第15話 上手くはいかない世界
まあそうだとは思うがそう簡単に上手くいかないのがこの世界だ。
いつかはそうなると思ってはいた。
ただ.....俺は逃げていただけだろうけど。
何がそうなると思っていたかって?
そろそろマズイと思っていたが.....大家さんに沙穂の事に関して電話を受けたのだ。
俺は.....冷や汗がただ出た。
沙穂を俺の部屋で匿う上で.....改めて社会の厳しさを感じた気がする。
俺はそう考えながら.....乾燥した唇を舐めて顎に手を添える。
そして.....対策などを考えているうちに今週の日曜日になって、俺達は近所のスーパーに隣接する携帯ショップにやって来た。
どうなるかは分からないが.....と警戒しながらの入店となったが。
少しだけ不安な思いが有ったが取り敢えずは携帯の契約が取れた。
妹、という点で、だ。
契約については取り敢えずは俺の自動車免許でなんとかなり、俺は.....携帯ショップ店員に、すまない、と思いつつ携帯を受け取り。
そして怪しくならない様に振る舞いながら.....携帯ショップを後にした。
☆
「.....携帯渡しとくな」
「.....はい」
「.....どうしたんだ?」
そんな冷や冷やした契約が終わってから。
携帯ショップを後にして.....歩いている歩道で沙穂は不安な顔を俺に見せてきた。
俺は?を浮かべながら.....沙穂を見る。
沙穂は.....私服の胸に手を携帯を当てていた。
そして不安そうに俺を見てくる。
「.....大丈夫ですかね。大家さんとかに全部がバレないですかね.....?」
「.....正直言って.....この調子では分からない。と言って良いと思う。世の中は決して甘く無いからな。だけど.....大丈夫だ。今までがそうだったろ」
「.....はい.....」
でもその、不安です。
私.....小五郎さんから離れるの嫌です。
この場所でようやっと.....生きる価値を見つけたんです。
だから.....嫌です。小五郎さんから離れるなんて、と呟く沙穂。
そして目を手に当てて涙を浮かべた。
「.....そうだな.....生きる価値か.....。俺もお前のお陰で見つけた様なもんだからな.....」
「.....私もそうです。生きる価値を.....ようやっとこの場所で見つけたんです。小五郎さんから離れるぐらいなら死にます」
「.....そう言ってくれるのは有難いけど.....死ぬのは如何なものかな」
俺は苦笑しながらポケットティッシュを渡した。
しかし.....ハンカチを持ち歩いて無かったのはミスだな。
そんなティッシュを受け取るなり.....沙穂は有難う御座いますと涙を拭った。
俺は.....その表情に柔和に笑みを見せる。
「.....大丈夫だ。どんな運命だろうが.....俺はお前を捨てたり、お前を引き離したりしない。俺はそんな事が有ったら.....立ち向かうさ」
「.....はい。その言葉.....嬉しいです」
沙穂は涙を拭うなり.....俺を優しげに見てきた。
笑み合う、俺達。
その中で俺は伸びをした。
それから.....沙穂に向いてから言う。
「.....という事で.....飯でも食うか。序でに」
「.....ですね。.....小五郎さん」
そうして俺達は飯を食う事になった。
俺は、大丈夫、と言い聞かせながら.....沙穂を見る。
沙穂は俺の手を見ながらモジモジしていた。
ん?何だ?
