一 始まりの死

妄想は爆発だ。誰かが、そんな事を言っていたような言ってないような。いや。そんなことはどうでもいい。




一郎は、そんな事を思うと、在りし日の自分の姿を脳内に思い描く。




突然だが、我らが主人公、柳生一郎はもう死んでいる。正確に言えば、一郎の肉体は、か。では今ここにいる一郎はなんなのか。




彼は、「デリュ―ジョン」の中に残っている生前の彼の残滓。フルダイブ型であったデリュ―ジョンには、現実の世界の人格をデータファイルとして電脳世界内にコピーする機能があり、その機能によって保存されているのが今の彼である。




彼には彼としての自覚があり、心もあり、彼は自身の事を柳生一郎本人であるとして疑わない。だが、そんな彼も、自身の肉体の死を知った今、さすがに動揺をしていた。




「ふーん。心臓発作ねえ」




 一郎は独り言ちる。




 彼の死は電脳世界内ある彼の家の壁にあるテレビのニュースの中で報じられていた。




 見出しはおおよそこんな感じであった。




「一人暮らしの男性。フルダイブ型VRシステムにてゲームをプレイ中に心臓発作で死亡。死後一週間が経過したのち発見さる」




「そうかそうか。死んだか」




 実感などはない。俺はこうしてここにいる。けれど。俺はこれからどうなるんだろう? 突然消えるのか? それともこのままずっとこうしていられるのか?




 と、そこまで思って、一郎は顔を上に向けた。




「ああ。なんとなく空がみたいぜ」




 呟いた瞬間、見えていた天井が消え、青い空が現れる。




「( ,,`・ω・´)ンンン? なんだ今の?」




 バグか? こんな事始めだぞ。




 一郎は立ち上がると、家の中から外に出る。




「天井がない」




 おいおいなんだよ。この家建てるのに結構お金使ったんだぞ。直らないのかよ。なんでもいいからとりあえず直っとけって。




 一郎の思いを理解したかのように家の屋根が元に戻る。




「ちょっと、これ、何が起こってるんだ?」




 一郎は言葉を漏らした。

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