第35話 嘘、だ

「……ぅ、う。」

「、レディア。」

「あ、おい!む、無理に動くなって!」


 窓は全て割れ、その代わりに防護壁が大量に降りた私の家。

 ネットワーク内に居たはずのAI達は皆アンドロイドの中へと戻っており、此方を心配そうに見ている。……そう、皆が。

 私が手掛けたアンドロイドだけが。


「……らぐ、なろくは。」

「「……。」」

「……そこ。」


 沢山のケーブルに繋がれたままの、壁にもたれて目を閉じているラグナロクのアンドロイド。やっぱり何処からどう見ても本物の人間か、何かにしか見えない。……何故か、私がわざとふざけて歪ませたあの姿ではなく、お姉ちゃんの姿で。

 ふらふらとラグナロクに近寄り、力なく座り込む。


「……ラグナロク。」

「……」

「……返事、しろって。」

「……」


 機械だから、こんなに冷たいんだ。オーバーヒートしてないから、こんなに冷たいんだ。

 立ち上がり、こいつの為に慌てながらも用意させられたラグナロク専用のスパコンの側を丁寧に外す。外から見ても電源が点いているように見えなかったそれは、勿論蓋を外しても電源が点いているようには見えず、所々から火花を散らすケーブルが幾本もある。


「……全部、ショートしてるわね。」

「……治せない?」

「……かなり難しい。この分では、中の回路基板も……。」


 ……嘘吐き。

 はらはらと、涙が零れる。


「私が望むなら、地獄まで付き添うって言った癖に。」


 嘘吐き。


「機械は、約束を忘れないんでしょ。人間とは違って。」


 嘘吐き。


「そう、言った癖に。」


 ……もう、良い。


 ―――ドタンっ!!


「ちょ、レディア!?」

「レディア、しっかりなさい、レディア!!」

「目ぇ覚ませよ、おいっ!!」


 お姉ちゃんもラグナロクも居ないなら、もう、何も要らない。

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