「その、もし良かったら。手、繋いで良いですか」
「.....手を繋ぐのか?.....あ、ああ。まあ良いけど」
「.....そうすれば恋人とか妹の様に見えませんか?.....それを思いました」
「.....見えるっちゃ見えるが.....うん.....」
それって結構恥ずかしいんだが。
思いながらも直ぐに沙穂は俺の手を握ってくる。
そして.....と言うか.....柔らかいな。
コイツの手.....。
「えへへ。.....とっても嬉しいです」
「.....俺は恥ずいけどな.....」
「.....そしてこのまま恋人になれたら嬉しいですけどね。もっと」
「.....今は無理だけどな。お互いに距離を一定にしたいから」
はい、知ってます。
と沙穂は笑みを浮かべる。
俺は.....その姿を見ながら溜息混じりに苦笑した。
そして.....俺達はスーパーの飲食コーナーで飯を食べて。
そのまま家に帰宅した。
☆
『そっか。.....携帯を契約したんだね』
「.....ああ。じゃ無いと色々と困ると思ってな」
『.....うん。そうだね。何か.....有ったら困るもんね』
「だろ。.....アイツなら信頼出来るから」
階段でその様に会話する。
相手は皆野だ。
いつの間にか.....皆野も居ないといけない存在になっているな。
思いながら俺は手に持っている飲み物を飲んだ。
沙穂は今、家の中だ。
『.....沙穂ちゃんは元気?』
「.....ああ。元気だ」
『.....そうなんだ。だったら良かった』
そんな感じで話している中で.....顎に手を添えた。
果たして.....皆野に話しても良いだろうか。
大家にバレそうになった件を、だ。
思いながらも.....首を振った。
これ以上、皆野に.....迷惑は掛けられないかと判断したから、だ。
『今度、遊びに行くね』
「ああ。また来てやってくれ。宜しくな」
『.....沙穂ちゃんって.....優しいよね。配慮が出来る子だと思う』
「.....だな。それは思う」
アイツを軸に.....世界が回っている様な。
そんな感じがするからな。
思いながら.....俺は前を見る。
薄暗い世界を、だ。
「.....皆野。有難うな」
『.....何が?』
「.....俺一人じゃ.....潰れていたよ。感謝する」
『うん。だね。有難う』
そして皆野との電話を切った。
それから俺は立ち上がって明日を見据える。
何が有るか.....と思う明日を、だ。
だけど.....何も起こらない事を祈りたいもんだ。
「.....さて.....」
それから沙穂の居る場所に戻った。
お帰り、の声が聞こえる世界に、だ。
そして俺は、ただいま、と答えた。
☆
沙穂は携帯を契約した。
次にやるのは履歴書だろう。
思いながら.....沙穂が書いている履歴書を見た。
履歴書には俺の妹だと記している。
そして現住所はこの場所だと記載している。
「沙穂」
「.....はい?小五郎さん。どうしたんですか?」
「.....無理はするなよ」
「大丈夫です。私.....小五郎さんに心配は掛けさせないですから」
じゃ無いと.....小五郎さんが泣きますから。
とからかう様に俺を見てくる、沙穂。
俺は息を吐きながら、泣かないって.....、と苦笑した。
だけど.....確かにな。
沙穂が苦しんだら.....悲しい気持ちにはなる。
「.....冗談です。.....でもその私、大丈夫ですよ。今は元気です。でも.....何か有ったら必ず報告します。貴方が.....保護者ですから」
「.....ああ」
「.....小五郎さん」
「.....何だ?」
改めて、大好きです。
と満面の笑顔を見せる、沙穂。
そして少しだけ恥じらった。
俺はボッと赤面しながら.....頬を掻く。
本当にいきなりだよな.....。
困惑しながらも.....沙穂に苦笑を見せた。
「.....ああ。俺もお前が好きだ」
「.....え?それって恋ですか?」
「あのな.....。そういう意味じゃ無い。でも好きだ。家族として、だ」
「.....なーんだ。あはは」
なんだ、とは失礼だな。
思いながら.....溜息を吐いた。
それから、履歴書が出来ました、と見せてくる。
俺はそれを見ながら.....沙穂を見る。
「取り敢えずは頑張れ」
「.....ですね」
そしてこれはこれで良いと思う。
と俺は笑みを浮かべた。
明日、バイト先に.....沙穂は向かう。
何事も無い様に祈ろう。
考えながら.....履歴書を見た。
よく考えたら明日からの一週間。
かなり色々有るな.....。
龍野さんとのデート?とか.....。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます