第5話

 彼は光沢のあるグリーンの包み紙と、ベルベット生地の白いリボンのラッピングを、私の目の前で開けた。




 白い箱を開けて中のチョコレートを一目見た途端、彼の表情が変わった。




「…………!」




 一瞬、私の目を見た彼のその瞳には、

 また、青白い炎が揺らめいた。




 …その輝きに、魅入られてしまう。




「…………これ何?ルビーチョコ?」



 興味を持って聞いてくれたので、私は思わず彼に打ち明けたくなったが、これは自分一人で開発したお菓子ではないので、内緒にしておかなくてはならない。



「…企業秘密なの」



 彼は一瞬、瞳の奥の青白い炎を揺らし、私を熱い視線でじろっと睨んだ。



「…俺には教えてくれないんだ?」



 …怖!!


 また焼かれそう!!



「…ごめんね」



 彼は全く納得いかない表情を浮かべながらも、チョコレートを一つつまみ上げ、じっと見つめた。


「7つある。ちゃんと苺に見えるね…形はゴツゴツしてて、いびつで不揃いだけど」



 すごく、具体的な感想…………!



 彼は目を瞑ってチョコレートを顔に近づけ、その香りを嗅いだ。



「いい香り…」



「…………!」



 その目を開けて、もう一度チョコを見る彼。



「色がすごく綺麗で可愛い。見ていて段々、ワクワクして楽しくなって来る」



 …………!



 今、彼の瞳の奥で楽しそうに、

 炎が踊っている様に見えた。




「まるで君みたい。…可愛くて」





 …………!!






 一粒目のチョコレートを、彼は口の中に入れた。


 味わう様にゆっくりと、

 私の目の前で苺トリュフを食べる彼。




「この食感…マシュマロ…?」





 その艶のある唇に、

 …視線が惹き寄せられてしまう。




「しっとりしていて甘すぎなくて…優しい。…この味、俺は大好き」




 …………!!




 …嬉しい!!

 …彼が褒めてくれた!!!




「マシュマロじゃないの。チョコレート」



 彼は私を見た。



「どうやって作ったの…?」



 さっきよりももっと、

 その瞳の炎は、熱くなっている。



「…………企業秘密なの」



 急に彼は、

 息がかかるくらいの距離で

 私を見つめながらこう言った。




「また秘密なんだ。…君はすごく甘そうに見えて、本当は全然、そうじゃないの?」





 彼は私の肩を、ぐっと引き寄せた。






「木下さん」









「……はい!」









「本当に、君は俺の事好きなの?」








 私は息が止まりそうになりながら、

 こくんと一度、頷いた。







 顔がどんどん、赤くなっていく。







「じゃあ…もう、両想いだね」








「…………!」







 彼の右手が私の頬に触れた。








「…そういう顔を見せるのは、俺だけにして」







 彼は私の髪を優しく撫で、

 その顔を、私にそっと近づけて、








「…反則なくらい可愛い。…ドジおとめ」







 私の唇に、

 甘くて優しい、キスをした。








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