道化師

ニコ

道化師

 私が付き合いたてたころ相手に、

どんなときもあなたを笑わせる道化師になると赤面しながら言った。

その言葉に噓偽りはなかった。

つらい時も悲しい時も笑顔にさせて来た。

私は、それはそれは立派な相手専属の道化師に変身していた。

相手の好きな物や事で笑い、

相手の嫌いなことを避け、

相手の夢を自分の夢に当てはめた。

そうすることが正解だと思っていた。相手に合わせることで相手の気持ちを分かった気になっていた。実際、その行為が功を制した時は少なくなかった。


しばらくして私は主を失った。


 皮肉にも私の道化のせいだったらしいが、理由は深く聞かなかった。

聞いてしまったら虚しくなってしまうだろうから。

主のいなくなった道化師は仮面を外した。そこには今の私ではなく、あの人に出会う前の私しか残っていなかった。

しばらくの間、私になっていなかったから、私の本当の笑い方も、私の夢も自分自身の事が何も分からなくなった。

それでも明日は来る。


 月はにじみ、星が地上に降りた夜空の様な私は、

現実という船に乗って、未来というなの海へ出発した。

沈没するまで。不安や怒り、悲しみや虚しさのような感情を燃料に進んでいく船で進んでいく。

例え、素敵な人と出会えてもハリボテの私しか見られていない虚しさで進み続けるだろう。私の船は。

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道化師 ニコ @NicoNicokusunoki

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