悪役令嬢は最後まで悪役を貫きます

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悪役令嬢は最後まで悪役を貫きます

ラケル 前編

「ラケル、その傷はお前の行動の結果だ」


 …冷たい目。


「分かっているだろうがこの婚約は破棄させてもらう。ユバル、イブリス」

「はっ!」

「処分は追って決めるからラケルを男子寮の地下に閉じ込めておけ」


 そうアーデン殿下は私へ告げると、側近の方々にご指示を出され、彼等に付き添われながら私はホールから退出させられた。


 激痛を堪えながら杖を突き何とか歩く。


 側近の方々のお話によれば、数日間は男子寮の地下倉庫で監禁されるらしい。


 そう、女子寮ではなくてわざわざ男子寮。


 付き添って下さるお二人を見る。きっと貴方がたは私が男子寮に監禁される理由なんて分から無いのでしょう?


 良くも悪くも善人である殿下、そして殿下の側近のお二人が、わざわざ男子寮での監禁を考えたとは思えないもの。


 先日の話から考えて、恐らく一連の事件を裏から操っていたのはベアトリクス王妃陛下。


 王妃殿下の筋書きだとしたら、おそらく逃げられない。だから、このまま全ての罪を私が引き受ける事になるのでしょうね。ただ、こんな大事になってしまったのだから、国外追放なんて軽い刑では済まされないと思う。


 この身体を辱めて、殿下の婚約者に戻れる可能性を完全に潰すだけですめば良いのだけれど。教会と手を組み私を魔女として宣言させれば、最悪処刑する事も可能だから。


 まぁ、こんな身体の私を相手にする物好きがいるかも分からないし、処刑という見せ物になるだけの価値が私にあるのかも分からないけれど。


 ただ、私がリディア様を突き飛ばしてしまったあの日から、この婚約解消までの流れが余りにも早いご対応だったから、だいぶ前に私は見限られており遅かれ早かれこうなっていたのだと思うわ。


 最近震えるようになった手。身体がもう限界なのだから。呪いで身体の壊れた私では、婚約者として与えられた役目を果たす事は出来ない。もう生かして頂く理由は失ってしまった。


 でも、それでもあの人へ、リディア様へ手を上げるべきでは無かった。


 なんて、今更後悔しても無駄なのにね。


 薄紅色の長い髪に真っ直ぐな意志が籠る碧眼。神が直接造られたと思わせる美しさに、いにしえに失われた癒しの魔法を操る、聖女と称えられるリディア様。


 その癒しのお力は、『手遅れにならない限り』必ず傷を癒す事が出来る。


 手遅れの基準が分からないけど、前に私を癒して下さった時、全身に蓄積された呪いの傷は癒えなかったから、一定の基準があるのでしょうね。


 でもそれは、一定の基準さえ満たせば誰かが大怪我等で亡くなったとしても、必ず癒す事が出来るという事。


 あまりにも強大で神秘的な力。


 だから私に掛けられた魔法の…、呪いの利用価値はもう失われたの。


 呪いの力で身体中がボロボロになって、もうお世継ぎすら産めない先の短い私と、手遅れにならない限り癒しの力で傷を戻してしまう美しい聖女様。


 その価値は比べるまでも無いのだから。


「到着だ。ラケル嬢はこの中に入ってもらう」


 考え事をしていたら、男子寮の地下倉庫に着いたようね。


「ラクスチェリア様にシュバルツ様。今まで支えて下さりありがとうございました」


 あまり関わる事は無かったけれども、殿下の婚約者としてお二人には支えて頂いた。それに、ここまで付き沿って頂いた事も本当に感謝している。


 伝わるか分からないけれど、お二人には今までの感謝やお礼込めて感謝を伝えると、まぁ、当然の事ですがお二人共とても悲痛な顔をされました。


「ラケル嬢、お怒りが解けるようしばらく大人しくされるべきかと思う」

「ええ、ご忠告頂き感謝致します」


 大人しく…ね。大人しくもなにも、私はこれからたくさんの男性に弄ばれ、ズタズタにされるのに。


 やはりこの軟禁に殿下や彼等は関わっていないみたいだわ。


 扉が閉まり鍵が掛かる音が響く。このまま一生閉じ込められて餓死するのも良いかもしれないわ。この醜い身体の女を相手をさせるのは可哀想だもの。


 倉庫内に用意された寝具まで何とか歩き、腰掛けてから横に倒れ込む。袖から見える腕に付いた無数の傷。


 いいえ、腕だけでは無かったわね。


 制服で隠した全身傷だらけの醜い身体。


 身代わりの…忌わしい呪いの魔法により、婚約者であるアーデン殿下の長年の傷を全て引き受けた結果、ボロボロになってしまった醜い身体。


 この国に伝わる不死身の伝説のせいよ。

 

 この国の王族は神に愛され、その御身は怪我も毒も呪いも効かない、災いを全て跳ね返す不死身となる。


 この国と王家の成り立ちを説明するこのお伽話のような伝説は、この国を強国へ押し上げたわ。


 だって、お伽話とは言ってもこの伝説は半分正しいから。実際アーデン殿下は不死身で、私と婚約してから御身に傷が付かないもの。


 でも殿下の不死身の力は生まれ付きでは無くて魔法の力。不死身の正体は、いにしえより王家のみに伝わる身代わりの魔法『かばう』。


 特定の儀式で結ばれた人の病気、怪我、災いを、代わりに全てその身に受けるという魔法。


 建国の英雄フリードリヒから始まり、歴代の王を守る為に代々夫人達へ受け継がれ、その身に宿した魔法。


 つまりこの国には、怪我も毒も呪いも効かない不死身の王がいるのではなく、王に降りかかる全ての災いを身代わりでその身に引き受ける夫人達がおられただけ。


 この国の歴史上、王家のみ一夫多妻が許されたけど、理由はとても簡単で、血を繋ぐ為では無く命の駒を沢山用意する為だった。


 もちろん、いにしえの夫人達のように沢山の人数で魔法を引き受ければ、私とは違いあまり身体を壊す事無く生活出来るのでしょう。でも昔と違い、今は王族の結婚はかなり難しくなってしまった。


 時が経ち、上級貴族を中心に、身代わりの魔法に対する考え方が変わってしまったわ。


 いくら娘を政略の駒と思っているにしても、育てた娘が命の使い捨てにされる事を黙っている訳が無いもの。


 長い歴史の中で身代わりの魔法は沢山の恨みを募らせてしまい、上級貴族達はこの魔法に対して嫌悪を示し、今では自分の娘を王族の婚約者として押す事が無くなったわ。


 そうなると王家の婚姻は、何も知らない他国と結ぶ事が主流となってしまった。でも他国に不死身の秘密を流出させる訳にはいかないから、誰彼構わずに結婚なんて出来ない。


 だから、婚約まで慎重に慎重を重ねるから、結婚相手が出来にくくなってしまった。


 ようやく他国から王妃を迎え入れて結婚しても、呪いのせいで短命になってしまう。


 大切な姫をこの国の王妃として嫁がせたのに、むざむざ殺すようなものだから、今度は他国に恨みが募ってしまった。


 だったらこの身代わりの魔法を止めたら良いのにって思うかもしれない。


 でも皮肉な事に、この不死身の王の伝説のおかげで、他国は憎しみを募らせても、簡単にこの国へ攻める事が出来ないのは事実。


 つまり、最悪の負の連鎖が出来てしまったのよ。


 国を守る魔法で他国から恨みを買い、攻められる危険性がある以上国も魔法をやめる事が出来ず、魔法は代々の夫人達の命を奪い取っていく。


 どう?こんな魔法…呪いでしかないわ。


 だから、この呪いの為に自国の貴族から王家に娘を差し出すのは、余程の愛国者か娘を道具として王家に取り入ろうとする野心家だけ。


 そう、野心家である私のお父様のように。





◆◆◆





 お父様の…カーマーゼン子爵様の妾であった母シャクナは、このクロスヴィス王国と隣国ヴァロナ王国の国境にある村の出身だったらしい。


 いや、妾というよりも奴隷が正しいかしら?


 当時はヴァロナ戦争の最中。学生の身でありながら戦略に長けたお父様は前線の小隊を指揮していたそうよ。ただ、お父様の作戦は非人道的で国として承認出来るものでは無かった。


 作戦は凄くシンプル。ヴァロナ軍の補給線を潰す為に国境の村々を襲って村人を皆殺しにするだけ。


 お父様の部隊は、国境近隣の村々を渡り歩き、男や子供、年寄りを即刻斬り殺し、女は戦利品として奪ってから散々犯されてから殺す、とても恐ろしい部隊だったそうよ。


 もちろん、母の住む村も例外では無かった。


 母の母、つまり私の祖母に当たる人も、母の目の前でお父様に犯されそのまま殺されたらしい。


 でも、白銀の髪と白い肌、人とは思えない程綺麗な容姿の母と、母と同じ容姿を持つ母の姉だけは殺されずに、お父様の戦時中の慰み者として生かされたみたい。


 特に母を気に入られたようだ。


 母の姉も欲望のままに使われていたけど、戦争終結時に母の目の前で惨たらしく殺されたらしい。戦争で性癖が歪んだお父様は、犯し殺す事を目的で母達を妾にしたからだ。


 ただ、お父様にとって母は特別だったのかそれとも惜しかったのか、慰み用の奴隷として戦後も生かされ、王都まで連れて行かれた後に別邸に監禁されていたそうだ。


 ただ戦時下の無法状態とは違い、戦争は終結しているから法が機能する。だから貴族と言えども、周りにバレずに人を監禁し続けるのも、勝手に処理、殺す事も難しかった。


 だから、母が別邸で監禁されている事を、奥様のお知りになるのにそう時間はかからなかった。


 カーマーゼン家別邸の地下に監禁されていた母を見つけた奥様は、嫉妬で大層お怒りになられたそうだ。


 奥様は元々伯爵家の娘で戦争で成り上がった格下の家であるお父様を見下しておられた。だからこそ見下している者の不倫は許せなかったのだと思う。


 奥様は母をすぐに別邸から追い出し、気付かれないところで殺すよう部下へ命令されたらしいけど、哀れに思った奥様の部下が母を逃してくださったそうよ。


 母はそのまま王都から離れたように見せかけて、王都北にあるスラム街へ隠れ住んだそうだが、既に母のお腹の中には私がいたらしい。


 頼るべき肉親も戦争で皆殺しにされてしまった母は、自分が生きていく事だけでも困難だから、私を産むべきか大いに悩んだらしいけど、産み育てる決意をしてくれた。


 でも生きていく為のお金が無い為、私が産まれてから母は朝から晩まで必死に働いていた。


 そう、私の記憶の母は常に働いていた。誰にも弱音を吐かず周りに優しい母は、たちまちスラムの人気者になった。


 私の誇りになったわ。


 そんなスラムの皆も母と私を面倒を見てくれた。間違い無くスラムの皆は私の家族だった。そう家族だった、今でもそう思っている。


 だけど…、母も彼等も、もういない。


 母はお父様の命令に従ったスラムの皆に殺され、スラムの皆は母を殺した罪でお父様に処刑されたから。





◆◆◆





 全ては私がお父様の奴隷になった9歳の時。


 北部のスラムで有名になってしまった母と私の存在をお父様が知り、私の見受け話をする為に、スラムまで来られた事が始まりだった。


「カーマーゼン子爵閣下!どうして私達をほっといて下さらないのですか!?あの子を引き取りたい本当の目的は何ですか!?」


 あの日の事は忘れられない。あの日私はお父様に見つからぬ様、母に言われてクローゼットに隠れていたわ。


 見受け話に従わない母に対して、業を煮やしたお父様が母の顔を叩いていた。


「顔と身体だけが取り柄の奴隷如きが!シャクナよ何か勘違いしているようだが、これはお前達へのお願いでは無い!俺からお前達への命令だ!!」

「いいえ、もう私達は自由です!ラケルは絶対貴方に渡しません!」


 そう、母はあの時ハッキリと断った。…断ってしまったのだ。


「ふんっ、仕方が無い!こんなスラムにいて汚くなってしまったお前に触るのは不快だが、久しぶりに誰がお前の主人か思い出させてやる」

「私に触れたらもっと大きな声を上げます!」

「くっくっ…くだらんなシャクナよ。ここの住民達が助けてくれるとでも?おい、お前達!」


 家に人が入ってきた。


 スラム街のまとめ役のグラースおじさん夫婦や、スラムの神父さん、私の親友アメリアの家族や隣の新婚夫婦。


 そうスラムに住む沢山の人達が。


「何故…皆さんがここに…?」

「シャクナ、子爵様に従うと金が貰えるんだ。済まないがスラムの皆の為に死んでくれ」


 それは耳を疑うような絶望の言葉だった。


「い、いや…、いやぁああああ!」


 子爵が欲望に染まった笑みを浮かべて母の服を破き、抵抗する母を殴ってはスラムの皆に命令して母を抑えつけていた。


「薄汚くてもお前は飛び抜けて良い女だ。さぁ奴隷なりに楽しませてみろ!!」

「止めて!!」


 母の懇願も抵抗も虚しく蹂躙が始まった。


 私は恐怖で怯えてしまい手で口を押さえて声が出さないようにしていた。お父様が母を殴り傷つけ、乱暴に腰を動かして、母の中で達して体液を注いでから立ち上がった。


「本当はお前の母親や姉の様に犯しながらナイフを突き立てたい所だったが、逆らったからには楽に死なせんぞ」


 恐ろしく歪んだ目で周りを見渡した。


「あとはお前達で好きに使え。心が壊れるまでズタズタに犯し、絶望を刻んでから必ず殺すのだ。明日確認してから残りの褒美を与えよう」


 お父様がそう言うと部下達が家の中や家の周りでお香のような物を焚き出して、部屋全体や家の周りに甘ったるい匂いが充満し始めた。


「あぁそうだ。お前達がこの女で興奮するのは結構だが、クローゼットの中にいる子供を傷付けた時はお金を一切支払わないからそのつもりでいろ」


 まるで蛇のような恐ろしい目と目が合った。


 怖い。怖いよ。


 抗えない恐怖に支配されたわ。


 怪物のような男に隠れていた事を気づかれた恐怖で震えが止まらなかった。でもお父様はクローゼットに触れる事なく、甲冑を着た部下を一人置いて家から立ち去った。


 残ったスラムの男達は憧れていた母を陵辱出来る事で興奮しており、女達は心の何処かで母の美しさに嫉妬していたので歪んだ笑みを浮かべていた。


「いやぁあああ!!」


 泣き叫び必死に抵抗する母を何人もの男が同時に群がり、母の身体の全てに昂った欲望をぶつけ始めたわ。


 大粒の涙を流す母を見て恐怖から解き放たれた私はクローゼットを開けて、唯一味方になってくれそうな親友アメリアのお母さんの元に走って行った。


 アメリアのお母さんは母にとって親友であり、心を許した母の姉代わりだったから。


「皆を止めて下さい!お願い致します!!」


 私が彼女に飛び付くとスラムの何人かの男に取り押さえられ服を破られた。私を見る男達の目は、母と交わる男達が母に向ける欲望を混ぜた目と同じだった。


 犯される恐怖。


「いや!やめて!!」

「ラケルには一切手を出すんじゃないよ!金がもらえないからね!」


 アメリアのお母さんが放つ一言。


 その冷たい表情で私は絶望した。家族と思っていたスラムの皆は、もうお父様の手先になってしまったと分かったから。


「お願い…やめて下さいお願いします」

「煩い!私達には金が必要なんだ!」


 アメリアのお母さんが怒鳴り出し、土下座する私を蹴って壁にぶつかり口から血が流れる。


「お母さん!!ラケルは叩かないで!!」


 興奮したアメリアのお母さんが更に私を叩こうとした所で、アメリアが私を抱きしめて庇ってくれた。


「アメリア…母さんを…助けて…」

「無理よ!貴女も分かっているでしょ!!」


 その怒鳴り声で私が叩かれている事に気づいた母は、あれだけ泣き叫び抵抗してたのに、私を助ける為に抵抗をやめた。


「お、お願い…お願いします!!皆さん私を殺しても構いませんから!!この身体を好きなだけ使って構いませんから、何でもしますから!!ラケルの命を助けて下さい」


 母は泣きながらも私を守る為に抵抗をやめて、沢山の男に自ら身体を差し出した。


「母さん…いや…いやだ!!」

「お母さんは大丈夫だから、見たら駄目…ね?


 大粒の涙をながし恐怖で怯えながらも、一生懸命に繰り出すいつもの母の優しい笑顔。


「あ…ぁあああ!!」


 助けたいのに…私は無力でしか無かった…。


 それから長い長い時間、母は凌辱されたわ。


 胃液や男達の体液を吐き出しても、男達のモノを自ら喉の奥まで何度も何度も必死に咥え、下半身は前だけでは無く、後ろも血が流れていても率先して男に使わせていた。


 今思えば、部屋に漂う匂いは媚薬か麻薬の類いなのだろう。異常な程狂い、この部屋にいる正常に判断出来なくなった皆が、男女問わず母の姿に興奮し快楽に堕ちていった。


 そこら中で始まる肉の堕落。


 グラースさんの奥さん、アメリアのお母さん、隣の新婚の奥さん達も、アメリアも、スラムの様々な夫や妻、兄弟姉妹関わらず交わり始めていた。


 母は既に快楽に落ち、虚な目で喘ぎ声をあげて男達にしがみ付き自から腰を動かす。もう私の事なんか見えてなかった。


 スラムの神父さんが、向かいに住む独身のおじさんが、良く遊んでくれるアメリアのお兄さんが、少し怖いアメリアのお父さんが、母と交わり、母の中で果てる。


 ドロドロの体液が母の下半身から垂れ流れ床に溜まっている。にも関わらず母は次々と男を受け入れて、女の顔をして喘ぎ痙攣して果てる。


 そんな母を見て私も自ら慰めて達する。


 凄く気持ちよくて初めての快楽にどんどん堕ちてゆく。


 私に触れようとする男が何人か来るので、私も使って欲しいと媚びを売るけど、子爵の置いていった甲冑の騎士が見せしめに男性一人を切り捨てた為、私に近づく者がいなくなった。


 目の前で、近所に住むいつも私を撫でてくれる、優しかったグラースおじさんが母を犯し始め、母が女の顔で喜び自ら男の為に動き出す。


 母が前に私へ言っていたわ。


「ラケル…、母さんはあの人に惹かれてるの。まぁ奥様がいるから勝手な恋なんだけどね、内緒よ」


 娘の存在を忘れた母が惹かれているおじさんの前で、私が見ても分かるぐらい女になってる。


 自ら跨り腰を振り、おじさんの上で快楽に狂い淫らに跳ねる身体。抑える事の無い周りを魅了する喘ぎ声。スラムどころかこの世で一番とも思える美しい女が好きな男と本能のままに交わる姿。


 皆が二人の淫らな行為に見惚れ、スラムを取り仕切る彼と母との濃厚な交わりは誰も邪魔をしない。


 誰もが交わりをやめて、自慰しながら二人の交わりを見ている。


 二人は狂ったように求め合い、グラースおじさんの奥さんが嫉妬しているのも気にしないで、本物の夫婦のように長く長く淫らに交わり合う。


「がっ…」


 ただ性癖なのか分からないけれど、行為中ずっと母の首を撫で回していたグラースおじさんが、興奮し過ぎて母の首を絞め出した。でも母は抵抗するどころか、おじさんの好きにするよう促し始めた。


 メリッ。


「あぁ、締まる!」


 余程気持ち良いのかおじさんが激しく腰を動かし始めて、母は何度も痙攣し、快楽のままに下半身から噴き出し始めた。


 ただ母の歓喜の表情とは裏腹に、顔色がどんどん赤黒くなって痙攣し力を失っていく。


「気持ちいい、絞め殺したい!」


 グラースおじさんが呟いた。


「ぎも…ち…い…!ご…ろ…じ……て…!」


 母が懇願した。


 グラースおじさんの興奮が頂点に達したのか、獣のような声を上げて、全身震えながら母の首を思い切り絞め体重を掛ける。おじさんも母もまるで下半身が別の生物かと思えるぐらい、狂ったように動き続ける腰。


 おじさんの腕を掴んでいた母の手が床に落ち、おじさんの腰に絡めた母の脚が床に落ちる。


 変色した細長い母の首に指が食い込んでいて、舌を出してブルブルと顔が、いや全身が震え出す母。


「おおぉぉおおおお!」


 グラースおじさんが雄叫びを上げて…。


 ミチッ…。


 絞めすぎた母の首から何か音が鳴り、母の全身が大きく痙攣して失禁する。おじさんの腰が快楽にブルっと震えさらに母の奥に押し込まれた。


 長い沈黙。


 母が力尽きて動かなくなるまで最後の快楽を味わい、歪んだ顔をして果て続けていた。


 おじさんが抜くと音を立てて中に注がれた大量の体液が噴き出る。動かない身体。私を愛し守ろうと身体を差し出した母は呆気なくこの世を去った。


 でも快楽に堕ちていた私は悲しみなんて感じる事無く、母の行為を見て興奮し、必死に自らの下半身を弄り自慰をしていた。


 ただ母が死んだので、この狂った饗宴はこれで終わった。終わったはずだった。だけど甘ったるい匂いで狂ったスラムの皆は狂宴を終える事無く交わり続けた。


 お父様が置いて行った鎧の騎士もスラムの皆を止めない。


 続く肉欲の狂宴。


 もう母が動かなくなった事なんて気にせずに、母の身体は次々と男に使われ続け、誰も帰らずにこの家の中や周りで獣のように交わり続ける。


 母とグラースおじさんの行為が強く印象に残っていたからなのか、そこら中で男性が女性の首を掴みだした。何かが折れる音が周りからも時々聞こえるようになった。


 でも誰も止めなかった。受け入れていた。


 そう、私も含めて全員狂っていたわ。


 アメリアのお兄さんがアメリアのお母さんと、自らの母親と交わり始めて首を絞めていた。


 自分の子供の腰に脚を絡めて、快楽で歪みながら泡を吹き痙攣するアメリアのお母さんに、さらに興奮したアメリアのお兄さんは首を絞める手に力を込めていた。


 喉骨すら押し込む程強く、指がめり込むアメリアのお母さんの首。


 ミチッ!


 嫌な音が鳴った。


 あれだけ金を欲しがっていたのに、彼女は呆気なく動かなくなった。


 私は多くの男に群がれている美しい母を見た。動かなくなっても、スラムの男達は群がり続けて、何度も使われていた。大好きな母の姿にさらに興奮した私は、私に愛を囁き出したアメリアに弄ばれながら激しく何度も何度も達した。


「ぐげっ…、ら、ラケ…ル…、あ、愛して…るわ」


 男に後ろから首を掴まれ、激しく突かれ快楽に果てながらも、私の身体を撫で回す親友。苦痛に歪む親友に口付けをしながら、私は自分の手で自分の首を絞め、自分と母を重ねてただただ達していた。


 香りが切れる明け方まで、皆は狂ったように交わり続けたわ。


 そして我に返った後はスラム中に響く泣き声。


 住人達は愛する妻や娘の変わり果てた姿に泣き叫び、金に目が眩んで母を襲った結果に後悔し、それぞれ愛した女性を引き取り家に帰って行った。


 私は自分の醜い欲望に恥じながら、汚され壊れ冷たくなった母の身体を拭き続けた。アメリアは家に帰る事無くずっと近くにいたが何も言わず、私も何も言えなかった。


 体液だらけの母の身体を綺麗にする頃には昼を過ぎており、お父様が再び訪ねて来た。


「あぁ、愛しのラケル。お母さんの事は不幸だったね。ここのスラムは危険だからお父さんと一緒に住もう。賢い君なら断ると…わかるよな?」


 笑顔で言われて恐怖する。


「お前達は昨日参加したスラムの人間を全て捉え、近くの空き地へ集めろ」


 子爵が連れてきた数十人の兵士に命令をし、隣にいたアメリアを含めてスラムの全員を捉えて近くの空き地へ集めた。


 私は子爵に手を引かれ広場へ連れて行かれる。


「クズ共よ、よくも私の愛する妾を殺したな!お前達はこの国のゴミだ。よってこの場で処刑する」


 なっ…!


「ま、まて!!話がちがっ…」


 母が愛し、母を絞め殺したグラースおじさんが声を上げた瞬間に斬り殺される。


「何故ですか!?皆、貴方の命れ…」


 アメリアのお父さんが首を刎ねられる。

 男が、年寄りが、子供が次々と首を刎ねられる。


 生き残ったのは数人の若い女だけ。


「な、何でもします…。助けて…下さい!」


 目の前で兄の首を刎ねられたアメリアや他の女達が、恐怖に怯え生きる為に子爵に懇願する。私もあまりの光景に恐怖しか無い。


「いいかラケル、これからの光景を覚えとけよ。私に逆らうと、今後お前に関わる全ての人間がこうなるからな」


 兵士によって生き残った女が犯され始める。


「いやぁあああ!!」


 違う、処刑だ。犯しながら腕を切り落とし、足を切断されて、痛みと絶望で地獄のような悲鳴が上がる。


「だずげで…らげる!だず…ぎゃああああ!!」


 目の前でアメリアが少しずつ刻まれる。

 恐怖で失禁してしまう。


 …もう、声すら出ない…。


「お…前のぜいだ…、おまえだちのぜ…。ぐげぇ、げぴっ!」

「あぁ、シャクナに出来なかったから欲求不満だったのだよ」


 お父様が兵士に犯されるアメリアの首に剣を突き立てる。夜明けまで私に愛を囁いた彼女が口から血を吐き出して白目を剥く。

お父様が剣で首の骨をゴリゴリと砕いた所で、アメリアの頭を掴んで無理矢理首を引き千切る。


「ぜぇぜぇぜぇぜぇ…」


 恐怖で過呼吸になりかけて息も出来ない。


「大丈夫かい、愛しのラケル。この子はお前のお友達かな?覚えておけよ、あの子はお前の所為で死んだんだ。ほら友達のお顔をプレゼントだ」

「ひっ…」


 頬にアメリアの血だらけの舌が付く。そのままアメリアの首を持たされる。


 もう止めて…!


