第12話 長い夜。
ピピピ───
「ん……んんっ……」
時計のうるさい音で目が覚める。
カーテンの隙間から太陽の光が差し込んで、
俺に朝だと知らせる。
「も……もう朝か……って痛っ…」
腕が痺れていた。朝から運がない。
しばらくすると、段々と腕に血が回っていき、痺れが引いていく。
腕を枕にしてたのかな……?
俺はリビングに向かおうと重い体を起こし、
掛け布団をどける。
そして、俺は疑問を抱く。
布団をどけたら我が妹が隣で寝ている。
なぜ?どうして桜はここにいる?
俺はとうとう超えてはいけないラインを超えてしまったのだろうか……
俺は必死に昨日の事を思い出そうとした。
------------------------------------------------
昨日は桜にアレを見られ、気まずい雰囲気になっていた。でも、なんとか親父のお陰で俺たちは仲直り出来た。
まぁ、俺はあんまり怒ってなかったがな。
そんな事を考えていたら、思考も段々と鈍り始め、
瞼も重くなっていく。
「ふあぁ……もう寝よ……」
俺は部屋の電気を消し、ベットに入り込む。
俺がもう少しで夢の世界に行こうというところに『コンコン』とドアをノックする音で俺の目が醒めた。
「お兄ちゃん……起きてる?」
「どうした?」
俺は瞼を擦り、桜がそこにいると認識する。
時計に目をやれば、もう日付も変わっていた。
「その……あまり眠れなくて……それで、お兄ちゃんが良ければ、一緒に……寝たい、な……なんて……」
一瞬、思考が停止した。
……………………マジで?
「お、おお、おう。い、いい、い、いい、ぞ?」
目眩がする。
俺はもう、夢の世界に迷い込んでしまったのだろうか……
まぁ、たとえ夢でも、シスコンの俺にはとっても嬉しいイベントこの上ないな。
「じゃ、じゃあ……失礼……しましゅ……」
甘噛みした桜は顔を真っ赤にして、俺のベットに入る。
シャンプーのいい匂いが鼻を通り抜ける。
本当に同じシャンプーを使っているのかと疑ってしまうほど、桜の芳しい匂いは俺に、『夢じゃないぞ』
と教えているようだった。
「「…………………」」
互いに背を向けたまま静寂が訪れる。
辺りには俺たち2人の息しか聞こえない。
「ねぇ……お兄ちゃん……こっち、向いて……?」
「そ、それは……」
出来ないと、口にしようとしたら、桜に裾をギュッと握られる。
え、可愛いんすけど……
くるりと体の向きを変える。
そこには頬を紅潮させた
「えへへ……こうやって一緒に寝るのって久しぶりだね」
「ああ、桜が小6くらいになったらしなくなったな」
「「……………………」」
会話はあまり続かず、すぐにまた静かになる。
まぁ、なんだ。恥ずかしいのだ。
「あの……ひとつお願いしていい?」
「な、なんだ?」
「腕枕して欲しいな……」
桜は上目遣いで俺におねだりをする。
やべ、今めっちゃドキッってしちゃったよ……
「ほれ」
俺は精一杯平然を装い、腕を桜の方に伸ばす。
その上に、桜の頭が乗り俺の腕を圧迫する。
「なんか、安心する……お兄ちゃんの腕枕……
って、他の人のは知らないけどね。ははは……」
「そ、そうか……」
その言葉に俺の心臓はさらに加速する。
「「………………………」」
またも静かになる。
桜から話題を振られてばかりじゃ申し訳ないと思い、自分から振ろうとした。
「あ、あのさ……桜って好きなやついるのか?」
俺は公園で五十嵐から聞いたこの話題を桜に質問する。
「………………」
桜はなにも答えない。
きっと答えずらいことだから躊躇しているんだろう。
「別に無理して言わなくてもいいからな」
と、そう言って桜の様子を伺う。
「すぅ…………すぅ…………」
「って、寝てるのかよ……それじゃ答えない訳だわ……」
俺もさっさと寝ようと目を閉じる。
夢の世界に行こう……今回はどんな夢かな……
「……………………寝れないんだけど。」
その夜は俺にとって、長い夜になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます