王都と謁見
それからさらに数日が経過してようやく王都が見えて来た。
その間毎日昼間動かない分夜は激しく動いた。
「二人ともそろそろ王都に着くぞー準備しろよ。」
「はいはーい」「わかりました。」
馬車はそのまま門へと進む。
その大きさは流石王都だけあってそびえ立つ城壁は高く門はでかい。
冒険者なので並ぼうと思ったのだがエマが「そのような必要はありません!」と貴族側の列へと向かう。
「止まれ!こっちは貴族専用だぞ!他はあっちだ!」
騎士は職務に忠実で貴族紋章のない場所を止めてきただけだ。
「その必要はありません。この馬車は私が保証します。」
そう言って顔を出したのが我が嫁でありゼイルカーザ王国第二王女のエマだ。
「エマ様!?」
騎士は驚いたように声を出し、
「どうぞ!お通りください!」
と素直に通してくれた。これが王族ブランドといったところか。
「このまま王城に向かいますので誰か王城に知らせを届けてくれませんか?エマが戻ったと。」
「かしこまりました!」
騎士はすぐに敬礼し、部下に指示を出して使いを出したようだ。
俺たちはゆっくり進み出し王城へと向かった。
王城についた俺たちは盛大な歓迎を受けた。
王女の帰還と言うことでかなりの人が来ていると思う。
「お帰りなさまいませ。エマ様」
「「「お帰りなさいませ!」」」
一人の老執事がそういうとそれに続いてメイドや騎士達が声を揃えてそう言った。
「お父様と謁見の用意をしてください。それとこの二人は国賓として扱います。おそらくお父様も話を聞けばそのようにおっしゃるでしょう。」
「かしこまりました。すぐにご用意致します。それまでは来賓室で御寛ぎくださいませ。」
「わかりました。ではアストさんフィリアさん行きましょう。馬車は騎士達が責任を持ってお預かり致します。」
「了解。ついて行くよ。」
俺はエマの背中について行く。
ついて行った部屋は豪華な部屋で平民の俺からしたらどの家具もすごくいいものに見える。まぁそもそもすごくいいものだろうしね。
そこで待機すること20分。その間メイドさんが持って来てくれた紅茶を飲みながら寛いだ。
すると先ほどの老執事が部屋に入ってくる。
「謁見の用意が整いました。ご案内致します。」
「では行きましょう。」
俺たちは再びエマについて行く。
「ここから先が謁見の間になります。」
ゴクリ。
はじめての王との謁見で緊張しているのかもしれない。
「大丈夫です。お父様は常識ある人なので何も悪い事をしていない以上何もして来ません。少しばかり娘が好き過ぎるくらいで・・・」
最後に一番今の俺にとって嫌なことを言ってくる。
あー一発くらい殴られるか・・・
俺はそう決意して謁見に臨んだ。
大きな扉を潜り絨毯の敷かれた道を進む。
ある程度進みエマが止まるので俺達も止まる。
エマが片膝をつきこうべをたれるので俺たちも見習う。
「顔を上げよ。」
そう言われるので三人は顔を上げる。
「話は聞いた。アスト、フィリアよそなたたちが娘の危機を救ってくれたと。よって褒美として虹金貨3枚と王都にあった屋敷並びに男爵を拝命する。」
その言葉に周りの大臣達が騒ぎ出す。
「王よ!それはいささか褒美をやりすぎなのではないでしょうか!」
「これは決定事項だ!異論は認めん!」
王が強気にいうと大臣は黙り元の位置に戻っていった。
「これにて謁見は終了する。」
それを持って俺たちは立ち上がり再び来賓室に戻る。
そしてまた老執事が入ってきて今度は王の談話室に向かうこととなった。
そこには王の他に女性がおり俺たちも席に座る。
「改めて自己紹介をしよう。余がゼイルカーザ王国18代国王リバード・ゼイルカーザ。そしてこっちが」
「王妃のセシル・ゼイルカーザと申します。」
「今回は娘を救ってくれて本当にありがとう。親として例をいう。」
というと深々とお辞儀をする。
「しかしドラゴンを一瞬で倒す腕前我が騎士団の騎士達にも真似できない芸当だ。すばらしい。」
彼はそういう。しかしなんでそこまで知ってるのだろう?と思ったのだがエマがある程度のことを紙に書いて説明してくれていたそうだ。なるほどと思い、効率的だとも感じた。
「本当ならもっと褒美をやりたかったのだが他のものが煩くてな。済まないな。」
「いえそんなことないです。十分いただきましたよ。お義父さん・・・あ」
王妃以外の面々がえっ!という顔でこちらを見る。王妃はふふふと笑うだけだ。
お義母さんわかっていましたね。
「どういうことかな?アスト君?余がお義父さん?はっはっは。」
笑ってはいるが顔は笑っていない。
いずれ伝えることだとはわかっていたがまさかこんなドジをふむなんでいくら呼び方の練習をしていたからと言って今言うべきではないだろ!
