第7話

 放課後。



 私は彼と一緒に学校帰り、制服のまま電車を乗り継ぎ、ある場所へとたどり着いた。



『パステルスイーツ・ミュージアム』



 入場券を買って彼と一緒に中に入ると、そこには100以上の可愛いスイーツショップが並ぶ、パステルカラーで彩られた巨大ミュージアムが広がっていた。


「…すごい!!」


 私は感動して、思わず叫んでしまった。


 スイーツショップだけでは無く、屋内だというのに遊園地の様な乗り物や劇場の様なスペースまである。時間を決めてキャラクターショーでもするのだろうか?


「もしかして、一度もここに来た事無いの?」


 彼に聞かれ、私は頷いた。


 少しお腹が空いたねと、二人で相談して『パステル・パンケーキ』という店に入った。無事注文を済ませた私は、キョロキョロとあたりを観察してしまう。


「うん。こういう場所がある事は、知ってたんだけど」


 私はカラフルで楽しいメニューを見ながら嬉しさのあまり、満面の笑顔になってしまった。


「…君はクッキングクラブだから、友達と来た事あるかと思ったけど。じゃあ、今日ここに来れて良かったんじゃない?」


 彼は、ここに来た事があるのだろうか?


「うん!ありがとう、柏葉君」


 彼は向かいの席で水を飲みながら私を見つめ、少しムッとした表情に変わった。


「もう付き合ってるんだから、せめて俺の事名前で呼んでくれない?」



 私はどきっとした。




「…………え」




 で、でも、どうやって呼べば。




「…………ほら、呼んでみてよドジおとめ。今」




 …………。




「…………樹、くん」





 彼と私の、目と目が合う。






「…………」






「…………あ、あの…?」






 彼はしばらく、静止しながら私を見ていた。






「…………破壊力、すごいね。ちょっと今、色々ヤバかったかも」






 …………。





 …………何を破壊したんだろう。







 思い切って、

 私も言ってしまおうかな…。








「私の事、は、…その、『ドジおとめ』じゃなくて『苺』って、呼んでくれないかな」






「…………!」





 彼の瞳が、一瞬揺れた。





 私、…今、

 何だかとても大胆なお願いを

 彼にしてしまったのかな…。





「…………」




 相変わらず

 何を考えているのか分からない

 氷の様な表情だけど。




「…………もうすぐ…………そう呼ぶかも」




 ほんの少しだけ、

 嬉しそうに見えたのは

 気のせいかな。






 その時、

 注文をしたパンケーキが二つ、

 テーブルに運ばれてきた。






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