第4章 終わった世界に差した希望の光
第8話 小五郎の過去、沙穂の過去
沙穂は高校2年生だった。
だったってのは辞めたから、だ。
県立か公立かは分からないがどっちにせよ.....高校を辞めたので.....16歳の普通の女の子となっている。
俺は.....何だか申し訳無い気持ちでいっぱいだった。
沙穂は否定したがそれでも気になる。
あのクソ親のせいで.....高校を無理矢理に辞めさせられたのなら。
人の人生を捻じ曲げた事になるから俺の責任が有るのだ。
「.....」
だがそのクソ親からは相変わらず.....電話が無く、そしてメールも無い。
流石に痺れが切れそうだ。
ハラワタが煮え繰り返りそうで有る。
思いながら.....部屋を片している沙穂をチラ見する。
沙穂は鼻歌混じりで嬉しそうに部屋を片していた。
そしてそんな姿を見ながら俺は前を見る。
おっさんと女子高生。
何時までこの奇妙な暮らしが続くのは分からない。
だけど.....万が一、沙穂が笑顔じゃ無くなったら。
その時は腹を括る必要が有るな。
と思っていると沙穂が俺の横に立っていた。
「.....小五郎さん」
「.....何だ?沙穂」
「すいません。ちょっとだけ掃除したいので立って下さい」
「.....あ?.....ああ。すまん」
その様に言われたので立ち上がると.....長らく座っていたせいか。
よろめいてしまった。
そしてキャッと言う、沙穂に壁ドンをする形になる。
俺は驚愕する。
そして俺は目を丸くしながら.....沙穂を見た。
沙穂は目をパチクリして.....、あ.....、と呟き真っ赤に染まっていく。
そしてモジモジし始めた。
「小五郎さん.....す、すいません。.....退いて下さい。そんなに見つめられると.....は、恥ずかしいです」
「.....あ、ああ。すまん!」
俺は慌てて退いた。
そうして沙穂を見ると沙穂は胸に手を当てながら真っ赤になっている。
そんな姿を見ながら.....俺は目を逸らした。
こんな俺をマジに好きなのか?沙穂は、と思いながら、だ。
そうしていると.....沙穂が聞いてきた。
「.....小五郎さん」
「.....何だ?」
「.....聞いても良いですか。.....何で私を襲ったりしないんですか?夜這いとか」
「.....いきなりとんでも無い事を聞くなお前。ぶっ飛んでるだろ。.....つーか、何でってそれはお前が未成年だからだろ」
それは分かります。
でも.....私を.....報酬も貰わずに襲わない人なんて初めてです。
と、とんでも無い言葉を放つ。
俺は見開きながら.....沙穂を見た。
「.....私、小五郎さんの家に行く前に.....その、長谷場さんの場所に行く前に.....男の人の家にとまりました。泊まらせてもらいました。だけど.....その人は体が目当てだったんです。私の体をです。なのに.....貴方は私の体を目的としない。そんな人.....初めてです。だから気になって仕方が無いんです」
「.....」
「.....何で私の体を目的にしないんですか?私だったらやりたい放題ですよ。セックスし放題ですよ。.....私は警察にも言わないですし。今だったら.....そんな事をしても良いと思います」
胸だって大きいですし.....襲い甲斐が有ると思います。
柔らかいんですよ、胸。
なのに私を.....何故こんなにも大切にしてくれるんですか?と俺を見てくる。
俺はその言葉に.....沙穂の肩に手を置いた。
そして首を振る。
「.....俺はそんな真似はしない.....そして.....お前の体を目的にしない。女の子が軽々しく.....性の対象に見て下さいとか.....その、セックスとか言うな」
「.....でも.....私.....」
「.....俺はな。.....お前を守る義務が有るんだ。心からな」
「.....それはずっと小五郎さんが言ってくれるから分かる気がするんです。でも.....小五郎さんが私をそんなまでして守る義務って有りますか?だって私は.....迷惑に.....身を突然貴方に寄せたんですよ。それって報酬が欲しくなると思いませんか」
何も受け取らないのは.....気になります。
と困惑した姿を見せる、沙穂。
俺は.....頬を掻いた。
そして沙穂にどう言い聞かせようかと思ったが.....思いついたので向く。
「.....沙穂。俺はお前の存在が全てだ」
「.....え?」
「.....お前が存在している。それだけが.....全てを受け取るに値するんだ。分かるか」
「.....」
私が.....?と呟く沙穂。
俺はその姿を見ながら.....窓から外を見た。
そして.....昔を思い出す。
あの頃を、だ。
それから沙穂に向いた。
「.....昔の話になるけどな」
「.....?」
「.....俺な、幼馴染の女の子が居たんだ。昔」
「はい。昨日.....その話を初めて聞きました」
沙穂は俺を見つめて.....話を真剣に聞く。
そうか、と言いながら俺は沙穂に苦笑する。
それから.....また顔を戻した。
その幼馴染は.....自殺したんだ、と.....俺は複雑な顔を浮かべた。
思いっきり見開く、沙穂。
そして.....俺は話をそのまま続けた。
途切れない様に、だ。
「.....その幼馴染はな。俺と同じだったんだよ」
「.....え?」
「.....親じゃ無いけど.....祖父母に借金を背負わされて借金苦で自殺したんだ」
「.....!!!!!」
丁度、守ってくれる奴も両親も居なかったんだよな。
その中で.....祖父母に裏切られたショックで耐えれなかったんだろう、と俺は目を逸らしながら話す。
その幼馴染さんは.....おいくつだったんですか?
