勇者パーティーを追放された荷物持ちの俺命の危機が迫りセカンドスキルに目覚める

えるあ

追放と覚醒

「アストお前をパーティーから追放する」


パーティのリーダーであるガルバがいう。


ここは奈落の迷宮。

世界でも屈指の難易度を誇るS級ダンジョンだ。


理由はここ50層のボスを倒してから行く51層の地形それが元になりここは奈落と呼ばれている。


どこまでも続いていそうな穴それをバックに俺は追放を言い渡されていた。


「ちょっと待てよ。嘘だろ?」


「残念ながらこれは決定事項だ。」


他のメンバーにも目を向ける。


「何よ。そもそも戦闘もしない荷物持ちのあんたをここまで使ってやってたんだから感謝しなさいよ!」


とパーティーの火力魔法使いセラが言う。


「そういうこったもうお前の居場所なんてねぇよ。それにお前の替えなんてとっくに見つけてるしな。お前と違ってセカンドスキルも持ってるから戦闘もできるしな。」

前衛の大剣使いのグレリオがニヤニヤしながら答える。



マジかよ。ここまでどれだけ俺がこのパーティーに貢献したと思ってるんだよ。


料理や洗濯といった雑用。ダンジョンの地図や索敵何もかも俺任せ、俺がいなくなってどうするだ?


「アストがパーティー追放ってどういうこと!」


一人だけ他と違った反応をした奴がいた。守りの聖女と二つ名があり俺の幼馴染みでもあったフィリアだ。フィリアがいたから俺なんか雑用だとしても勇者パーティーに入れたし続けてこられたんだ。


「フィリアお前は甘すぎるんだよ」


「そんなの関係ない!アストは今までパーティーに貢献してきたよ!」


「戦闘もろくにできないこいつがか笑?」


嘲笑うかのようなグレリオ


「アストのいないパーティーなら私も抜けるから!」


「ちっ」


舌打ちをするガルバ。


剣を引き抜きこちらに近寄ってくる。


「お、おいなんのつもりだ」


「・・・」


「逃げて!アスト!」



俺は無様に後ろに下がる。


しかし後ろは奈落、すでに退路は絶たれている。


「くぞが!」


俺の叫び声と同時にガルバの剣で俺は斬られそのまま奈落へと落ちていく。


俺の人生もここまでが・・・


段々意識が遠のいて行く。

血が流れすぎてるんだな。


「アスト!」


急に体に温もりを感じる。


「ふぃ、りあ?」


落ちる体そしてフィリア。

それだけを最後に確認して意識を失った。

・・

・・・

・・・・


「おい!どーすんだよフィリアまで行っちまったぞ!」


「でもさ奈落に落ちちゃったらどうしようもなくない?もう助かんないよ」


「・・・」


「おい!なんとかいったらどうなんだ!」


怒鳴るグレリオ。

本来なら邪魔者のアストだけを殺すはずが世界でも貴重な回復魔法 極と結界術を合わせ持つ守りの聖女と言われる彼女まで失ったのだ。


「黙れ。」


「あ?」


「黙れといっている!」


猛烈な殺気が二人を襲う。


「「・・・」」


「帰るぞ」


二人は黙ってついて行くことしか出来なかった。


・・

・・・

・・・・


「あ…、あ…と、アスト」


幼馴染みの声が聞こえる。


「あれ?俺は・・・、そうかあいつに斬られて・・」


斬られたところを触るが傷はない。


「よかった。目が覚めたのね。」


目の前には俺の幼馴染みのフィリアが涙を浮かべながら俺を抱えていた。


「フィリアが助けてくれたのか?」


「結界術を薄く何枚も何枚も貼って勢いを殺したの。それで下まで降りたわ。」


どうやらとっさの起点により安全に来れたようだ。


「そうか。ほんとありがとなフィリア」


「アスト言いづらいんだけどまだ助かったわけじゃないのよ。周りを見て。」


彼女に言われるまま辺りを見渡す。


そこには明らかに高ランクの魔物たちがいた。


今はまだフィリアの絶界によって防いでいるがそんなに長くはもたないだろう。


「どうしよう・・」


そんな時だった。頭の中にイメージが浮かぶ。それは初めてスキルストレージを得た時と似ている。今回は何かを回してものがでる?


