第11話 小五郎と沙穂の関係
協力という言葉はかなり不思議だ。
何がどう不思議かって言えば。
助けるという意味にも取れるしただ手伝うだけにも聞こえるから。
俺は.....協力をされる必要は無いと今まで考えていた。
だけど皆野はそのどっちも選択して俺を見てきた。
俺を助ける為だけに、だ。
その事に溜息混じりで皆野を見てそして空を見た。
そして休憩が終わり。
俺達は仕事に戻る。
それからその日は残業を少しして帰ったのだが.....。
明日、気を付けないといけない。
残業で時間が遅くなりそうだから、だ。
皆野と別れ、俺は帰宅する。
さて.....どう話したもんかな.....。
☆
「お帰りなさい。.....どうしたんですか?何だか悩んだ顔.....」
「.....いや。何でも無い」
「.....それに何だか.....かなりフワフワしていますよ?」
正直の所。
昼に皆野にキスをされた事が.....かなり衝撃だ。
思いつつ.....ホワホワした感じで帰って来たらそう言われたので答える。
俺は、いかん、と思いながら首を振る。
そして沙穂に静かに笑んだ。
「.....大丈夫だ。沙穂。有難うな」
「.....そうですか?お仕事が忙しい訳じゃ無いですよね?」
「.....ああ。有難うな。忙しい訳じゃ無い」
言いながら室内に入ってから上着を脱ぐ。
それを直ぐに受け取ってから.....ハンガーに掛ける沙穂。
それも相当に手際の良い感じで、だ。
俺はその姿を見て沙穂に向いた。
「.....沙穂。皆野って覚えているか」
「.....皆野さんですか?はい。覚えていますよ。だって.....この前来ましたから」
「.....そうか。.....その皆野がな、俺達を助けると言っている。心から協力したいって言っているんだ」
「.....そうなんですか?」
驚く沙穂。
ああ、と俺はその顔に返事した。
それから、沙穂はどう思う?、と聞く。
何故、そう聞くかと言えば。
沙穂が嫌がったら意味が無いから、だ。
「.....私は嬉しいです。皆野さんは女性の方ですから。気軽に.....色々な相談が出来そうです。信頼が出来る人だと思っています」
「.....そうか。そう思ってくれているなら良かったよ」
「.....でもそれはそうと協力って.....もしかして.....追い詰められているんですか?小五郎さん。そうだったら.....相談して下さい」
「.....ああ。えっと、違うよ。.....俺達の日々に協力するって。そういう事だ」
成る程、と沙穂はニコッと笑みを浮かべる。
俺は.....その姿を和かに見つつスマホを見る。
着信が.....有った様だった。
それはあのクソ親から、だ。
「.....まさか」
「どうしたんですか?.....小五郎さん?」
「.....いや、すまない。沙穂。ちょっと電話してくる」
「.....あ、はい.....」
そして電話に出る。
あのクソ親め!
しかも一回しか電話して来てないとか.....!
どれだけ俺は沙穂の件を聞きたいと思っていたのか!
思いながら電話する。
すると.....電話が掛かった。
親父だと思うが、だ。
『.....小五郎か』
「.....ああ。俺だけど。アンタら.....どれだけ沙穂の件で聞きたいと思っていたか知ってんのか.....!」
『.....その件はすまなかった。実家が火事になったからな』
「知ってるよ。知っている。.....そんな事が聞きたいんじゃ無い。何で沙穂という人間が居るのか聞かせろ。何で女子高生がアンタらの家に居るんだ!」
俺は眉を顰めて話す。
ダンッと音を立ててドアを叩いた。
すると.....親父は俺に言葉を発する。
『良いか。よく聞け。羽鳥沙穂に関してだが。.....幼馴染だった子の親戚の子だ』
「.....は?.....は?!」
『.....伊藤香穂だったな。確かお前の幼馴染の名前は。.....沙穂は.....頼まれたから私達が預かったんだ』
「.....何だ.....と.....香穂の.....って。羽鳥なんて名前は初めて聞いたんだが.....」
俺の家が火事になってからお前に任せたのはそれが理由も有る。
そして.....俺としてはお前に借金を押し付けた事、今は俺は反省している。
反省の気持ちを言っても.....お前は満足はしないだろう。
ただこれだけは知っておいてほしい。
お前はやりたい様に動け。
と親父は他人事の様に言った。
キレそうなんだが。
ってか.....このクソ親父.....何でそんな重要な事を今頃.....!
「アンタらのせいでどんだけ.....沙穂に悲しい思いをさせたか.....!これだけは言わせてもらうぞ。.....これまで.....何で電話して来なかったんだ.....!」
『.....すまなかった。その件は。俺も母さんも忙しくてな。本当に.....すまない』
「.....すまなかった.....ってアンタ.....」
『.....頭を下げても電話じゃ分からないだろうから。本当にすまなかった.....と。俺からはそうとしか言えない。これ以上の言葉は無い』
この.....クソ親父。
真面目に.....文句が山程有るんだが.....。
頭に来るな本当に。
思いながらも.....俺はスーハーと息を整えた。
そして話し出す。
「.....これから先、沙穂をどうしたら良いんだ。.....アンタの思った以上に彼女は.....相当に傷付いているだが」
『.....沙穂は暫くお前に預かって欲しい。すまないが訳は今言えない』
「.....」
『.....俺達もそれなりに大変な時期を迎えている。分かって欲しいとは言わない。だけど.....こちらの事情も汲んで欲しい』
俺は頭に手を添えた。
それから.....盛大に溜息を吐く。
そんな真実が有るとは.....思いながら自室のドアを見る。
俺はドアに手を添えながら言葉を発した。
「沙穂は知っているのかこの事実は」
『.....知っている。お前にも言っただろ』
「.....あのな.....全然聞いてねぇよ」
『.....そうか』
じゃあ沙穂は.....話したく無いんだ。
お前には、だ、と俺に親父は話す。
俺は盛大に溜息をまた吐きながら頭を掻いた。
そして.....スマホを握る。
「何でアンタの家で沙穂を預かる事になったんだよ。.....つーかそれも話せねぇってか」
『.....色々事情は有る。だけど.....今は話せない。すまない』
「.....そればっかりか。非常に非常に.....困るんだが」
『ああ.....本当にすまないが』
親父がそう呟く様に言う。
そうしていると親父が、小五郎、と話し掛けてきた。
すると.....俺にこう言葉をかけてくる。
俺は驚く。
『.....すまなかった。.....本当に』
「.....!」
『.....切るぞ。火災の件で忙しくてな』
「.....クソッタレ.....」
そして電話は切れた。
俺は.....スマホを見ながら.....天を仰ぐ。
そんな事実が有るとは.....と思いながら、だ。
俺は何回目か分からない溜息を吐く。
そうしていると.....ドアが開いた。
そして.....俺を沙穂が見てくる。
「.....小五郎さん」
「.....どうした。沙穂」
「.....ごめんなさい。隠していて。.....ごめんなさい」
「.....衝撃的だけど.....大丈夫だよ。.....お前も大変だったな」
その様に話しながら.....スマホを見る。
そして.....天をまた仰いでから部屋に入るか、と沙穂に笑みを浮かべた。
沙穂は涙を流していた。
だがちょっと待ってくれ。
それ以上にマジに頭が混乱している。
落ち着かせたい.....。
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