 そう言いたいのに声すら出ない。


「おや?震えているが寒いのかな?おい、愛しのラケルが寒がっているから暖かくしろ!!」


 残りの兵士がスラムの家に火を付ける。


「あ…あぁ…」


 この世界は地獄だ…地獄なんだ。


 兵士の一人がアメリア身体を炎に投げ込む。沢山の死体が炎に巻き込まれ、全てが炭になっていく。


 私は目の前で全てを奪われたわ。


 私という道具を手に入れる為にお父様は金と力を使い全てを殺したのだ。理由は先程の呪いの魔法の生贄として私が逃げ出さずに王家に命を捧げさせる為に。


 私は母が、皆が大好きだった。


 自分の幸せを犠牲にして私を育ててくれた大好きな母、私の家族代わりだった親友や大事な近所の皆は、この貴族の都合で人生狂わせられて、終わらされたんだ。


「お前達のせいだぞ?お前の母が私の命令を聞かないから、今からこのお友達の頭を潰すんだ」


 恐怖で怯える私を見て、お父様が笑いながらアメリアの頭を何度も何度も踏み潰す。


 転がる目玉が私を見る。


 どうして助けてくれなかったのかと、お前のせいだと恨まれ責められているように…。


「ああぁぁああああああ!!!」


 私は発狂し、無力な自分はこの人には絶対に逆らう事は出来ないと悟った。






◆◆◆





 子爵家に入ってから一年間、外出もまともに寝る事も許されず、毎日、朝から晩まで令嬢としての訓練をさせられたわ。


 教えた事が出来ないと、暴力を振るわれ平気で食事も与えてもらえず、夜はお父様に身体を弄ばれ奉仕する日々。


 私は王家に差し出す予定なので、処女だけは奪われなかったけど、毎日毎日夜は後を散々使われて血だらけになり、初めての頃は激痛でトイレが大変だった。


 スラムでの悪夢と、私の存在に嫉妬した奥様に影で暴力を振るわれる事で、心が疲弊してしまった。


 …もう、死にたい…。


「お前のせいで皆が死んだのにお前は辛いからと死んで楽になるのか?最低なクズだ」


 そうだ、私のせいで皆死んだんだ。

 私がお父様に従順では無いから皆殺されてしまったんだ。


「母親はお前を守って死んだのに、死にたいと逃げるのか?友達はお前は早く犠牲になる事を選ばなかったから死んだのに、その死も無駄にするのか?」


 毎日毎日、朝から晩まで責められる。


 でもお父様の言う通りだ。

 このまま死んで詫びようとも考えたけど、私の命を救う為に死んだ母や、私のせいで皆殺しにされたスラムの皆を思い出したら死ぬ事も許されない。


「だったら生きる為に必死で覚えろ。出ないと貴様に餌も与えんぞ」


 生きる為に、食事を与えてもらう為に必死でマナーや夜伽のやり方を覚えた。


 起きてから就寝時間までは休み無くマナーから知識まで詰め込まれ、そこから夜明け迄お父様に欲望のままに使われてる生活。


 ただ、お父様にどれだけされても痛いだけ。

 女性とのやり方を覚える為に娼婦の方が毎日様々な事を私にしたけど、それでも何も感じない。


 でも感じなくては無言でいるとお父様に暴力を振られるから、毎回あの時の母の様に乱れたふりをした。


 心が壊れてしまった…。

 でも皆を殺してしまったから狂う事だけは出来なかった。


 一年かけて教養やマナーや夜伽の方法を覚え熟せるようになった所で、ついにアーデン殿下の婚約者として王家へ差し出される事となった。


 私を引き渡す対価は金。

 多額の投資を王家からして頂いたみたい。


 もはや人身売買。


 この国で奴隷は禁止されているけど、所詮、親を親友を家族変わりの皆を殺されて攫われた私は、お父様にとっても王家にとっても奴隷と変わらない扱いなのでしょう。


 いいえ、私は奴隷。

 だから心に何も感じない。


 お父様から主人が変わるだけ。

 今度は目の前の美しい女性に媚びを売れば良いのでしょう?


「ベアトリクス王妃陛下、カーマーゼン子爵長女ラケルと申します」

「…幼い割に大人な顔立ちをしていますね。さぁ座って。まずは婚約に当たる前としてある魔法について説明しましょう」


 王妃陛下から国の成り立ちとその裏に存在した身代わりの魔法『かばう』について、細かい説明を受けた。


 簡単に言えばアーデン王太子殿下の身代わりに死ねって事だった。


 結局死ぬ為にここに連れて来られたのか。


 本当ならすぐに死にたいけど、母や皆の犠牲で生きてしまった私は自ら死ぬ事なんて選べない。


「…ラケル嬢…、貴方は質問も無く畏まりましたしか言わないけれど、先程の説明をきちんと理解しているのかしら?」

「はい、ベアトリクス王妃陛下。アーデン王太子殿下の災いを全て私が引き受けます。仮に殿下が死にそうな怪我をお受けになった場合、私が殿下の身代わりになって死にます。ですが私の傷等を殿下が身代わりで受ける事はありません」


 自ら死ね無いけど人の為で死ぬなら、母は…アメリアは…スラムの皆は私ん許してくれるような気がした。


「ただし王太子殿下に知られてしまうと、様々なご経験をされる上で私に気を使われる可能性がございます。ですので結婚の儀が終わるその時まで、役目を知られてはいけません」


 人の為に死ぬ魔法なんて歪んでる…、ただの呪いだ。


「面白いわ…。貴方は周りとは比べ物にならないぐらい聡明で美しい顔をしてるのに、心が壊れてしまってるのね。あぁいいわ…気に入った」

「もとよりこの婚約を受け入れるつもりなだけですので」


 ここで逆らってもお父様か奥様にいつか無駄に殺されるだけ。

 もとより選べないのだから身代わりの呪いを受け入れるしかないでしょう。


 ただ10歳の小娘が全てを諦めた顔で淡々と受け入れる態度は、王妃陛下に衝撃を与えて私に興味を示された。


「貴方へもう一つの役割を与えるわ」

「はい、どの様な命も引き受けます」


 私に断るという選択肢は無いでしょう。


「それは結構。貴方は3日毎に私の夜伽の相手をなさい。身代わりによる身体の損傷を確認する事が目的だけど、この美しい顔と壊れた心は貴重だわ」


 娼婦相手に女性を相手にする事を学んでいたのはこの為だった。


 まぁ構わないけど。

 死ぬ時まで皆から貰った命を必死に繋ぐ必要があり、この身体で出来る事は何でもするつもりだったから。


「私は子爵と話があるので下がりなさい。貴方は中庭に行くといいわ。今の時間ならアーデンが休憩中のはずよ」

「畏まりました」


 王妃陛下との顔合わせの後は陛下の計らいで、王宮の中庭で休憩中のアーデン王太子殿下と初めてお会いした。


「…何だお前は?不幸そうな顔をした女だな」

「失礼いたしました。私はカーマーゼン子爵の娘でラケルと申します」

「意外だな、怒らないのか?」

「不幸な事は自覚しておりますので」


 怒る?


 初対面なのにとても失礼な質問ではあったけど、王太子とて貴族として見下すのは当たり前の態度なのだろう。


 だったら怒る必要は無い。


 それに私のせいで皆を皆殺しにしたのは事実なのだから、それを不幸と言う軽い言葉で表すならば私は不幸なのだと思うから。


「ふははっ!見た目は母上のように美しいのに、お前は根暗だな」

「お褒めに預かり光栄に存じます」

「いや褒めた訳でも無いのだが。面白い奴だ、気に入ったぞ!」


 殿下はその返答が気に入ったようで私を気にかけるようになり、その後は度々話すようになった。


 顔合わせ後はそのままお父様とは離れて、王宮付近の屋敷に住まいを移し、頻繁に王宮へ呼ばれる事となった。

 

 婚約式の準備期間だけの借りてる住まいなので一月程の予定だが、お父様は屋敷に住めば良いと反対された。


 だけど王妃陛下はそれを譲らなかった。

 理由は王妃陛下の組み立てた王妃教育の為を遅くまで行う事だが、本当の理由は私の貞操の為だ。


 これまで何度も何度もお父様は私の前を使いそうになったけど、その度に思い止まらせて口と後ろで満足させて来た。

 だけど、このままだとお父様を止めきれず間違えを起こす可能性が高かったからだ。


 私が屋敷にいる短い期間に何度もお父様が訪ねてこられたけど、執事や屋敷の警備兵は一度も通す事はなかった。


 まさかここまで私に執着されるとは思わなかったけど。


「今、誰の事を考えていたのかしら?」

「特に何も考えておりません」

「私以外の事を考えるのはよしなさい」


 そして今日も私は王妃陛下の夜伽をする。

 私の手で舌で身体で達する一児の親とは思えない程の若く美しい女。


 母のように美しい王妃陛下が私を果てさせる為に様々な手法で私を弄ぶけど何も感じない。

 まぁお父様にされてる時も苦痛だけで何も感じなかったから、同じように感じるふりをしてやり過ごす。


「あら、もう少しゆっくりして行けば良いのに」

「王太子殿下との時間がありますので」


 湯浴みで綺麗にして頂いたので、次はアーデン殿下との話し相手の為に彼に会いに行く。


「ラケルは良く母上と会っているが何故なのだ?」

「それは改めて王妃陛下からご説明があると思います」


 殿下との仲は悪くなかったと思う。

 後日、婚約者として正式に発表された時も、何も知らない令嬢よりも婚約相手がお前で本当に良かったよ、と殿下が笑いながら言ってくれたからだ。


 無垢な笑顔。


 身も心も穢れに染まった奴隷の私に、その優しい殿下の笑顔がとても美しく見えて、気がつけば優しい母との大切な思い出と同じくらい大切な思い出になっていた。


 だから、身代わりの魔法を受ける事に対して少し前向きに思う事が出来た。


 その笑顔の為ならいいかな?