と俺に沙穂は複雑な顔で聞いてくる。
「.....15歳だったよ。.....丁度、沙穂と同じかな」
「.....えっと.....小五郎さんも同い年だったんですか?」
「.....ああ。そうだな。.....でな、俺は.....幼馴染みが亡くなってから.....誓ったんだ。俺は亡くなったお前の分も幸せになってみせるってな」
「.....」
だけど.....そんな夢もパチカスの親の借金で潰えたんだ。
でもなそんな打ちのめされていて死んで働いている中で.....お前に出会ったんだ。
でも.....俺は馬鹿だと思ったよ、と俺は続きを話しながら.....声を震わせた。
俺が話出したのにこの有様ってのもな.....と思いながら、だ。
沙穂が慌てて聞いてくる。
「.....馬鹿って.....何でですか?小五郎さんは悪くないじゃ無いですか.....!」
「.....優しいな。お前。.....俺な。お前を.....幼馴染と重ねてしまって.....お前をお前として見てなかったのかも知れないんだ。.....馬鹿だろ?ハハハ.....そう言うこった」
「.....小五郎さん.....」
何でかな.....俺は成長していると思ったんだけど.....何も成長してないな。
そう呟きながら.....膝を曲げて体操座りになる。
沙穂を何だと思ってんだ俺は.....身代わりか?馬鹿だろ俺は.....。
もうこのまま沙穂に嫌われても良いと思う。
と思っていたが.....沙穂は.....涙を流しながら俺の手を握ってくる。
「.....そんな中でも私を大切にしてくれている。幼馴染さんを大切にしている。小五郎さん。身代わりとして私を見ているとは思ってません。私は.....貴方に恋をして.....貴方の側に居れて良かったです.....本当に」
「ごめんな.....ごめんな。沙穂を励ますつもりが.....。なのにそういう言葉を言える.....お前は本当に優しいな。沙穂」
「小五郎さんは.....絶対に私を大切にしているから.....!.....私は知っています。貴方が.....私に手を差し伸べたあの手を。だから.....自信を持って下さい」
目に手を添えて涙を流す俺。
子供の様な泣き方だった。
情けないな俺はマジに.....大人なのに.....。
そんな中で沙穂は俺の手を握る。
そして.....泣いてくれる。
沙穂はマジに優しいと思う。
俺は.....沙穂に出会って良かったのだろう。
そして沙穂が居てくれて良かったのだろう。
じゃなければ.....俺は死んでいたかも知れない。
生きている意味を.....探せなかった。
ただブリキの人形の様に行ったり来たりするだけだったかも知れない。
そう、思わせてくれるのだ。
「.....小五郎さん。私は.....貴方に出会って良かったです。あはは」
沙穂はニコッと笑む。
ただ沙穂の話を聞いていただけなのに.....暗い話になっちまったな。
思いながら.....涙を拭い和かに沙穂を見る。
沙穂は俺にまだ微笑んでいた。
そして抱きしめてくれる。
「.....沙穂。俺もお前に出会えて良かったのかも知れない」
「.....だと嬉しいです。暖かいです」
「.....」
こんなクソ野郎でも.....生きて行こうと思わせてくれる。
それも全て沙穂のお陰で、だ。
そして.....沙穂を俺は見た。
俺は言葉を発する。
「.....暗い話は置こう。先は.....明るい筈だから、だ」
「.....ですね」
「.....これからも宜しくな。沙穂」
「.....はい」
そして.....取り敢えずは話が纏まった。
それから俺達は.....笑み合い。
各々で仕事をし始めた。
沙穂を納得させようと思ったら.....とんでもない感じになったな。
思いながら.....溜息を吐いた。
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