焦点

視線


 真夜中、小さな川に架かる人通りの少ない橋の上で、一組の男女が踊り狂っていた。

 酒を飲んだ後らしい、酔っているのだろう。

 周囲からの視線は気にならないようだ。


 まるで二人だけで夢の中にいるかのようなその男女に、欄干の上に座る一匹の野良猫が冷たい視線を送っている。


 私は二人と一匹をどのように見ているのだろう。

 男女と猫の間の温度差に戸惑っているような、あるいは夢現な、焦点の定まらない目で見ているかもしれない。

 だからだろうか、私の視線を見ることだけはできない。

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