6ー2

 「ん、どうかしたかい?」

 「「な、何でもないです」」

 突然の驚きだった。思わず、綾と渉は同時に叫んでしまった。

 そんな2人を見てアズサが照れ臭そうに語る。

 「そ、そんなに驚かないでよ。しかし本当に双子だね、息ピッタリにハモっていたよ」

 「「……はい」」

 綾と渉が驚いたのは、和志とアズサの2人は恋人同士だという事に。部のみんなは知っている感じだった。綾と渉は後ろの方を歩いていたので、突然の叫び声で前の方を歩いていたみんなが歩くのをやめて、何事だと後ろを見たが何もないと分かりまた歩き出した。

 「あっ、そうだ、若菜君」

 「はい」

 「今回の準備、若菜君が1人に任せてすまなかったね。誰の手伝う事が出来なくって」

 「いいえ、部長。綾と渉君が手伝ってくれたので大丈夫でした」

 「そうか、綾君と渉君が。ありがとう」

 「いいえ。若菜1人じゃあ大変だなと思って」

 「綾の付き添いだったので」

 「それでもありがたい事だよ」

 今、屋上に向かう階段が見えてきた。周りが暗いのでゆっくりと会話をしながら歩いて行った。

 「若菜、俺の特等席は?」

 「大丈夫です。ちゃんと用意してあります」

 「サンキュー」

 綾は近くにいた星宮に聞いてみた。

「ねぇ、星宮さん。和志先輩の特等席って?」

 「それは、和志先輩の行動を見ていれば分かると思いますよ」

 「「?」」

 星宮の言葉を聞いても分からなかった綾は自分の隣にいる渉を見て今の説明、分かったと目で語るが渉にも分からなかった見たいで2人して首をかしげた。

 「さぁ、階段を上って屋上に行こう」

 「先生、鍵は?」

 「先に開けてある」

 「やり~っ。じゃあ、お先に~!」

 「こらっ、山里!」

 屋上の鍵は開いていると知った和志は、誰よりも一番先に階段を上って行った。そんな行動を見た先生とアズサがと一緒にため息をしたのを綾と渉は、一緒に見た。

 和志が屋上のドアを開けた。夕方、準備したテープで所々ところどころ光っている。その中の2本は真っ直ぐでその線のところにランプが置かれていて、それを目印に和志がランプに明かりをつけていく。

 「すごい。星空がきれい」

 「確かにこれはすごい」

 「すごいでしょう、綾、渉君」

 「「うん」」

 みんなが順番にゆっくりと外に出てくる。

 綾と渉は外に出た瞬間にあまりのすごさに声がもれる。近くにいた若菜が2人に話しかけた。

 「これで、最後っと!」

 みんなが星空を見ている中、和志が最後のランプに明かりをつけた。

 「和志! 危ないから先に行くなって毎回、言われているのに!」

 「そう、起こるなよ、アズサ」

 「怒るわよ!」

 和志は小走りいや、早歩きかもしれない。アズサから逃げていた。

 そしてアズサから逃げ回っていた和志は一番目目立つ場所にたどり着いた。

 「あそこが和志先輩の特等席です」

 「屋上のドアから真っ直ぐのところに来た場所が?」

 「そうです。あそこからフェンスに背中を預けて真っ直ぐに上を向くのが、先輩のお気に入りの特等席なんです」

 「そしていつもアズサ先輩に起こられる。それが天文部の名物なのよ。ねぇ、サユリ」

 「そうですね」

 「確かに和志先輩早く行動していた。でも、先輩が早く星空を見たいのも分かるような気がする」

 「確かに渉の言う通りかもね」

 綾と渉達は星空を見ながら会話をしていた。そんな会話の中和志はアズサのすさまじさに少しずつ後ろに下がっていき、そして『だから、ごめん』と言いながら和志は屋上のフェンスに背中を預けた時だった。

 ガシャンと音と共に突然、フェンスが壊れた。

 『うわぁぁぁーーー』と叫びながら和志がフェンスと一緒に転落した。

 「か、和志ーーーーーっ!」

 和志とアズサの声でその場の全員の視線が2人に集まった。

 その場の空気が一瞬、止まった。

 その場の空気からいち早く動いたのは綾だった。

 「先生、警察に連絡を!」

 「あっ、そうだ。け、警察に連絡!」

 「部長は救急車を呼んで下さい!」

 「あっ……あぁ」

 「先輩、俺がやります」

震えて上手く手が動かない部長に変わって渉が救急車に連絡した。5分後に警察と救急車が来て屋上にいた先生が警察と話し合っていた。

 部の全員と綾に渉は、職員室の来客用のイスに座っていた。

 先生が警察と話し合う前に校長の元へ連絡したみたいで、校長が病院をよってから学校に来たみたく、山里和志が亡くなった事を全員に伝えられた。

 全員で和志が亡くなった事を聞いて恋人であるアズサは泣き崩れ、アズサ以外の部員は震え、青い顔をしていた。

 この事が始めての綾と渉もお互いに手を握っていた。互いに震えていた。

 「刑事の羽間はざまという者です。すみませんが誰か、お話を聞かせて下さい」

 みんな下を向いたままだった。

 綾はそれを見て一度、渉を見た。渉も綾の考えが分かっているみたいでコクンと頷いた。そして綾が『自分が話します』と手をあげながら話した。

 「助かります。辛いことを思い出させてすみません」

 「いいえ、大丈夫です」

 「では、他の皆さんは廊下で待っている親と一緒に帰っても大丈夫です」

 「ごめんね、綾ちゃん。私達……」

 


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