これは私が、本当の幸せを知る話

夜櫻 雅織

第1話 癒えぬ凍え

 ……寒い。寒い。寒い、寒い、寒い。

 新しく命が芽吹く春なのにとても寒くて辛い。少しフラフラとしながらいつも通りギルドのカウンターへと足を向ける。


「あ、お帰りなさいませ、ルーシュ様。今回もお疲れ様です。」

『……ああ。これが採取クエストの品だ。討伐クエストの証明は……ギルドカードで良かったな?』

「ええ、大丈夫です。しかし、ルーシュ様。大変申し訳ないのですが討伐クエストの報酬のお渡しに少しお時間が……。」

『王都から此方にわざわざ回された依頼だ、仕方ない。それと……申し訳ないのだが3階の部屋を1つ貸してくれ。今回は少し疲れた。ここで休んでいく。』

「はい、勿論です!ご要望はございますか?」

『角部屋で頼む。風呂とベッドとトイレさえあれば後は何でも良い。』

「お食事のご要望も、ですか?」

『そこまで……してくれるのか。』

「勿論です。お怪我があれば医者も手配致しますが。」

『……そうだな、食事は任せる。医者は……是非とも頼む。恐らく風邪だとは思うが診てもらった方が此方も安心出来る。』

「畏まりました。これがお部屋の鍵になります。ごゆっくりどうぞ。」

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