高校一年生(前半)
高校に入学して数日後、クラスメイトから軽音楽部の体験に行かないかと誘われた。特にやりたいこともなかったので、試しに行ってみることにした。
軽音楽部の部室は視聴覚準備室と多目的教室になっていて、とりあえず視聴覚準備室へ行き、ドアをノックした。すると、中から眼鏡の先輩が出てきた。その刹那、俺はその先輩に一目惚れした。
今までの恋とは明らかに違っていた。というのも、今までにはなかった、胸を撃ち抜かれたような衝撃があったのだ。これは運命の相手に違いない。そう思った。
そして、ギター、ドラム、ベース、キーボードとそれぞれの楽器を触らせてもらい、結局のところその先輩が担当しているベースに落ち着いた。初日にして入部することが自分の中で決まったのだ。
他のベース担当の先輩がいなかったため、その先輩からベースを教えてもらいまくり。積極的すぎて、おそらく好意もバレていた。
日に日に喋れるようになり、好意は膨らみ、いつの間にかポエムまで書き始めていた(現在の執筆活動にも繋がる)。
順調な駆け出しだったと思う。しかし、問題が三つもあった。一つ目は先輩が三年生で、受験生であること。二つ目は先輩が受験生であるため、安易に距離を縮められない。三つ目は俺が夏休みを越せる気がしなかった。
卒業式までこの気持ちを秘める? パンクして死んでしまうわ!
ということで、七月、先輩の最後のライブが終わった後。空気を読んだかのように静まり返ったライブ会場、見える限りでは誰もいない。そして空は暗く――
きっと、先輩は俺の気持ちに気付いていて、告白するのを待っていたのだと思う(ただ迎えを待っていただけなのかもしれないが)。
「先輩……今日はお疲れ様です」
「こちらこそ、来てくれてありがとう」
「その……俺……先輩のこと好きです」
「ごめん……私、受験生だから」
俺の声は震えていた。先輩の目も見ることができずに、応えが返ってくると同時に記憶が途絶えた。逃げるように家へ帰った。
例え分かっていた未来だとしても、本当の恋だったからか、半年近く憔悴し続けた。
*一年生(後半)へ続く
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