 順調に準備を整えて婚約式は盛大に行い、その夜は身代わりの魔法を授かる儀式を行った。

 王家に伝わる秘密の儀式なので、私と王妃陛下、仮面を被った王妃陛下の親衛隊を務める男性の3人だけ。


 魔法陣の真ん中に私が立ち、王妃陛下が魔力を込めて空中に文字を描く。

 魔力の文字が私の身体に吸い込まれて跡形もなく消えた。


「これで完了したわ。どう?何処か違和感は無いかしら?」

「いえ特には…」

「そう…。リヒャルト、よろしく頼むわ」


 親衛隊の男性に話しかけ彼が扉から出て行く。


「今から就寝中のアーデンの右手に短剣の先を数ミリ程度刺すわ」

「…魔法が成功したら、傷が私に移ると言う事ですね?」

「本当、理解力が高くて感心するわね」


 右手をしばらく見つめると、人差し指の指先にチクリと痛みが走り血が出てきた。


「血が…、これは成功でしょうか?」

「えぇ、その通りよ」


 王妃陛下が歪んだ笑みを浮かべる。

 私はアーデン殿下の文字通り身代わりとなった。





◆◆◆





 それからの6年間はアーデン殿下の通う学園に通い、アーデン殿下を間接的にお守りし続けた。

 ただ何度か呪いにより命の危機があった。


 まず婚約式後に行われた王妃陛下とご実家であるローラン公爵家の権力争いだった。


 王妃陛下のお父上であらせられるローラン公爵は先王と確執があったので、娘である王妃陛下が他国から夫を娶り、王家であるルベン家の血を根絶やしにする事を望んだ。

 しかし王妃陛下の意向は息子であるアーデン王太子殿下を王位につける事であったので、真っ向から意見が対立してしまった。


 アーデン王太子殿下がいなくなれば王妃陛下の意向を潰す事が出来る。

 そう考えたローラン公爵は婚約式後の食事会でアーデン殿下の毒殺を目論んだ。


 会食中に毒味役が裏切りアーデン殿下の食事に毒物を混ぜた。

 殿下は血を吐き倒れられたがすぐに起き上がり、食事に毒物が混ざっている事を指摘して、毒味役はその場で捕らえられた。


 まるで建国の英雄フリードリヒのようだ。


 アーデン殿下の毒が効かない伝説のような出来事は、その場にいた多くの人々を魅了した。


 しかし不死身なぞ私の命の犠牲でしか無い。


 別室で控えていた私は突然全身が火に包まれたような気分になり、そのまま床に倒れた。


「がっ、げっ…おぇぇえ!!」


 目が虚になり痙攣し身体が動かず、強い吐き気により口から吐瀉物と血を沢山吐いた。


「ラケル嬢!!すぐに解毒を行いますのでしばらく耐えていただきます!!」


 寒い…震えが止まらない…。


 私の付き添いに毒物専門の薬学者がおり、解毒剤をすぐに調合して頂いたので、何とか一命を取り留めた。

 でも内臓が壊れて病気がちになった。


「ラケルの具合はどうかしら?」

「ベアトリクス王妃陛下…。ラケル嬢の内臓器官に深刻なダメージが残りました」

「そう…、戻る見込みは…無いのね…」


 1月ほど寝込みその間に入学式は終わってしまったが、ようやく動けるようになった為寮に移る事となった。


「ラケルか…」

「ご無沙汰しております殿下」

「体調を崩したそうだが大丈夫だったか?」


 久しぶりに会った殿下が暗い顔をし心配される。

 でも私の為にそんな顔をして欲しくない、ただただあの笑顔でいて欲しかった。


「ラケルは学園の事を何も知らないだろう。俺かこの者達に遠慮無く聞くが良い」


 アーデン殿下が後ろに控えておられた側近のお二人を紹介される。


「ラケル嬢初めてまして。僕はラクスチェリア公爵家次男ユバルと申します」

「俺はシュバルツ侯爵家長男イブリスだ。ラケル嬢と同学年には弟もいる。兄弟共によろしく頼む」


 ラクスチェリア宰相閣下の御令息に、皇宮護衛騎士団団長のシュバルツ侯爵閣下の御令息か。


「お二人の噂はお伺いしております。ラクスチェリア宰相閣下に負けずとも劣らないと名高いラクスチェリア卿と、王国最強の戦士と名高いシュバルツ卿でございますね。私はカーマーゼン子爵長女ラケルと申します。どうぞよしなに」


 彼等は次代の王国の中心と言っていい。

 男女問わず彼等には人気があり、その人気に見合うべき高潔さがあった。


 だからこそこんな皆の前で親しい間を見せつけるべきでは無かったのだ。


 アーデン殿下の婚約者として学園に途中から入学したどこの馬の骨とも分からない女の出現は、学園の生徒にとって好奇よりも不快感を与えるものだったから。


 始めは小さい悪戯からだったが、日々助長される嘘に嫌がらせ。

 特にありもしない嘘は少しずつ高潔な彼等の中で影を落としていった。


 そんな時期にローラン公爵家の暗殺者によって、殿下が腹部を刺される事件が起こった。

 それは親しい者のいない私が水をかけられ一人で学校の庭にいる時だった。


 身代わりにより、突然襲った激痛と腹部から溢れ出す血。


「げふっ!」


 地面に顔面から倒れ頭を強打する。


 武芸の腕があった殿下がとっさに急所は避けて下さったようで私は即死する事は無かったが、ナイフを抜かれていたので大量の血が流れ出す。


 少し時間が経った頃、急速に意識が無くなってきた。


 …あ、これは死ぬ…。


「お、おい!お前大丈夫か!?」


 …誰?


