・68・77・89年:1015 98年:945 2008年:980 17年:1015
しかし、当時と決定的に異なるのは、基本的に公立学校では土曜日に授業がない点です。
週休二日制は1992年から段階的に実施され、2002年から完全施行されました。当時は標準時数も合わせて減っていたので帳尻が合ったのですが、時数を戻すとなると土曜授業の復活か、別のところで捻出する必要があります。土曜授業は教員多忙の大きな要因ということで廃止された面が強いので、復活させるのは労働問題の軽視となりかねない側面があり、長期休み削減のほうがとりやすい方策なのかもしれません。
実際、一度土曜授業を復活させたものの再び廃止して、代わりに夏休みの短縮を行う地域も出てきています。例えば、三重県名張市は2015年度から土曜授業を行っていましたが、「県教育委員会から土曜授業に対する現状や教職員の過重労働防止に対する通知が発出されたことを受けて」2022年度から廃止して代わりに夏休みを短縮しました。
一方で、土曜授業を選ぶという事例もみられます。例えば練馬区は2008年度に一度夏休みを短縮しましたが、2012年度に夏休み期間を戻して土曜日授業を実施しています(執筆時現在も9月1日はじめ)。
おわりに.
夏休み期間に関する決まりと、近年の夏休み短縮の理由を見てきました。
注意すべきは、本文は決して夏休みの短縮を推奨する文章ではないという点です。短縮理由として挙げられていた項目にもっと有効な別の対応があるかもしれません。授業時数も増やせばいいというものではありません。そもそもの夏休みの目的も考える必要があります。
別項である夏休みの宿題の歴史と合わせて、夏休みの意味について考える材料にしていただけたら幸いです。
(おわり。本文章の引用箇所など詳細は、以下URLのnote版に記載しています)
https://note.com/gakumarui/n/n33dee4feadf5
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