第8話 強い想いと念
※ガネシとは、ヒンドゥー教のガネーシャをモチーフにした架空の生き物です。ねずみのラッタ♂と子猫のビラロ♀と一緒に地球でたくさんの経験を積んでいます。
「あ〜・・・昨日は変な夢を見たなぁ。オイラとしたことが完全に油断していた。なんだったんだろう・・・。しかも金縛りにもあったよな。あ〜恐ろしい」
ラッタがぼそぼそと独り言を言っていた。その近くではビラロが青ざめた顔で座っていた。
「ビラロ、どうしたの?何かあった?」
ガネシが心配そうにビラロに声をかける。
「・・・昨日の夜ね、眠れなくてちょっと遠くへ散歩に出かけたの。それで帰る途中にガラス張りのドアをチラッと見たら、頭がない男性が私の後ろに立っていたの。びっくりして振り返ったんだけど、誰もいなかった・・・。なんだったのかしら」
「あ!」
「何よ、ラッタ!大きな声出して。こんな話をしている時に急にそんな声出したら驚くじゃない!
「オイラも見たんだ!頭のない男!」
「え!?どこで!?」
ガネシとビラロが声を揃えてラッタに聞き返した。
「二人とも、落ち着いて聞いてくれよ。昨日の夜、目が覚めたんだ。でもなんか様子がおかしかった。意識がやけにぼやけていて、そんでもって体も動かない。金縛りってやつだ」
「金縛り?」
「なんだガネシ、金縛り知らないのか」
「体は眠りについている状態なのに脳が起きてしまう現象よ。中には霊的なものもあると言われているけれど・・・」
「ビラロ、なんだよその霊的なものって」
「この世界を見てきてわかったの。人に魂の他に、念という目に見えないものを持っているの。持っている、というと語弊があるかもしれないわね。感情のようにその時々感じる強い想いが念なの」
「それと金縛りがどう関係あるんだ?」
「人間の世界では幽霊とか妖怪とかこの世のものとは思えないものが存在すると信じられているの。それらって人間の幻覚だとも言われているんだけど、決してそうではない。私の推測なんだけど、幽霊や妖怪はもしかしたら人の念が作り出したものなんじゃないかしら」
「どういうことだ」
「わかった!僕も不思議だと思っていたんだよね。人の魂は本来純粋無垢で、負の感情が伴わない。なのに、どうして神界に行けない魂、人間界でいう成仏できない魂があるんだろう、どうしてそれらの成仏ができない魂が生きている人間に悪さをするんだろうって疑問に思っていたんだ
「ガネシ、ますますわからなくなったぞ」
「きっと幽霊と言われているものは、亡くなった人の魂ではなくて、亡くなった人の強い念が作り出したものなのよ。生霊と言われているものもあるくらいだもの」
「・・・オイラ話についていけない」
「生霊はね、生きている人が幽霊になるんだよ。亡くなってもいないのに幽霊になるのはおかしいよね。ビラロの推測が正しいとすると人の念が霊体としてこの世を彷徨っているということだね」
「なんだ、そういうことか。じゃあ魂と幽霊は違うのか」
「私はそうだと思っているわ」
「じゃあどうして成仏できない魂がでてくるんだ?」
「それはきっと、自分が生前に作り出した強い念や生きている人たちの強い念が、魂をこの世にとどめているんじゃないかしら。残された家族が深い悲しみから、もっと生きて欲しかった、もっとそばにいて欲しかったという強い念を持ち、亡くなった人の魂をこの世に引っ張っているのよ。もしくは生前のもっと生きたいというその人の強い念が魂を成仏させないとかね」
「人の念って恐ろしいな」
「そうよ、生霊だって幽霊と呼ばれているものだって悪さをするものもいるんだからね。強い念はネガティブなものの方が出やすいのよ。中にはあの人を応援したいとか、人の幸せを願う強いポジティブな念もあるけれど」
「あ〜・・・オイラの念がビラロに悪さしているのかな」
「どういうこと?」
「ビラロ怒りっぽいじゃん。オイラの念のせいかな」
「そうかもね、私が怒りっぽいのはあなたにだけだしね」
「・・・なんかうまく流された気がする・・・けどまぁいいや。話を戻すと、そういう念が金縛りを起こさせているかもしれないってことだな。なるほどな、オイラが金縛りに見た頭のない男は誰かの強い念というわけか」
「そうだった、忘れていたわ。本当に怖かった。でも変ね。どうしてその男性は頭がないのかしら」
「ここにはもうその男性はいないから僕にもよくわからないけれど・・・。きっともう何も考えたくないくらい辛い思いをしたのかもしれない。もう嫌だ、もう何もかも消えてくれ、何もかもどうでもいい、思考を停止させてくれ、という強い想いの現れから、思考する部分の頭のない霊体を作り出したのかなぁ。わからないけれどね、他に理由があるかもしれないし。それはその念を作り出した人にもきっとわからないよ」
幽霊と念の関係。それはビラロの推測であるが、ガネシはその推測は確かに本質を見抜いているような気がした。負の強い念は人に悪影響を及ぼすが、ポジティブな念は人を幸福にする。人は古来から「祈り」を捧げてきた。それは本能的に気付いていたのかもしれない。みんなで捧げる強いポジティブな祈りは、必ず世界を良き方向に変えてくれると。だからこそ人は自分自身の思考に気をつけなければならない。思考が強い念となり、あなたの人生を、あなたの見える世界を、あなたの環境を作り上げるのだから。
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