沈黙が空間を支配する。
「お、お父様これは・・・」
俺はエマを止める。
覚悟を決め口を開いた。
「お義父さん。私はエマさんに告白しました。そしてエマさんからは良い返事を頂きました。事後報告になって申し訳ありませんがどうか娘さんを私にください。」
俺は深々と頭を下げる。
「お父様お願いします!!」
エマも共に頭を下げる。
「ぐぬぬ」
「いいではありませんかあなた。エマがこれほど自分の意見を言うようになったのですよ。」
「し、しかしだなぁ」
「それにこのことは私はすでに気づいていましたよ?貴方は気づかれないからこれほど動揺するのです。ほらエマの左手をご覧なさい。」
そうしてエマは左手を前に出す。
「な、なんと!すでに指輪まで・・」
「これ以上ごねるのでしたら私のに考えがありますよ?」
そういう王妃の言葉に王はガタガタと震え出す。どこでも女は強いってことだな。
「えぇい!わかった!二人の中を認める!これで良いか。」
「よく出来ました。」
そう言って頭を撫でる王妃。
意外な王の一面も見れてちょっと驚きもしたが
「ありがとうございます!」
俺は両名にもう一度感謝を伝えた。
・
・・
・・・
・・・・
王も落ち着きを取り戻り皆各席について話を再開する。
無事エマとの中を認めてもらえてほっとした。
「あっそうだ!お父様お聞きしたいことがありました!レイラさんを奴隷にするってどういうことですか!」
「なっ!お前それをどこで!」
「どこでも構いません!納得いく説明があるんですか!」
「う、うむ。」
王は口を閉ざす。
「貴方エマには話すべきですよ。レイラさんはエマのお友達なのですよ?」
「うむ。わかった。答えよう。あれは1ヶ月ほど前お前をクリスレイル領に送った後の事だ。我が国は隣国ファリオス王国に戦争を挑み滅ぼしたのだ。」
「なっ!なんてことをしたのですか!」
「まぁまてまだ続きがある。」
俺が今にも突っかかりそうなエマを抑える。
「良いか?」
「ええ続けてください。」
「うむ。我が国がファリオスを攻めた理由だがファリオス王の願いでもあったからなのだ。あの国はすでに魔の者どもにかなり入りこまれていたようだ。このままでは国が魔のものに支配される。そう思ったファリオス王は私に手紙を出してきたのだ。我が国を滅ぼし民を救ってくれとそしてその中には娘を奴隷として我が国で安全を保証してくれと言うものだった。ゆえに我が国はファリオスに攻め入り魔のものを殲滅しながら王都を落としたのだが王はすでに討たれておったのだ。それから娘とメイドを保護し奴隷としてオークションに出すことになったのだ。」
「なるほど。そのような事になっていたのですね。」
「うむ。レイラ殿はファリオス王の忘形見我が王家で買い取りたいが王族故に買えないというのがありオークションでより良い者に買ってもらおうと思っているのだが・・・」
「しかしお父様私はあのベルデブル侯爵が金を集めて買うと聞きました。そうなればレイラは・・・」
「そうなのだ。しかし他のものも他国の王女を買いたがらないからな。」
「ではどうすれば・・・」
しーとした空気に俺が口を挟む。
「では俺が買い取りましょうか。幸いに金はあります。相手がどのくらいの金を持っているか分かりませんがおそらく大丈夫かと。」
「ほんとですか!」
「あぁ。それに俺たちが王都に来た理由もパーティーメンバーにする奴隷を探しに来たんだしな。ファリオスの姫様といえば姫騎士と呼ばれるほど武芸に長けていると聞いたことがあるからな冒険者になるのは問題ないだろう。」
「お願いします!レイラさんを助けてください!」
「任せておけ。可愛い嫁さんの頼みだからな。」
「本当は可愛い女の子をもっと囲いたいだけなんじゃないの?」
フィリアの辛辣な言葉が胸に刺さる。
「い、いやそんな事ないぞ。」
「ふーん」
すごく弄ばれてる気がする。
「話はまとまったようだな。では頼むぞ息子よ!」
「はい。お義父さん!」
俺たち男は手を取り合って別れを行った。
それから王城を出た俺とフィリアとエマは老執事に連れられて与えられた屋敷に向かう。
着いた屋敷はかなり大きな屋敷で過去に伯爵が建てたものらしいけど、建ててすぐに亡くなり事後後継も居なかったため伯爵家はなくなり屋敷は王家のものとなったそうだ。
ものもの伯爵家だけあって三人で住むには本当に大きいのでどうしようかと悩むのだった。
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