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 広い空き地に一人の少年がいた。少年は、見るから何もないただの空き地で叫びながら何かを捜していた。

 「おーい、みーたん。どこにいるんだー」

 少年は猫か犬らしきと思われる名前を叫びながら捜していた。空き地には子犬や子猫が出入りしそうな壁穴や穴が開いた電柱が横向きに置いてあったり、ベンチらしき物が何ヵ所もあったりする。

 小さい子供が遊んだりするのには、少し寂しいが遊べなくない広さ。

 けど、空き地にいる少年は、どう見ても中・高校生ぐらいの背の高さ。少年一人、何もない空き地にいたって面白みもない。

 一体、この少年は何をしているのか。

「おーい、みーたん。出てこーい!」

 少年はベンチや電柱の所を一生懸命捜している。

 「どこにいるんだ、三毛猫のみーたんは?」

 どうやら少年は猫を捜しているようだ。

 「あゆむ!」

 「あや!」

 少年が空き地で猫を捜していると自分を呼ぶ声が聞こえた。声がした方向を向くとこっちに向かってくる少女と老人と男の子の姿が見えた。老人がいる為にゆっくりと少年がいる所にやって来た。

 「見つかった、渉?」

 「全然、ダメだ」

 「僕のせいだ。僕が間違ってみーたんのしっぽ、踏んじゃったからだ」

 「大丈夫だよ、恭夜きょうや君。絶対、見つかるよ。その為におばあちゃんにも一緒に来てもらったんだから」

 「ほんと綾お姉ちゃん?」

 「うん。瑠璃るりさん、お願いします」

 「いいですよ。みーたん、出ていらっしゃい」

 『ニャーン』

 「あっ、みーたん!」

 さっきまで少年が捜していた猫が物影から出てきた。空き地に1ヵ所だけ物影になる所がある。みーたんは、そこからゆっくりと現れた。

 「みーたん、いらっしゃい」

 「ニャー」

 猫は飼い主に呼ばれて、足元まで来ると頭をこすり付けて甘えていた。

 「俺が呼んでも出てこなかったのに」

 「みーたんは頭がいいのよ。多分たぶん私が呼んでも現れてくれないわよ。瑠璃さんに呼ばれて始めてくるのよ。一番の飼い主さんに」

 瑠璃は、猫を抱きかかえると優しく微笑んでいた。

 「ありがとうね、綾ちゃんに渉君。この子、みーたんを見つけてくれて」

 「いいえ」

 「俺達はなにも。やっぱり飼い主さんには、かなわないです」

 「恭夜君。どうしたの?」

 「僕……みーたんと仲良くできるかな?」

 「大丈夫だよ。優しくみーたんにごめんねと言って頭を撫でてあげれば、みーたんも分かってくれるよ」

 「でも…」

 「とりあえず、やってみろよ」

 「うん。みーたん、ごめんね」

 「ニャーン」

 猫は気持ちよさそうに撫でてもらっていた。恭夜に笑顔が戻った。

 「本当だ!」

 「よかったね、恭夜君」

「うん。ありがとう、綾お姉ちゃん、渉お兄ちゃん!」

 「じゃあ、帰ろうか」

 「うん」

 「本当にありがとうね。お代を払わないとね。おいくらかしら?」

 「あっ、いいえ。お代はいりませんよ。私と渉はまだ、高校生なのでお金は取りません。それにまだ、未熟者ですし」

 「助っ人ということで」

 「でもねぇ~」

 「じゃあ、アメだったら貰ってくれる?」

 「そうね、アメだったら平気よね」

 「「はい、ありがとうございます」」

 綾と渉は恭夜からアメ玉を貰った。

 「本当にありがとうね、綾ちゃんに渉君。早く見つかったし、きっとお父さんのように素敵な探偵になれるわね」

 「そ、そんなことないですよ」

 「父さんにはまだ追い付けないですよ。まだまだ」

 「でも、きっとなれるわ」

 「僕も応援する!」

 「ありがとう、恭夜」

 「ありがとうございます、瑠璃さん」

 そう、この少年少女は探偵なのだ。

 

 

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