6ー1

 「そう、委員会が長引いてやっと終わったところ」

 「そうなんですか」

 「綾ちゃんも今から帰るの?」

 「はい。屋上の鍵を返してから」

 「じゃあ、俺達の代わりにやってくれたのサンキュー。大変だろ。準備するのも」

 「そうですね。でも若菜の的確な指示のおかげでと渉が手伝ってくれたので、早く終わったって若菜が言っていたので」

 「そうか、それは良かった」

 「まぁ、ほとんどは若菜が1人でやっていたようなものですけどね。ねぇ、渉」

 「そうだね」

 「でも手伝ってくれただけでもありがたいと思うけどなぁ」

 「そうですか。それなら良かったです」

 「じゃあ、今さら鍵を返しに行くんだよね。なんなら代わりに俺が返しておこうか?」

 「大丈夫ですよ。私と渉で返しておきますよ。それに先輩だって委員会で疲れたと思いますし」

 「そうか、気を付けて帰ってくれよ」

 「はい」

 和志が2人から離れようとした時に和志のポケットから1枚の封筒が落ちた。

 「和志先輩、落ちましたよ」

 「あぁ、ありがとう、弟君」

 渉は封筒を拾って和志に渡した。和志は渉から封筒を受け取った。

 「先輩、ラブレターですか?」

 「そうだったらいいんだけどなぁ~。残念ながら違うのさ、弟君」

 和志の表情が一瞬、暗くなったのを2人は見逃さなかった。

 「和志先輩、どうしたんですか? なんか……顔色が」

 「そうか? うーん、そうだなぁ、誰にも言わないと約束してくれるなら教えてもいいけど」

 「「言いません」」

 「双子ってすごいなぁ。本当に息がピッタリになるのか。マジですげぇ」

 「「そうですか?」」

 一瞬、双子の息ピッタリの言葉にホッとしたのか、和志が制服のズボンポケットからさっき落ちた、封筒を2人に渡した。

 「見てもいいんですか?」

 「うーん……やっぱ、恥ずかしいからやめておく。……口で言うよ」

 「でも、それじゃあ……もっと恥ずかしいのでは?」

 「かまわない」

 和志は息を整えて言葉にした。

 「1人目の天罰。神は許さないって書いてあった」

 「なんてすか、それ?」

 「どうせ、イタズラだと思っている。それに思い当たる事は全然、思い付かないし」

 「そうですか。ただのイタズラだといいですね」

 「でも、気を付けて下さいね、和志先輩」

 「ありがとう、綾ちゃん、弟君」

 そういうと和志は封筒をポケットに入れてそのまま帰って行った。

 「何もなければいいけど……」

 「そうだなぁ、悪い方に考えるのはやめておこう」

 「そうね」

 「鍵を返して帰ろう、綾」

 2人は職員室に向かった。

 綾と渉は職員室に行き、かごを竹村先生に渡して下校した。あとは、夜の7時半頃にまた、学校に来るだけだった。

 和志が持っていた封筒の中身の意味が後で大変な事になるなんて、今の2人には分からなかった。





 

 7時10分。綾と渉は夜の学校に向かって歩いていた。

 天文部の夜の活動を今日やるので綾はまだ、見学者という事で正式な部員ではないが参加する事にした。

 2人は青森雫の死に関係していると思われる部活を今、調べている。依頼者である星宮を除いた部の人達には、バレないように。

 「……なんか、雨でも降りそうな……嫌な気分」

 「どうした、綾?」

 「なんか……不安になってきた」

 「綾……もしかして夜の学校が怖い?」

 「違うわよ、バカ! ……何もなければいいと思って。……渉だって覚えているでしょう、和志先輩の手紙の事……」

 「もちろん覚えている……」

 2人は学園に着いた。そこには何人かの部員と竹村先生が正門のところにいた。

 「「こんばんは」」

 「お、さすが双子!」

 「2人共、時間厳守で結構」

 「先生~今は学校は終わっていますよ」

 「そうだけどね、金森君。何となくだよ。しかしあとは、部長と2年の2人ですね」

 先生が腕時計を見ながら話をしていた。

 「しかし、本当にそっくりね」

 「ですよねぇ、小雪先輩」

 「そうね。驚いたわ」

 「「お待たせしました!」」

 雑談をしていたらようやく残りのメンバーがやって来た。

 「これで全員揃そろったね。君達が最後だよ」

 「ほら、やっぱり~和志のせいたからね!」

 「わ、悪かったよ」

 「移動しょう」

 全員揃ったところで屋上へ向かった。

 夜の学校は静間しずまにかえっていて自分達の歩く足音しか聞こえない。

 「和志先輩って真面目なんですね」

 「どうしたんだい、綾ちゃん。もしかして夜の学校、怖い?」

 「渉にも言われましたが違います。先輩だけ制服でみんな、私服だから目立つなぁ~と思って」

 「あぁ……これか。そのままで来たから」

 「そのまま?」

 屋上に行くまで人数分に懐中電灯を配り、その明かりで屋上に向かっていた。その時、和志だけが制服のままだったので綾は何となく聞いてみた。

 「和志って寝ていたのよ。私と部長で和志の家に行って正解だったの」

 「じゃあ、先輩が遅れた理由って和志先輩が原因ですか?」

 「俺が原因って、あっさり言ってくれるなぁ、冬真」

 「す、すいません」

 「いいのよ、神森君。本当の事なんだから」

 「本当の事なんですね、和志先輩、アズサ先輩?」

 「そうなのよ、さゆりちゃん。和志の寝坊よ。全くあたしが思った通りよ」

 「だから、それは悪いって」

 「でも、アズサ先輩は和志先輩の事、よく分かりますね」

 「あっ、それは」

 「「えっーーー!」」

 

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