考えても仕方がない。名前は分かってるだ使ってみよう。


「フィリアどうやら神は俺たちを見捨てなかったらしい。」


「え?」


「セカンドスキルを覚えた。」


この世界にはスキルがある。

大抵一つ目のスキルファーストスキルを15歳の時に覚える。が稀にセカンドスキルと呼ばれる二つ目のスキルを覚える物がいる。勇者パーティーがいい例だ。グレリオは断破と挑発。セラは火魔法 極と氷魔法 上。フィリアは回復魔法 極と結界術だ。勇者であるガルバだけは特別で聖剣召喚、限界突破、光魔法 極の三つを覚えてサードスキル保持者つまりサードホルダーと言われることからあいつは勇者と呼ばれていた。


そして勇者パーティーのお荷物こと俺アストは唯一セカンドスキルを持たずファーストスキルであるストレージのみで参加していた。


そんな俺がついにセカンドジョブを覚えたのだ。スキルを覚えるのは突然でこうして頭にイメージが流れ込んでくる。そうして今回覚えたのが【SSS以上確定定期ガチャ】という誰も知らないであろうおそらく固有スキルを手に入れた。



「それでこの状況どうにかなりそう?」


「わからない」そう素直に答える。


「え?」


「そういう能力なんだ。イメージ通りだとガチャというものがでるスキルらしいんだけど何が出るかわからないんだ。けどいいものしかでないっぽいからかける勝ちはあると思う。」


「どっちにしてもそれに頼るしか無いんだよね。」


「そうだな。早速使ってみるよ。」


フィリアに見守られながらスキル名を呟く。


「SSS以上確定定期ガチャ!」


すると何やら丸いものが手の中に現れる。


「こ、こんなでどうしろと・・・」


俺は絶望に暮れそうになる。


「アストそれ二つに割れそうじゃない?」


「え?」


フィリアにそう言われたので丸い物体を二つにしてみると・・・


「おわっ。」


すると丸い物体は消え去り中から剣が出てきた。


ピコンSSS神器ブリュレツィアを入手しました。


神器ブリュレツィア

所有者の身体能力を激増


この世界の武器には身体能力を底上げしてくれる物がある。一番有名なのは聖剣と魔剣だろう。聖剣使いや魔剣使いと言われて聖剣を持つものは高い身体能力を発揮する。


それと高位の武器には技能スキルがつく。聖剣ならば剣帝のようにだ。ゆえに聖剣使いはその時から一流の剣士となれる。この神器には剣神というスキルが付いている。剣術の最高峰を扱えるということだ。


