2.2 ぴんぽーん、じゃねえっ!

 母の口紅が目に入るけどこれはやめておきます。ここで慣れないことに手を出すのは悪手です。


 化粧水べちょべちょつけてニベア塗って準備OKです。いえいえ、ニベアを馬鹿にしてはいけません。ニベア最強。


 ふう。

 

 で。

 

 速攻で準備したつもりがあっというまに時間がたっていたらしいのです。チャイムが景気よくなります。


 23時02分。

 

 ぴんぽーん。

 

 ……ぴんぽーん、じゃねえっ!


 いや、こんな時間に堂々と何やっているのでしょう、巻くん。こういうときのためにSNSとか電話とかあるのです。正面突破とか心臓が止まるのでやめて下さい。


 親に適当なこと言ってごまかしつつ、姿を見られる前に慌てて玄関を出ます。こんな時期、こんな時間になぜか制服でお出かけ。家族とはいえ見つかったら恥ずかしくて死にます。


 玄関を出て、律儀にインターホンの前で大きな身体をかがめている巻くんの背中をひっぱたいて、角を曲がってうちが見えなくなるところまで全速力です。


 巻くんも制服着てます。よかった、私だけだったらどうしようかと思いました。

 ……よく考えれば補導確率が上がるだけでなにも良くないですね。


「なんでチャイム鳴らしてるの! びっくりしたー」


 抗議しますがにやにやが止まりません。

 このずんぐりしたイケメン(※個人の感想です)私の彼氏だよ。参ったね、こりゃ。


 息をはあはあと弾ませた私のわきを巻くんが駆け抜けていきます。

 ……いや、止まろうよ。君の彼女置いていかないで。


「え? 巻くんどこいくの?」

「学校だ。登下校するんだろ。まずは登校だ」


「本当に今から行く気?」

「早くしろ。学校まで何分だ?」

 

「どうだろ。15分ぐらい?」

「分かった。いいから走れ」


 夜中に息を切らし、街を駆ける私と巻くん。

 

 あれ、文字におこすとなんとなく絵になるかんじですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る