 あれ?声が出ない。


「すぐに人を呼ぶから頑張れよ!!」


 どうやら男子生徒っぽいけど顔は分からなかった。


 ただ、殿下が刺された事で沢山の王妃陛下の私兵が私を探していた為、通り掛かった男子生徒はすぐに助けを呼んで来れた。


 そのまま私は王宮まで運び込まれた。

 

「目を覚ますかしら?」

「恐らくは…。ですが医者の見立てでは、長い時間放置された事で治療に大分時間が掛かってしまった為、一部の臓器が使い物にならなくなり、子供の産めない身体になると」

「…そう」


 私が目を覚ましていないと思い、王妃陛下と護衛の方が話されている内容に聞き耳を立てる。

 婚約段階で私は世継ぎを産めない身体になった事を悟った。


 ただ命を犠牲にした甲斐もあった。


 この二つの事件により、アーデン殿下は不死身の身体を持つ次代の王として確固たる地盤を得たからだ。


 そして王妃陛下もこれが狙いだったのだろう。


 殿下は死なない身体に自信を持ち、殿下も国民も王族の不死身の身体を、神から与えられたと奇跡と思っている。


 でも…所詮はただの身代わりの呪いだから、私が死んだら終わり。


 たったの一年程度で私の身体は壊れたから、こんな事がいつまで持つかも分からない。


「お前、話を聞いているか?」

「いえ…申し訳ございません」


 アーデン殿下は私が怪我した事も知らない為、見舞いに来るのはアーデン殿下では無く、私を助けたこの男。

 殿下の側近の一人イブリス・シュバルツ卿の弟君であらせられるレグルス・シュバルツ卿。


「お前が倒れてるのに婚約者は訪ねて来ないなんて薄情なんだな」

「私が怪我した事は秘密なので致し方ないと思いますわ」

「こんな良い女を放置するなんてな。なぁ、そろそろ名前を教えてくれても良いだろう?」

「…申し訳ございません」

「ちっ、そうかよ」


 悪い方ではありませんが強引な人なので正直気不味い状態です。


 それからはレグルス様とお会いする時間を減らして歩く訓練に取り組んだ。

 しかし訓練に約二月掛かった為、学園に復帰するのが約三月後となってしまった。


「ラケル…身体を崩していたらしいな」

「ご心配お掛けしてしまい申し訳ございません」


 何処か余所余所しい殿下の声。

 一体どうしたのだろうか?


「ほらあの女。大怪我する前に殿下とは違う男と庭の隅で逢引きしていたそうよ」

「都合が悪くて怪我した事になったのではなくて。10歳とは思えない美貌だけど、卑しい私生児はたぶらかすのがうまいわね」


 周りからヒソヒソと囁かれ、好奇心と侮蔑の混ざった視線を送られる。

 なる程、休学中に更に悪い噂を広められたのだ。


「ラケル様、少しよろしいかしら?」


 それからというもの、様々な令嬢に絡まれる事が増えてきた。

 主に絡まれるのは目の前のこの方。


「フルブレト侯爵令嬢様、何かご用で…」


 パン!


「子爵令嬢ごときが発言を許可した覚えは無い!殿下の婚約者なんて悍ましい。恥を知れ!!」


 そう言われてもこの婚約は私の意思じゃ無い。


 だから無駄なんだけどな…。


 どれだけ叩かれようと、土下座して踏みつけられても、泥水を飲まされようと、私の意思では何も変えられないのに。


 でもこの貴族のお嬢様に私を殺す勇気は無い。


 どれだけ嫌われ虐められても、母やスラムの皆が受けた仕打ちよりはマシだろうから。


 だから耐えられる。


 その後も一年に渡りローラン公爵家による暗殺は続いたが、王妃陛下から指摘があったのか、アーデン殿下はナイフで刺される等の大きな不覚を取る事が無くなった。


 泥沼化して終わりの見えない権力争いだったが、事態はローラン公爵閣下の病死によってあっさりと収束した。


 それでもアーデン殿下が怪我する事もあるし、学園生活も毎日続く。

 身代わりの傷が大きければ王宮で数日治療は良く発生したし、定期的な身体の状態と検査、王妃陛下への肉体的奉仕、与えられる王族になる為の稽古や訓練の繰り返し。


 まともにアーデン殿下に会う事も無くなった。


 政略婚約なので私は気にしなかったが、何も知らない殿下はまともに会えない日々に、次第に怒りを感じていらっしゃった。


「お前は俺との時間を意図的に避けているのか?」

「いえ…そのような事はございません」

「ではイブリスの弟とは良く会っているのに、俺との時間が作れないのは何故だ?婚約者としてどうなのか?俺を傷つけて楽しいのか?」


 私が怪我になると何故かレグルス様が面会に来る事が多くあったけど、が何故彼が警備を抜けて来られたのかも分からない。

 

「シュバルツ卿と密かにお会いしている訳ではございません。たまたまお話する機会が多いだけにございます。ただ殿下を傷付ける行為でしたら二度と会うつもりはありません」


 あの出会った時の穏やかな会話すら無くなった2人の間には、確実に溝が出来てしまった。


 レグルス様も私の元に来られると殿下との婚約を破棄して俺の女になれの一点張り。


 また、周りの何も知らないご令嬢には、殿下を蔑ろにする事と下級貴族が殿下の婚約者であるという事で嫌われて、遠回しに嫌がらせをされる日々。


 心も身体も限界が近づいて来ていた。


 だけど私は奴隷だから、生きる為なんだからと我慢した。


 母やスラム皆の犠牲の上に生きる私の寿命をただ少しでも伸ばせるように。

 幸せを諦めていた私は何も感じないように更に心を閉ざした。


 でも大丈夫。

 母との思い出と婚約が決まった時の殿下の笑顔だけで、私は生きる事が出来た。





◆◆◆





 だけど今年、彼女が学園に急遽転入して来たわ。


 赤い髪に青い目、美しい容姿、その癒しの力から聖女と認められたリディア様。


 彼女の明るく分け隔てない性格は、まるで私と正反対の人だった。だって私は感情をうまく出せず、呪いのせいで体調も崩しやすい奴隷だから。


 だから、もう私では殿下を繋ぎ止める事は出来なかった。


 殿下は急速に彼女へ惹かれていったわ。


 その証拠に、殿下と彼女が二人で温室で語り合ってる時に通りかかった私は驚いた。私が一度しか見れなかった婚約時に見た殿下の笑顔を、いとも簡単に彼女に見せていたから。


 母の思い出と同じぐらい大切な殿下の笑顔が、私には全く見せてくれなくなった、あの美しい笑顔を他人に見せていたわ。


 だから、閉ざしたはずの心が揺れ動き、身体の内から嫉妬の炎が燃えてしまった。


 何故?どうして?