そして「」聖剣や魔剣の身体能力は増加、それに引き換えて神器は激増となっている。神話のでんしょうには神器の存在は呟かれていたが実際に存在するとは。


「アストそれは?」


「俺たちの希望の剣さ。」


そう希望の剣これがあればそこにいる魔物などものの数ではないだろう。


俺は神器ブリュレツェレを構えて覚悟を決める。


「フィリアあいつら倒してくるよ見ていてくれ。」


「え?無茶しちゃダメだよ。」


「無茶じゃないよ出来ると思うんだ。」


それから神器についてフィリアに話す。


「すごい。それってもうガルバより強いんじゃない?」


「そうだね多分強いよ。持ってる武器の格が違いすぎるから。」


「でもいくら強いっていっても気をつけてね危なくなったらすぐに絶界に入ってきてね。」


「分かってるよ任せて。」


俺は剣を構えて魔物に突撃する。


その脚力は以前の俺とは全然違う。

一瞬のうちに一番近い魔物を詰め寄った。


その圧倒的身体能力に振り回されることなく剣神の力が発動する。


頭にイメージが流れてどうすれば効率よく最高の太刀筋になるかが手にとるようにわかる。


ほんの1秒のうちに1体目を倒す。


「すごい・・・」


そう後ろから声がした。


そしてまた一体、一体と倒して行く。


明らかに今まで出会った魔物より強い魔物だが次々と豆腐のように切れていく。


そして1分程で周りにいた魔物30体が倒され魔物はドロップアイテムを残して粒子になって消えた。


「アストやったわ!」


絶界が解けフィリアも俺に駆け寄ってくる。


俺も剣を納めてフィリアの方を向く。


そしてそこがダンジョンだということも忘れて長い抱擁していた。時も忘れるくらいそれは心地よくお互いに求めるように抱き合っていた。


ふと気づき離れる。


「フィリア俺のためにこんなところまで来てくれてありがとう。お前が居なかったら今この場所に俺は居なかったよ。」


「うんう、私だってアストが居ないなんて考えられないし子供の頃からずっと一緒でしょ?」


「そうだな。ずっと一緒だ。」


告白のような言葉彼女も顔をほんのり赤くする。


「よし!さっさと攻略して脱出しよう!」


「うん」


そう言って前を向きダンジョン攻略を開始した。


奈落のダンジョン。おそらくここが本当のダンジョンなのだろう。

明らかに出てくる魔物の強さが違う。


今のガルバがここに来れば殺されているだろう。それだけここは強いしそれを狩っている神器の力は凄まじいと言うことだ。20分程進んでようやくボス部屋らしい扉を発見した。


ここをクリアすれば脱出出来るかは分からないが倒さなければ進めないのは確かだろう。


扉に近づくと自然と開く。


そして部屋に光が灯り辺りを照らした。


そして姿を現したのは高さ10mはある巨大8本の腕をはやしたゴリラだった。


すぐさま斬り込む。


ゴリラも手を振りかざしてなぐってくる。


それを避け通り際に切り落とす。


そしてフィリアの元に戻り際にももう一本いただく。


「ギャォア」


ゴリラは悲鳴をあげるが次の瞬間切れた腕が元の位置に生えていた。



「嘘だろ。」


再びゴリラが拳を振りかざしてくる。


今度は一斉に3つ。


俺はそのうちの2つを切り落とすが1つ逃してしまいフィリアの方に行ってしまう。


「フィリア!」


「絶界!」


フィリアの展開した絶界によってゴリラの拳は阻まれて攻撃は通らなかった。


「アスト私は大丈夫だから自分のことを考えて!」


俺はゴリラに向き直す。


集中し研ぎ澄ます。


見える。ゴリラのパンチの軌道が。


避けて斬る。さらに斬る。


がすぐに回復してしまう。


首を狙おうとしても多くの手がガードしてきて流石に斬れない。


「アスト!そいつの弱点気づいたよ!」


と後方から声が飛んでくる。


「そいつの左の下から2つ目の手だけ攻撃に参加してないよ!多分それが弱点なんだよ!」


後方でゴリラの分析をしていたフィリアのいう事だおそらく弱点で間違いない。


俺はフィリアを信じて弱点の手を狙う。


するとゴリラの他の手がその手を庇うように手が防御してくる。


それを斬ったり避けたりしながらついに弱点の腕にたどり着き斬った。


「ギャォアブァル」


ゴリラは先程斬っていた時よりも激しく悲鳴を上げた。


そしてすでに他の手は消え去り残るは胴体と頭、足だけになっている。


そしてチャンスを逃さずに首を狙う。


そして切り裂いた。


ゴリラは跡形もなく消え去りドロップアイテムを落とした。


アイテムを拾ってフィリアの所に戻る。


「やったよアスト~」


彼女も俺の元に駆け寄ってくる。


そして盛大にジャンプして抱きついてきた。


「おっとと。」


俺はフィリアを抱きとめる。


「フィリアが気付いてくれたおかげだ。俺一人じゃ倒せなかったよ。」


「じゃあ二人の勝利だね!」


「あぁ二人の勝利だ。」


俺たちは前を向き脱出に向けて手を繋いだまま再び進み出した。

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