 私は今まで自分を押し殺し耐えて来た。私は奴隷として生き続ける事だけを決意したはずなのに。そんな感情を抱いてはいけなかったのに。


 どうしても我慢出来なかった。


 殿下と対等に話せる彼女が羨ましかった。


 いえ、殿下だけでは無いわね。リディア様は分け隔てなく真っ直ぐで正しい事を曲げない女性だったから、殿下の周りだけで無く、比較的新しい貴族の方々も大勢彼女に惹かれていったわ。


 ただし、古い伝統的な貴族達は彼女を疎ましく思い始め、とくに令嬢達は彼女を虐めの対象にするのは早かったのよ。


 特に、私を散々虐めたリアナ・フルブレト侯爵令嬢。彼女の攻撃対象はリディア様に移った。そして私はそれを良い気味だと思った。殿下を奪った許せない女。そう醜い心が満たされた。


 そんな彼女はいつも男女に囲まれる。仲間と敵に分かれて貴族の令息、令嬢が言い争っている。


 でも時々、彼女の周りは敵だらけになる事があった。沢山の男女が彼女を突き飛ばして裏に連れて行く。


 … お母さんは大丈夫だから、見たら…駄目よ。


「だめ…駄目!」


 母が死んだあの時を思い出した。だって母は沢山の男に囲まれて犯され、殺されたのだから…。


「ラケル様…何のつもり…?」

「通り掛かっただけよ。何の騒ぎなの?」


 リアナ様が睨む。身体が勝手に動き勝手に彼女を庇っていた。もともと憎まれていた私はさらに疎まれたわ。


 そして、私に対する虐めが再開された。


 なるべく目立たないように、それからはリディア様が虐められても助ける事はせずに、少し離れた場で見て見ぬ振りをした。


 割って入るのは、助けるのは本当に彼女が危険な時だけ。彼女が犯されないように、彼女が絞め殺されないように。


 虐めをやめる様に動く事はしなかった。


 彼女を助けないからバチが当たったのね。いつのまにか彼女への虐めは、次期王妃となる私が指示した事になっていた。


 リアナ様の歪んだ笑み。


 令嬢達は邪魔な2人をまとめて陥れる事を思いついたわけだ。


 学園中に噂になった。


 それから。


 自分から私に近づく事が無くなったアーデン殿下が、時々だけど側近の方々と私に会いに来るようになった。


 久しぶりに他愛もない話もした。

 もう心が壊れた私は笑う事が出来なくなってしまったから嬉しい気持ちを出せなかった。


 知ってますか?

 本当は貴方とお話出来て、もう泣きそうなぐらい嬉しいんです。


 でもこれを伝えるわけにはいかないの。

 だって殿下は私と話す事が目的では無いから。


 私がご令嬢達を使い、陰でリディア様を虐めているという噂の真相を確かめる為に、私に直接探りを入れているだけであると知っていたから。


 殿下にとって私という存在は、リディア様へ害をなす可能性があるか無いか?

 それを確認するだけの存在でしかなかった。


 そんなある日、アーデン殿下は皆の前で魔力が暴発して顔に火傷を追った。


 心配した私はすぐに駆け寄ろうとしたが、殿下が火傷したのは顔。


 皆の目の前で魔法が発動してしまうと、不死身の秘密がバレてしまう事に気づき、殿下の為にも私は足早に隠れた。


 火傷で苦痛が来ると身構えたが、特に火傷の症状になる事が無かった。

 不思議に思った私は改めて殿下を見る。


 木漏れ日がアーデン殿下とリディア様に当たり、幻想的な癒しの魔力の光が殿下を包み込む。

 まるで絵画のような美しいシーン。


 呪いが発動する前にリディア様が癒しの魔法で殿下の火傷を治す所。


 陰に隠れてお慕いする方に寄り添う事も出来ないボロボロで死にかけた影のような私と、殿下の隣に寄り添い光輝く聖人であるリディア様。


 もう私の役目は終わったのかも知れない。


 私が隠れた瞬間を見られていた殿下は、皆がいなくなった後に私の元まで来て話しかけてきた。


「私は不死身だからこの程度の怪我はどうにかなるが、リディアは私を心配し治す為に魔法を使ってくれたんだ。それなのにお前は心配して駆け寄ってもくれないのだな」


 殿下に言われた言葉は更に私の心を引き裂いた。


 どれだけ心配したかったか。

 どれだけ近寄りたかったか。


 しかし皆にも殿下にも、呪いの事をバレる訳にはいかないのでただ申し訳ありませんと謝罪した。

 歯痒くて悔しくて握り締めた手から血が出た。


 私はただの奴隷とわきまえるべきだったのに、殿下に惹かれ過ぎてしまった。

 抑えきれない様々な感情で苦しかった。


 殿下に惹かれリディア様へ嫉妬したのが失敗だった。


 そして運命のあの日が来てしまう。


 リディア様はまたリアナ様に因縁を付けられて突き飛ばされていた。

 壁に頭をぶつけて血を流すリディア様。


 囲まれて暴力を振るわれてる。


 犯され絞め殺された母と重なる。


 リディア様が貴族に犯される、リディア様が快楽の為にしめ殺される。


 …駄目!


 大事になるといけないので今回も私はリディア様と令嬢達の間に割って入った。


「この騒ぎは何かしら?」

「あらあらラケル様、子爵家の方が何の御用でしょうか?」

「たまたま通りかかっただけだわ。リアナ様は今すぐ暴力をお辞めになったらいかがですか?」


 しかしリアナ様はニヤリといやらしく笑いながら白々しい嘘を言った。


「これは可笑しいですわ。未来の王妃様である貴方の指示通りに、この恥知らずを突き飛ばしただけですのに」

「何の事かしら?いつ私が貴方がたへそのような指示をしたの?」

「あら?わたくし達は皆、貴方から指示をうけましたわ」


 周りに沢山の男女が集まるから令嬢達が口を揃えて私が指示したと嘘をつく。


 ならば私が認めてこの言い分を逆手に取れば、いい加減この茶番を終わらす事が出来る筈だ。


「貴方達はあくまで私が指示したと仰るのね。でしたら私の指示を貴方達は受けてくださるのよね?」

「常識の範囲内でしたらわたくし達はもちろん従いますわ、未来の王妃ラケル様」

「だったらリディア様への嫌がらせを、今すぐお辞めになってくださるかしら?」

「なっ!」


 令嬢達がリディア様が周りの令息達まで息を呑むのが分かる。

 そうでしょう、この命令なら確実に虐める口実を無くせるはずだから。


「出来ますでしょう?虐めの指示よりも余程常識的な指示と思いますわ」

「し、子爵家の娘のくせに、生意気…」


 リアナ様が手を振りかぶった所で聞きたくない人の声が聞こえた。


「白々しいな…」


 アーデン殿下がいた。


 予想外の登場に私もリディア様も令嬢達も周りの令息達も固まる。


 ただ、この流れで登場するのは都合が悪い。

 私が令嬢達にリディア様へ虐めをするように指示したと、認めたと思われかねない。


「調査結果を見ても、お前がそんな事をする筈が無いと信じた俺が馬鹿だった!お前が虐めを行うとはな!」

「調査結果…ですか?アーデン殿下、一体何のことでしょうか?」


 話が少し見えないが、ここで引き下がってしまう訳には行かないから直接確認してみないと。

 我に返ったリディア様も慌てて私を庇い出した。


「違います殿下!!ラケル様は私を助けて下さったのです!!」

「リディア、庇う必要は無い!この女は不幸なふりをして、自分の幸せしか興味を持ってない」


 …自分の幸せ?


 …奴隷が生き延びる為に命を削っていたのに?


「その為ならどのような非道な事をしても何も感じない非常な奴なのだからな!」


 パキッ


 堪えていた私の心が完全に壊れた。


 私は一体何だったの?


 あんまりだ。


 あまりの発言に、令嬢もリディア様も唖然としているけど、もう私は我慢できなかった。


 アーデン殿下がリディア様の肩を抱き寄せた瞬間、私はリディア様を突き飛ばし、そしてそのまま逃げ出してしまった。


 だが逃げ出したのは間違いだ、だって全ての罪を認めたようなものだから。

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